【記者の目】小ぶり&オフセット少のPING『i210』&『i500』正式発表。男子プロが登壇したけど…
【記者の目】小ぶり&オフセット少のPING『i210』&『i500』正式発表。男子プロが登壇したけど…
配信日時:2018年7月17日 10時22分
17日、都内にてPINGの新製品発表会が開かれた。昨年も中空の『G700』、キャビティの『G400』といった大型かつオフセットの大きな2機種が発売されたが、今回は違う。中空ブレードの『i500』(10月4日発売、23,000円+税〜)キャビティの『i210』(9月6日発売、18,000円+税〜)ともに、小ぶりかつオフセットの少ない中・上級者が好むアイアン2機種が追加される形。
先週のヨーロピアンツアーで『i210』、ウェブドットコムツアーで『i500』を使ったプロが既に優勝、実績も十分の2機種だ。また、PINGでは珍しい軟鉄鍛造の『Glide Forged』ウェッジ(9月6日発売、28,500円+税〜)も限定発売、プロからアマチュアまで競技志向のゴルファーには垂涎のラインナップが完成。どんな特徴があるのだろうか。
<i210アイアンの概要>
前作は『i200』アイアン。比嘉真美子がクラブ契約フリー時代に飛びついたモデルで、昨季は国内男女賞金王(宮里優作、鈴木愛)がこのモデルで頂点に立った。文字どおり王者のアイアンで、2017年から今年の5月までに12勝を達成。今回の『i210』アイアンは、端的に言えば【王者のアイアンの打感が進化した】ということになる。
もちろん、単に打感だけが良くなっただけではなく、もはや完成の域に達したと思われた【王者のアイアン】が、細部に渡ってバージョンアップされている。その中身を見てみよう。
■究極の柔らかさを生む打感の秘密は進化したCTP■
「約30%大きくなり、フェースとの設置面積が約25%増えたエラストマーCTP。約50%柔らかくなったことで振動を極限まで抑え、これまでにないソフトな打感を生み出します。柔らかいことでフェースのたわみも大きくなり、初速が上がることで飛距離性能も向上。重心を約3%低く深くすることで高弾道を生み、ミスヒットにも強くなります」(PING)
展示されていたCTPを『i200』のものと『i210』のもので触り比べると、確かに『i210』の方が遥かにソフト。聞くと「前作がゴム製のタイヤと同じで、今回の『i210』は消しゴムくらい」と、倍ほどの柔らかさに納得した。別表にあるとおり、これらの進化で打感がソフトかつ、高弾道で若干の飛距離アップ効果が生まれるとのこと。鈴木愛と比嘉真美子の両名はプラス2ヤード全番手飛距離が伸びる計算だという。
柔らかなCTPでフェースがたわむため、若干高打ち出し・低スピンになる。鈴木愛も「アゲンストで球が強いのがありがたい」と、風への強さを実感したとのこと。ただし、王者は使い慣れた『i200』をまだ愛用している。
■ツアープロも信頼する操作性がさらに進化■
「溝とフェースだけじゃなく、全番手がバックフェース部分まで精密に削り出された実践向けのヘッド構造。濡れた状態やラフからでもコントロール性に優れた疎水性の高いパールクローム仕上げ。ここは比嘉真美子が重視している抜けの良さでも明らかです。操作性に優れた番手別設計となり、ロングアイアンは大きく、ショートアイアンはシャープなヘッド形状でピンをデッドに狙えます」(PING)
また、既報のように「全米オープン」で発見した際にピンのツアー担当が「少しオフセットがついた」と語っていたが、今回改めて聞くと「トゥ側の処理以外に、サイズやオフセット量は『i200』から変更はありません」とのこと。ただし、ショートアイアンはややすっきり顔に変更されており、この部分を比嘉真美子は気に入っているという。
筆者の目にはトゥ側下部の膨らみが『i200』よりも増したように見え、【全体のシルエットは和顔のアイアンになった印象】も受けたが、これは気の所為だろうか。なお、『i200』よりも低重心度が3%、ヘッド慣性モーメントも3%引き上がっているとのこと。
<i500アイアンの概要>
筆者が一番驚いたのはこのアイアンだった。今までのPINGにも他社にもない新カテゴリーが誕生。そのコンセプトは【飛び系ブレード】というだけあり、見た目はマッスルバックの外観とサイズでありながら、7番でロフト29度と、意外なことにPINGでは2番めの飛び系アイアンとなっていた。(1位は『G700』の28度)
■ステンレス鋳造なのに「FORGED」の意味は?■
「コンパクトなブレード形状から新しい【飛び系アイアン】が登場。高強度で極薄フェースを可能にしたマレージングC300フェースをブレードに初採用。フェース周辺部を極限まで薄く設計して高初速を生み出し、高い飛距離性能を発揮します。また、余剰重量を最適配分した高MOIヘッドにより、ミスに強く抜群のコントロール性能を誇ります」(PING)
筆者はこれが「全米オープン」時にツアー供給されていたのは知っていた。だが、バックフェースの「FORGED」の文字に???となり、報じることなくやむなく正式発表を待つことにした。なぜなら、トゥ側のウェイトポートから明らかに鋳造構造だと思しきものに「FORGED」の文字があり、激しく混乱したからだ。
この「FORGED」の意味とは、鍛造マレージングの意味での「FORGED」であり、中身はステンレス鋳造と聞いてやっと合点がいった。このアイアン、実に紛らわしい。ブレードアイアンは世の中で最も難しいとされているのに、中空でミスに強い。そして、ブレードは最もロフトが寝ているのが当たり前なのに7番で29度。さらにブレードは軟鉄鍛造が当然なのに、鋳造ボディ&鍛造マレージングフェースなのだ…。幾重にも裏切りが隠された『i500』、これはなかなかの曲者と言わざるを得ない。
■HSが落ちても大丈夫。元ブレード好きが使える!■
いまどき、「ブレードアイアン」と聞いて響くゴルファーがどれほどの割合いるのだろうか。筆者の肌感では、従来の「ブレードアイアン」愛好家は全体の1割にも満たないものだと思う。それがカッコいいと分かっていても、誰もが使いこなせるものではない。だが、この『i500』なら話は違ってくる。
「フェース全体が一体となり、ロフトが増える動きをするPING独自の中空構造を採用。コンパクトなブレード型でもフェースが極限までたわむことで最大初速を生み出し、これまでにない高弾道と飛距離でピンを狙えます」とPINGは言う。
そう、PINGの中空構造は、打ち出し角を上げる効果を持っている。中身の詰まった従来の軟鉄鍛造ブレードなら打ち手を選ぶが、この『i500』はパワーがなくても使えるのだ。「20年前はマッスルバックを使っていたし、本当は小ぶりなアイアンの方が好きなんだけど…」なんて人でもシャフト次第で使えるはず。そのため、スチールシャフトの用意は『ゼロス7』(R、S)から選べるようになっているのだ。
例えて言うなら、仲間内にギアに詳しい人がいなければ、『i500』を購入しても黙っていればいい。「えっ!マッスルバックに替えたの?」なんて驚かれても、うまく話をはぐらかせて答えなければ「FORGED」の文字が誤解を生んでくれる。ギア通と一緒に回らない限り、「あの歳でブレードアイアンで飛ばす凄い人」と周囲は思い込むに違いない…。PINGはゴルファー心理を実にうまく突いてきたと思う。発表会には男子プロ5名が登場したが、『i500』は彼らのためのブレードではなく、アマチュアのための現代流、進化版ブレードだと感じた。
<まとめ>
W賞金王アイアンの後継で打感の良くなった『i210』か、新ジャンル【飛び系ブレード】の『i500』か。どちらもPINGの中では1、2を争うコンパクトなサイズだが、一番小さい『iブレード』よりはやや大きい両者。小顔好きの人はどちらを選ぶべきだろうか。
PINGは【打感と操作性】を求めるなら『i210』、【飛びと操作性】を求めるなら『i500』を薦めている。両者を構え比べると、『i500』の方が『i210』より1.5ミリほど小さいくらいだろうか。オフセットも『i500』の方が若干少ないが、よく似たサイズ感とオフセットの少なさだ。
欲張りな筆者はどちらかを選べない。そして「この2つは、コンボセットとしても機能しそう…」と構えて直感的に感じた。4、5番を『i210』、7番以下を『i500』という変則セットで使いたくなってきた。番手としては6番が抜ける形となるが、スコアが出るなら気にはならない。ブレードアイアンの常識をPINGは破壊してくれた。さすれば新たなアイアンセットの可能性を模索してもいいはずだ。
Text/Mikiro Nagaoka
先週のヨーロピアンツアーで『i210』、ウェブドットコムツアーで『i500』を使ったプロが既に優勝、実績も十分の2機種だ。また、PINGでは珍しい軟鉄鍛造の『Glide Forged』ウェッジ(9月6日発売、28,500円+税〜)も限定発売、プロからアマチュアまで競技志向のゴルファーには垂涎のラインナップが完成。どんな特徴があるのだろうか。
<i210アイアンの概要>
前作は『i200』アイアン。比嘉真美子がクラブ契約フリー時代に飛びついたモデルで、昨季は国内男女賞金王(宮里優作、鈴木愛)がこのモデルで頂点に立った。文字どおり王者のアイアンで、2017年から今年の5月までに12勝を達成。今回の『i210』アイアンは、端的に言えば【王者のアイアンの打感が進化した】ということになる。
もちろん、単に打感だけが良くなっただけではなく、もはや完成の域に達したと思われた【王者のアイアン】が、細部に渡ってバージョンアップされている。その中身を見てみよう。
■究極の柔らかさを生む打感の秘密は進化したCTP■
「約30%大きくなり、フェースとの設置面積が約25%増えたエラストマーCTP。約50%柔らかくなったことで振動を極限まで抑え、これまでにないソフトな打感を生み出します。柔らかいことでフェースのたわみも大きくなり、初速が上がることで飛距離性能も向上。重心を約3%低く深くすることで高弾道を生み、ミスヒットにも強くなります」(PING)
展示されていたCTPを『i200』のものと『i210』のもので触り比べると、確かに『i210』の方が遥かにソフト。聞くと「前作がゴム製のタイヤと同じで、今回の『i210』は消しゴムくらい」と、倍ほどの柔らかさに納得した。別表にあるとおり、これらの進化で打感がソフトかつ、高弾道で若干の飛距離アップ効果が生まれるとのこと。鈴木愛と比嘉真美子の両名はプラス2ヤード全番手飛距離が伸びる計算だという。
柔らかなCTPでフェースがたわむため、若干高打ち出し・低スピンになる。鈴木愛も「アゲンストで球が強いのがありがたい」と、風への強さを実感したとのこと。ただし、王者は使い慣れた『i200』をまだ愛用している。
■ツアープロも信頼する操作性がさらに進化■
「溝とフェースだけじゃなく、全番手がバックフェース部分まで精密に削り出された実践向けのヘッド構造。濡れた状態やラフからでもコントロール性に優れた疎水性の高いパールクローム仕上げ。ここは比嘉真美子が重視している抜けの良さでも明らかです。操作性に優れた番手別設計となり、ロングアイアンは大きく、ショートアイアンはシャープなヘッド形状でピンをデッドに狙えます」(PING)
また、既報のように「全米オープン」で発見した際にピンのツアー担当が「少しオフセットがついた」と語っていたが、今回改めて聞くと「トゥ側の処理以外に、サイズやオフセット量は『i200』から変更はありません」とのこと。ただし、ショートアイアンはややすっきり顔に変更されており、この部分を比嘉真美子は気に入っているという。
筆者の目にはトゥ側下部の膨らみが『i200』よりも増したように見え、【全体のシルエットは和顔のアイアンになった印象】も受けたが、これは気の所為だろうか。なお、『i200』よりも低重心度が3%、ヘッド慣性モーメントも3%引き上がっているとのこと。
<i500アイアンの概要>
筆者が一番驚いたのはこのアイアンだった。今までのPINGにも他社にもない新カテゴリーが誕生。そのコンセプトは【飛び系ブレード】というだけあり、見た目はマッスルバックの外観とサイズでありながら、7番でロフト29度と、意外なことにPINGでは2番めの飛び系アイアンとなっていた。(1位は『G700』の28度)
■ステンレス鋳造なのに「FORGED」の意味は?■
「コンパクトなブレード形状から新しい【飛び系アイアン】が登場。高強度で極薄フェースを可能にしたマレージングC300フェースをブレードに初採用。フェース周辺部を極限まで薄く設計して高初速を生み出し、高い飛距離性能を発揮します。また、余剰重量を最適配分した高MOIヘッドにより、ミスに強く抜群のコントロール性能を誇ります」(PING)
筆者はこれが「全米オープン」時にツアー供給されていたのは知っていた。だが、バックフェースの「FORGED」の文字に???となり、報じることなくやむなく正式発表を待つことにした。なぜなら、トゥ側のウェイトポートから明らかに鋳造構造だと思しきものに「FORGED」の文字があり、激しく混乱したからだ。
この「FORGED」の意味とは、鍛造マレージングの意味での「FORGED」であり、中身はステンレス鋳造と聞いてやっと合点がいった。このアイアン、実に紛らわしい。ブレードアイアンは世の中で最も難しいとされているのに、中空でミスに強い。そして、ブレードは最もロフトが寝ているのが当たり前なのに7番で29度。さらにブレードは軟鉄鍛造が当然なのに、鋳造ボディ&鍛造マレージングフェースなのだ…。幾重にも裏切りが隠された『i500』、これはなかなかの曲者と言わざるを得ない。
■HSが落ちても大丈夫。元ブレード好きが使える!■
いまどき、「ブレードアイアン」と聞いて響くゴルファーがどれほどの割合いるのだろうか。筆者の肌感では、従来の「ブレードアイアン」愛好家は全体の1割にも満たないものだと思う。それがカッコいいと分かっていても、誰もが使いこなせるものではない。だが、この『i500』なら話は違ってくる。
「フェース全体が一体となり、ロフトが増える動きをするPING独自の中空構造を採用。コンパクトなブレード型でもフェースが極限までたわむことで最大初速を生み出し、これまでにない高弾道と飛距離でピンを狙えます」とPINGは言う。
そう、PINGの中空構造は、打ち出し角を上げる効果を持っている。中身の詰まった従来の軟鉄鍛造ブレードなら打ち手を選ぶが、この『i500』はパワーがなくても使えるのだ。「20年前はマッスルバックを使っていたし、本当は小ぶりなアイアンの方が好きなんだけど…」なんて人でもシャフト次第で使えるはず。そのため、スチールシャフトの用意は『ゼロス7』(R、S)から選べるようになっているのだ。
例えて言うなら、仲間内にギアに詳しい人がいなければ、『i500』を購入しても黙っていればいい。「えっ!マッスルバックに替えたの?」なんて驚かれても、うまく話をはぐらかせて答えなければ「FORGED」の文字が誤解を生んでくれる。ギア通と一緒に回らない限り、「あの歳でブレードアイアンで飛ばす凄い人」と周囲は思い込むに違いない…。PINGはゴルファー心理を実にうまく突いてきたと思う。発表会には男子プロ5名が登場したが、『i500』は彼らのためのブレードではなく、アマチュアのための現代流、進化版ブレードだと感じた。
<まとめ>
W賞金王アイアンの後継で打感の良くなった『i210』か、新ジャンル【飛び系ブレード】の『i500』か。どちらもPINGの中では1、2を争うコンパクトなサイズだが、一番小さい『iブレード』よりはやや大きい両者。小顔好きの人はどちらを選ぶべきだろうか。
PINGは【打感と操作性】を求めるなら『i210』、【飛びと操作性】を求めるなら『i500』を薦めている。両者を構え比べると、『i500』の方が『i210』より1.5ミリほど小さいくらいだろうか。オフセットも『i500』の方が若干少ないが、よく似たサイズ感とオフセットの少なさだ。
欲張りな筆者はどちらかを選べない。そして「この2つは、コンボセットとしても機能しそう…」と構えて直感的に感じた。4、5番を『i210』、7番以下を『i500』という変則セットで使いたくなってきた。番手としては6番が抜ける形となるが、スコアが出るなら気にはならない。ブレードアイアンの常識をPINGは破壊してくれた。さすれば新たなアイアンセットの可能性を模索してもいいはずだ。
Text/Mikiro Nagaoka