斬新なデザインで独自の地位を築いているゴルフブランド『パーリーゲイツ』。今年もカモフラージュ柄をフィーチャーしたデザインが話題を呼んでいる。そんな『パーリーゲイツ』のクリエイティブディレクター・稲子久美子氏に着任した経緯から今年のテーマ、ブランドの今後について伺った。
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第1回の今回は『パーリーゲイツ』のクリエイティブディレクターに着任した経緯、現在のテイストになるまでの苦労したことなどをお話いただいた。
■まず、パーリーゲイツのデザイナーに着任された経緯をお聞かせください
はい。パーリーゲイツで働く前に、ゴルフではない普通のレディースブランドのデザイナーをやっていたんです。その会社は退職したんですが、まさにその辞めた日に「パーリーゲイツというブランドでデザイナーを探しているんですけど、稲子さん興味ないですか?」という電話をもらって。
■まさに運命のようです
でも、あまりのタイミングに「昨日辞めたばっかりなのですみません」ってお断りしました(笑)。ちょうどその時にゴルフを始めたばっかりで、ゴルフが楽しくて楽しくてしょうがなかったんです。でも、だからと言って「ゴルフウェアをデザインしたくはないな」ってお断りしていました。ただ、そうしてるうちに今のうちの社長である仙座さんから「1日だけでも会ってもらえませんか。会うだけでも…」と電話がかかってくるようになって。それでも、うまーくやんわりお断りしてたんですけど(笑)。結構、辛抱していただきつつお誘いをずーっとしていただいて。
■かなり熱烈なアプローチですね
誘われてから半年後くらいに、「それなら、(社員にならずに)うちとの契約だったらどうですか」って。「それなら他にも仕事できますし、次の仕事のつなぎくらいの気持ちでどうですか」と。そのくらいの感覚で言われたので「次までのつなぎならいいかなぁ」と考えるようになって。契約で他の仕事もすればいいかなと、最初は楽な気持ちで社員ではなく契約でお世話になることにしました。
■そうして着任なさって
着任して最初に言われたことは「あなたの好きなようにパーリーゲイツを変えてください」ということでした。それで好きにしてくださいといわれたので、今(2015年)と同じように自分が本当に着たいものをデザインしていました。「変えていいって言われたし、自分が着たいものを作ろう」って。そしたら、まったく売れなかった。そんなにお洒落なものを求められていなかった時代と言いますか…
■昔と今とでゴルフウェアはだいぶ違いますもんね
そうなんですよ。世界が違うというか、ハイウエストのツータックパンツみたいな、こんなに太い(手を広げて)…玉虫色みたいなテロテロのパンツという時代だったので、私みたいなのが作る、ファッション感度が高いウェアみたいなのは全く受け入れられなかった。「こんなに売れないの?!ひどい!」みたいになって。それで、“自分自身が着たい”というポイントを入れすぎるとだめだな、難しいんだなというのが分かりました。だから最初のころは戦略を変えて、マーケットでどういうふうにやっていけばいいのかなというのを考えるようにしました。最初のころは「自分が着たい」ことを入れすぎずに。そういうこともあって、2000年ごろまでは、着たいシルエットにしたことがなかったですね。好きな色とかは入れたりしてたんですけど、シルエットまで好きなものを作ってしまうとやっぱり売れないですし、パンツは太めにしてました。そういったところが多少苦労だった部分ですね。でもある時代を境に、自分の好きなことが受け入れられるようになり、その比率が逆転し、今は自分の好きなことをどーんとやれる、というふうになってきたのかなと思います。
■比率が変わった理由はどこにあるとお考えですか?
うーん、それはたぶんでも、時代自体が変わってきたということもありますし、やってきたことが受け入れらたと思います。カタログなどのツールを使いながら少しずつ少しずつ。それこそパンツのシルエットとかもホントに数ミリずつ補足して、股上も数ミリずつ上げていったり。ほんとに気づかれないレベルで(笑)。そうやって少しずつ変えていって、「ほらこのほうがいいでしょ。このほうがすっきりしますよね」っていうことを長年にわたって地道に伝えてきたというのはありますね。その速度が年度を受けるごとにだんだん速くなって今に至ったのかな。
■それでもゴルフウェアという性質上、機能性とデザインの両立は難しいのでは?
ありますね。細くしすぎてしまうと、動きづらくなってしまったりしますし。浅いと女性だとパンツが見えちゃうとかもありますしね。お洒落でいることとゴルフをしやすいことは若干相反するので、そういう部分を改良していくために素材を改良してきたということが言えます。「もっとストレッチを効かせよう」とか。でもやっぱり私なんかはどれだけ着やすかろうが「自分のマインドにフィットしないものは嫌。着たくない」。それがいくらゴルフウェアであっても。そういう気持ちが根っこにあります。かといって着づらいのも嫌だな、プレーヤーとして嫌だなということも無いわけではないので。お洒落で、且つ機能的であるためには素材とかを気を遣うというか研究していって両立させていったというのはありますね。
■今まで出てきた以外に何かデザインする上でこだわりはありますか?
私自身「人に着ていただく、人に喜んでいただくためには、まず自分自身が着たいと思うもの、楽しむこと」というのがないと説得力がないと思っています。まぁ世の中ってそういうマーチャンダイジングが多いですけど。というかそればっかりじゃないですか。自分たちは着ないんだけど良いものですよって。
■仕方ないとはいえ、確かにそういうものが多いのは感じます
でも「自分たちが着たい」って言うことが最大の説得力じゃないかって私は考えていて。それをずーっと長い間やってきたという感じ。それが私のこだわりですかね。そのためには妥協をしないですし、自分がいいと思っていれば絶対誰かもいいと思ってくれるに違いないっていうのがデザインの信条ですね。
第2回はこちら
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第1回の今回は『パーリーゲイツ』のクリエイティブディレクターに着任した経緯、現在のテイストになるまでの苦労したことなどをお話いただいた。
■まず、パーリーゲイツのデザイナーに着任された経緯をお聞かせください
はい。パーリーゲイツで働く前に、ゴルフではない普通のレディースブランドのデザイナーをやっていたんです。その会社は退職したんですが、まさにその辞めた日に「パーリーゲイツというブランドでデザイナーを探しているんですけど、稲子さん興味ないですか?」という電話をもらって。
■まさに運命のようです
でも、あまりのタイミングに「昨日辞めたばっかりなのですみません」ってお断りしました(笑)。ちょうどその時にゴルフを始めたばっかりで、ゴルフが楽しくて楽しくてしょうがなかったんです。でも、だからと言って「ゴルフウェアをデザインしたくはないな」ってお断りしていました。ただ、そうしてるうちに今のうちの社長である仙座さんから「1日だけでも会ってもらえませんか。会うだけでも…」と電話がかかってくるようになって。それでも、うまーくやんわりお断りしてたんですけど(笑)。結構、辛抱していただきつつお誘いをずーっとしていただいて。
■かなり熱烈なアプローチですね
誘われてから半年後くらいに、「それなら、(社員にならずに)うちとの契約だったらどうですか」って。「それなら他にも仕事できますし、次の仕事のつなぎくらいの気持ちでどうですか」と。そのくらいの感覚で言われたので「次までのつなぎならいいかなぁ」と考えるようになって。契約で他の仕事もすればいいかなと、最初は楽な気持ちで社員ではなく契約でお世話になることにしました。
■そうして着任なさって
着任して最初に言われたことは「あなたの好きなようにパーリーゲイツを変えてください」ということでした。それで好きにしてくださいといわれたので、今(2015年)と同じように自分が本当に着たいものをデザインしていました。「変えていいって言われたし、自分が着たいものを作ろう」って。そしたら、まったく売れなかった。そんなにお洒落なものを求められていなかった時代と言いますか…
■昔と今とでゴルフウェアはだいぶ違いますもんね
そうなんですよ。世界が違うというか、ハイウエストのツータックパンツみたいな、こんなに太い(手を広げて)…玉虫色みたいなテロテロのパンツという時代だったので、私みたいなのが作る、ファッション感度が高いウェアみたいなのは全く受け入れられなかった。「こんなに売れないの?!ひどい!」みたいになって。それで、“自分自身が着たい”というポイントを入れすぎるとだめだな、難しいんだなというのが分かりました。だから最初のころは戦略を変えて、マーケットでどういうふうにやっていけばいいのかなというのを考えるようにしました。最初のころは「自分が着たい」ことを入れすぎずに。そういうこともあって、2000年ごろまでは、着たいシルエットにしたことがなかったですね。好きな色とかは入れたりしてたんですけど、シルエットまで好きなものを作ってしまうとやっぱり売れないですし、パンツは太めにしてました。そういったところが多少苦労だった部分ですね。でもある時代を境に、自分の好きなことが受け入れられるようになり、その比率が逆転し、今は自分の好きなことをどーんとやれる、というふうになってきたのかなと思います。
■比率が変わった理由はどこにあるとお考えですか?
うーん、それはたぶんでも、時代自体が変わってきたということもありますし、やってきたことが受け入れらたと思います。カタログなどのツールを使いながら少しずつ少しずつ。それこそパンツのシルエットとかもホントに数ミリずつ補足して、股上も数ミリずつ上げていったり。ほんとに気づかれないレベルで(笑)。そうやって少しずつ変えていって、「ほらこのほうがいいでしょ。このほうがすっきりしますよね」っていうことを長年にわたって地道に伝えてきたというのはありますね。その速度が年度を受けるごとにだんだん速くなって今に至ったのかな。
■それでもゴルフウェアという性質上、機能性とデザインの両立は難しいのでは?
ありますね。細くしすぎてしまうと、動きづらくなってしまったりしますし。浅いと女性だとパンツが見えちゃうとかもありますしね。お洒落でいることとゴルフをしやすいことは若干相反するので、そういう部分を改良していくために素材を改良してきたということが言えます。「もっとストレッチを効かせよう」とか。でもやっぱり私なんかはどれだけ着やすかろうが「自分のマインドにフィットしないものは嫌。着たくない」。それがいくらゴルフウェアであっても。そういう気持ちが根っこにあります。かといって着づらいのも嫌だな、プレーヤーとして嫌だなということも無いわけではないので。お洒落で、且つ機能的であるためには素材とかを気を遣うというか研究していって両立させていったというのはありますね。
■今まで出てきた以外に何かデザインする上でこだわりはありますか?
私自身「人に着ていただく、人に喜んでいただくためには、まず自分自身が着たいと思うもの、楽しむこと」というのがないと説得力がないと思っています。まぁ世の中ってそういうマーチャンダイジングが多いですけど。というかそればっかりじゃないですか。自分たちは着ないんだけど良いものですよって。
■仕方ないとはいえ、確かにそういうものが多いのは感じます
でも「自分たちが着たい」って言うことが最大の説得力じゃないかって私は考えていて。それをずーっと長い間やってきたという感じ。それが私のこだわりですかね。そのためには妥協をしないですし、自分がいいと思っていれば絶対誰かもいいと思ってくれるに違いないっていうのがデザインの信条ですね。
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