『ワンレングスアイアン』は誰向きなのか?
高額なゴルフクラブ、購入ミスだけは避けたいもの。だからこそ、今まさに買おうとしているそこのアナタ、ちょっと待って! ALBA.netギア担当が知り得た特ネタを中心に、超マニアックでDEEPな耳寄り情報をお届け。購入する前にちょっと見て、絶対に損はさせません!
配信日時:2017年5月22日 12時48分
ディビッド・イーデルは正直者。だからこそ信用する
イーデルゴルフから全番手37インチの『SLS-01シングルレングスアイアン』が発売され、開発者かつ同社社長のディビッド・イーデル(以下、ディビッド)がPRのため先週来日。都内練習場にて発表会兼試打会が行われた。ここでワンレングスアイアンをテストしてきたのでレポートしたい。
「ワンレングスアイアン」が日本で話題になったのは、去年のマスターズでブライソン・デシャンボーが使用したことがきっかけだ。デシャンボーの高校時代からディビッドは彼が望むワンレングスアイアンの開発に従事してきたといい、試行錯誤の末、昨年のマスターズで彼が使うためのプロトタイプ完成に何とかこぎ着けた。
そして、そのマスターズでは、デシャンボーのプロ転向と共にコブラとの電撃契約が発表された。ディビッドはデシャンボーにとって用済みとなったのだろうか。にもかかわらず、デシャンボーはディビッドと作り上げたアイアンをしばらく使用し続けていた。
コブラと契約したデシャンボーは、ディビッドが作り上げたノウハウを惜しみなくコブラに提供したのか、同社は今年始めにワンレングスアイアンを発売し、現在、好評を博しているのだとか。このデシャンボーの裏切り? に対して、ディビッドの深い悲しみがあったことは想像に難くない。
さらに、彼が開発したトゥが上を向く『トルクバランスパター』は、“フェース開閉が少なくて済む”と、同じくデシャンボーの登場と共に密かに話題になったが、なぜかキャロウェイが『Toe-Up』シリーズとして大量生産&市販化。
背景にはデシャンボーと練習ラウンドを共にした、フィル・ミケルソンがイーデルゴルフの『トルクバランスパター』を気に入り、キャロウェイに同様のものを作らせたことがきっかけだと筆者は聞いている。この話が本当かどうか真偽の程は謎だが、決してキャロウェイが悪いわけではないだろう。パテントを抑えておかなかったディビッドが悪いのだ。
ディビッド本人も、立て続けに自分のアイデアがこういう形になるとはまさか思わなかったのだろう。なぜなら、これまでレッスンプロとして、ゴルファーのベタープレーのために身を捧げてきた男だから。人を疑うことを知らず、よく言えば無邪気。悪く言えば、一体どこまでお人好しなのか。クラブ開発に稀有な才能を持つ半面、正直者すぎて馬鹿を見るなんて、端から聞いて同情したくなる気持ちも本音としてある。
だが、モノの良し悪しをレポートするとなると、そこはまったく別の話。今回は『SLS-01シングルレングスアイアン』を打った本音の感想をお届けしようと思う。
『SLS-01シングルレングスアイアン』は中空構造のヘッドで内部に樹脂を注入、番手毎の最適飛距離を狙っており、しかもロング、ミドル、ショートアイアンに求められる弾道を作るためカーボンシャフトも開発したという。シャフトの性格を「プロフィール」と呼び、『LIP(ロングアイアンプロフィール)』『MIP』『SIP』と名付ける辺りが他社とは違って非常に個性豊かだと感じる。
まず、下の番手を試そうとしたが、同じ長さのため、どれが何番かソールを確認する必要があるのが正直、かなり面倒くさい。やっとのことで得意な9番を見つけ出して打つと、高打ち出しのナイスショット。37インチの9番は筆者が使うものより当然長い。ところが、普段より屈まずに済んで意外に振りやすく感じたものの、低く抑えた球が打ちづらかった。
続いて6番。6番にしては短尺だが、こちらは当てやすさ的にすごく楽。初めて打つ6番は普段なら怖々打つが、9番と同じ長さで慣れ感も出てこちらも超当たりやすい。そのまま調子に乗って4番にも挑戦。普段は4番を抜いているし、試打でも長さや飛距離を意識して通常なら初モノはミス連発だが、番手の数字と顔が変わっただけだから全く違和感なくやや低めだがナイスショットが打てた。
ただし、正直に言うと、自分が使っている4番アイアンよりは弾道が強めでキャリーが減っていた。(ランは非常に出そうな弾道だが)それと、ヘッドサイズが小ぶりすぎないか? という点が気になったため、ディビッド本人にその辺りを直撃すると、以下のような答えが返ってきた。
「ワンレングスアイアン」が日本で話題になったのは、去年のマスターズでブライソン・デシャンボーが使用したことがきっかけだ。デシャンボーの高校時代からディビッドは彼が望むワンレングスアイアンの開発に従事してきたといい、試行錯誤の末、昨年のマスターズで彼が使うためのプロトタイプ完成に何とかこぎ着けた。
そして、そのマスターズでは、デシャンボーのプロ転向と共にコブラとの電撃契約が発表された。ディビッドはデシャンボーにとって用済みとなったのだろうか。にもかかわらず、デシャンボーはディビッドと作り上げたアイアンをしばらく使用し続けていた。
コブラと契約したデシャンボーは、ディビッドが作り上げたノウハウを惜しみなくコブラに提供したのか、同社は今年始めにワンレングスアイアンを発売し、現在、好評を博しているのだとか。このデシャンボーの裏切り? に対して、ディビッドの深い悲しみがあったことは想像に難くない。
さらに、彼が開発したトゥが上を向く『トルクバランスパター』は、“フェース開閉が少なくて済む”と、同じくデシャンボーの登場と共に密かに話題になったが、なぜかキャロウェイが『Toe-Up』シリーズとして大量生産&市販化。
背景にはデシャンボーと練習ラウンドを共にした、フィル・ミケルソンがイーデルゴルフの『トルクバランスパター』を気に入り、キャロウェイに同様のものを作らせたことがきっかけだと筆者は聞いている。この話が本当かどうか真偽の程は謎だが、決してキャロウェイが悪いわけではないだろう。パテントを抑えておかなかったディビッドが悪いのだ。
ディビッド本人も、立て続けに自分のアイデアがこういう形になるとはまさか思わなかったのだろう。なぜなら、これまでレッスンプロとして、ゴルファーのベタープレーのために身を捧げてきた男だから。人を疑うことを知らず、よく言えば無邪気。悪く言えば、一体どこまでお人好しなのか。クラブ開発に稀有な才能を持つ半面、正直者すぎて馬鹿を見るなんて、端から聞いて同情したくなる気持ちも本音としてある。
だが、モノの良し悪しをレポートするとなると、そこはまったく別の話。今回は『SLS-01シングルレングスアイアン』を打った本音の感想をお届けしようと思う。
『SLS-01シングルレングスアイアン』は中空構造のヘッドで内部に樹脂を注入、番手毎の最適飛距離を狙っており、しかもロング、ミドル、ショートアイアンに求められる弾道を作るためカーボンシャフトも開発したという。シャフトの性格を「プロフィール」と呼び、『LIP(ロングアイアンプロフィール)』『MIP』『SIP』と名付ける辺りが他社とは違って非常に個性豊かだと感じる。
まず、下の番手を試そうとしたが、同じ長さのため、どれが何番かソールを確認する必要があるのが正直、かなり面倒くさい。やっとのことで得意な9番を見つけ出して打つと、高打ち出しのナイスショット。37インチの9番は筆者が使うものより当然長い。ところが、普段より屈まずに済んで意外に振りやすく感じたものの、低く抑えた球が打ちづらかった。
続いて6番。6番にしては短尺だが、こちらは当てやすさ的にすごく楽。初めて打つ6番は普段なら怖々打つが、9番と同じ長さで慣れ感も出てこちらも超当たりやすい。そのまま調子に乗って4番にも挑戦。普段は4番を抜いているし、試打でも長さや飛距離を意識して通常なら初モノはミス連発だが、番手の数字と顔が変わっただけだから全く違和感なくやや低めだがナイスショットが打てた。
ただし、正直に言うと、自分が使っている4番アイアンよりは弾道が強めでキャリーが減っていた。(ランは非常に出そうな弾道だが)それと、ヘッドサイズが小ぶりすぎないか? という点が気になったため、ディビッド本人にその辺りを直撃すると、以下のような答えが返ってきた。
筆者の直球の質問に真摯に応えるディビッド・イーデル
――もっとヘッドサイズを大きくしてくれたら、安心感があったのに。
「YOUはどの番手でも真っすぐに打てていたのに、なぜこれ以上のサイズアップを求めるんだい? 通常の3番や4番アイアンなら、シャフトが長くなる分、コンパクトなサイズだと当たるか不安だという気持ちは分からなくもない。でも、このアイアンは全部7番アイアンと同じ37インチなんだ。ものすごく大きなヘッドサイズを必要とするかい? 先入観を捨ててくれれば、ハッピーだと気づくはずだよ」(ディビッド)
――確かに真っすぐ打てたけど、大きなサイズの方がもっとミスに強くなるんじゃないか?
「No。飛距離が犠牲になる。君もゴルフクラブ担当として仕事をしてきたなら分かるだろう? クラブが長くなれば物理的にヘッドスピードは上がりやすくなる。でも、我々はそこで犠牲になるミスヒットを減らすために、全ての長さが同一で一つのスイングで済むワンレングスアイアンを開発したんだ。その短くなってヘッドスピードが上がりづらい分をどう補って飛距離を出すか? それには大型化によるアバウトなスイングはマイナスに働くと思う」(ディビッド)
――なぜ? 中空構造のヘッドなら大型化もできるんじゃないか?
「君は、普段軟鉄鍛造のシャープなキャビティを使っているらしいが、このアイアンとどのくらいヘッドサイズに差があるというんだい。それに、中空構造だけど、飛距離を失わないために中に樹脂をインサートしている関係もある。釘打ちを想像してみたら分かるんだが、打面は小さい方が打撃力が増すこともある。重さが一点に集中することも大切だし、コンパクトなサイズでプレーヤーの集中力を増し、芯で打ち抜くスイングを身に付けてほしい思いもあるんだ」(ディビッド)
――4番アイアンで、自分のものよりも弾道が低く感じたが?
「OK。そうくると思ったよ。君のようなタイプのゴルファーのために、我々はフィッティングパーツを用意してある。アイアンのヘッドもウェイトを増減させられるし、シャフトは3タイプをこの場でフィッティングで差し替えられる。君の場合はLIPシャフトで(先が動くロングアイアン用?)でウェイトを替えてみる。さぁ、TRY!」
――打ちやすいし、さっきとは全然違う。上がる!
「さっきも言ったけど、これまでの常識に支配されているというか、先入観が強すぎるんだよ、YOUは。アイアンは上の番手が長いことが当たり前。ロングアイアンというほどだからね。で、その番手の常識から来る先入観が邪魔をして、自分でミスを生んでしまうんだ。事実、7番と同じ長さなんだから、「4番だ……」と不安に思わずに7番のつもりで打って欲しい。4番という番手の刻印から来る先入観でミスを生んでしまったら元も子もない。アイアンのミスを減らすためにこのモデルを作り上げたんだから」(ディビッド)
元プロゴルファーでお人好しすぎるディビッド。試打会でもフィッティング会でも、困っているゴルファーを目の前にすると、商売そっちのけですぐにレッスンを始めてしまうという。そんな人柄の彼が生んだワンレングスアイアンは、とにかく芯を喰う確率を上げてくれると感じた。
コンパクトなヘッドサイズに最初は「このサイズは初心者向けではない」と感じたが、これも筆者の先入観なのかもしれない。同じ長さ、重さなら、ボールとの距離も変わらず、スイングも1つでいい。そう合理的に捉え、感じたままに打てる“先入観のない”ゴルファーが手にすべきクラブだと言えるだろう。この日はディビッドから「先入観で目が曇っちゃいないか?」と、大切なアドバイスをもらった気がする……。
■イーデルゴルフ
SLS-01シングルレングスアイアン
去年マスターズで脚光を浴びたB・デシャンボーが使用したワンレングスアイアンを、一般ゴルファーのために設計し直した。専用カーボンシャフト装着、軟鉄鍛造中空ヘッドで重量調整も可能。フィッティングによるカスタムオーダーも対応。178,800円+税(♯5〜PW)
●問い合わせ
イーデルゴルフスタジオ http://edelgolfjapan.com/
Text/Mikiro Nagaoka
「YOUはどの番手でも真っすぐに打てていたのに、なぜこれ以上のサイズアップを求めるんだい? 通常の3番や4番アイアンなら、シャフトが長くなる分、コンパクトなサイズだと当たるか不安だという気持ちは分からなくもない。でも、このアイアンは全部7番アイアンと同じ37インチなんだ。ものすごく大きなヘッドサイズを必要とするかい? 先入観を捨ててくれれば、ハッピーだと気づくはずだよ」(ディビッド)
――確かに真っすぐ打てたけど、大きなサイズの方がもっとミスに強くなるんじゃないか?
「No。飛距離が犠牲になる。君もゴルフクラブ担当として仕事をしてきたなら分かるだろう? クラブが長くなれば物理的にヘッドスピードは上がりやすくなる。でも、我々はそこで犠牲になるミスヒットを減らすために、全ての長さが同一で一つのスイングで済むワンレングスアイアンを開発したんだ。その短くなってヘッドスピードが上がりづらい分をどう補って飛距離を出すか? それには大型化によるアバウトなスイングはマイナスに働くと思う」(ディビッド)
――なぜ? 中空構造のヘッドなら大型化もできるんじゃないか?
「君は、普段軟鉄鍛造のシャープなキャビティを使っているらしいが、このアイアンとどのくらいヘッドサイズに差があるというんだい。それに、中空構造だけど、飛距離を失わないために中に樹脂をインサートしている関係もある。釘打ちを想像してみたら分かるんだが、打面は小さい方が打撃力が増すこともある。重さが一点に集中することも大切だし、コンパクトなサイズでプレーヤーの集中力を増し、芯で打ち抜くスイングを身に付けてほしい思いもあるんだ」(ディビッド)
――4番アイアンで、自分のものよりも弾道が低く感じたが?
「OK。そうくると思ったよ。君のようなタイプのゴルファーのために、我々はフィッティングパーツを用意してある。アイアンのヘッドもウェイトを増減させられるし、シャフトは3タイプをこの場でフィッティングで差し替えられる。君の場合はLIPシャフトで(先が動くロングアイアン用?)でウェイトを替えてみる。さぁ、TRY!」
――打ちやすいし、さっきとは全然違う。上がる!
「さっきも言ったけど、これまでの常識に支配されているというか、先入観が強すぎるんだよ、YOUは。アイアンは上の番手が長いことが当たり前。ロングアイアンというほどだからね。で、その番手の常識から来る先入観が邪魔をして、自分でミスを生んでしまうんだ。事実、7番と同じ長さなんだから、「4番だ……」と不安に思わずに7番のつもりで打って欲しい。4番という番手の刻印から来る先入観でミスを生んでしまったら元も子もない。アイアンのミスを減らすためにこのモデルを作り上げたんだから」(ディビッド)
元プロゴルファーでお人好しすぎるディビッド。試打会でもフィッティング会でも、困っているゴルファーを目の前にすると、商売そっちのけですぐにレッスンを始めてしまうという。そんな人柄の彼が生んだワンレングスアイアンは、とにかく芯を喰う確率を上げてくれると感じた。
コンパクトなヘッドサイズに最初は「このサイズは初心者向けではない」と感じたが、これも筆者の先入観なのかもしれない。同じ長さ、重さなら、ボールとの距離も変わらず、スイングも1つでいい。そう合理的に捉え、感じたままに打てる“先入観のない”ゴルファーが手にすべきクラブだと言えるだろう。この日はディビッドから「先入観で目が曇っちゃいないか?」と、大切なアドバイスをもらった気がする……。
■イーデルゴルフ
SLS-01シングルレングスアイアン
去年マスターズで脚光を浴びたB・デシャンボーが使用したワンレングスアイアンを、一般ゴルファーのために設計し直した。専用カーボンシャフト装着、軟鉄鍛造中空ヘッドで重量調整も可能。フィッティングによるカスタムオーダーも対応。178,800円+税(♯5〜PW)
●問い合わせ
イーデルゴルフスタジオ http://edelgolfjapan.com/
Text/Mikiro Nagaoka