プロが使う道具と市販品に“質の差”はあるのか? ホンマ「否!」、プロ仕様の現代考【記者の目】
プロが使う道具と市販品に“質の差”はあるのか? ホンマ「否!」、プロ仕様の現代考【記者の目】
配信日時:2019年4月24日 01時54分
ホンマが自社SNSに気になる投稿をしている。
「プロが使うゴルフクラブはアマチュアのギアと違う?? 皆さんが気になるこのご質問、私たちの答えは、製造プロセスとクオリティという点で【No】です!
HONMAがゴルフクラブを製造する過程において、プロ仕様、アマチュア仕様の隔たりはありません。ジャスティン・ローズが使うクラブ同様、店頭に並んでいるギアも【巨大ツアーバン】である酒田工場の高次元な製造工程を経て出荷されています。
ツアー会場にはツアープロのお世話をするツアー担当がおり、プロとコミュニケーションを取っています。皆さんのようなアマチュアゴルファーにとって、この役目を担うのは店舗に常駐するHONMAのフィッターやクラブアドバイザーなのです。そして、店舗を通じて酒田工場であなたのニーズにフィットするクラブを製造しています」(同社SNSより)
このホンマの投稿は、個人的には非常に頷ける話。プロ支給品を打ったことがないため、比較は不可能だが、ホンマの市販アイアンの精度の高さは、歴代モデルで打てば誰にでも体感できるはずだと思う。(美観・仕上げ・打感・スペック…総合的に)そして、ジャスティン・ローズ仕様のホンマ『TW-MB ROSE PROTO』が市販され、タイガー・ウッズ仕様のテーラーメイド『P・7TW』も米国で市販されるなど、プロ仕様アイアンの販売が相次いでいる。
■昨季から、契約フリー選手の“購入”報道が増えたが…
ところで、数年前からクラブ契約フリーとなる強い選手が増えており、それに伴ってそれら選手の使用ギアにも注目が集まるようになった。そして、昨季は市原弘大、ジャンボ尾崎らが【量販店でアマチュア向けに販売される市販品を自腹で購入したこと】が報道された。
大山志保もパターを自腹で購入した市販の『スパイダーツアーレッド』を長らく愛用していたし、契約メーカーの影に隠れているが、実はプロゴルファーたちは“商売道具”を市販で購入するケースも少なくない。ただし、昔は強いプロの“プロ仕様”に市販とは別物の特注品が多かったのも事実。
現在でも、「プロ仕様だけは遠藤製作所で作る」「市販品とは違い、打感を柔らかくするために焼きを入れている」などと、特にアイアンで過去からの“プロ特別仕様”の話を複数メーカーから聞いている。それだけに、ホンマの“精度への自信”の投稿には価値があると筆者は感じる。
■ウッドはどうなのか? テーラーメイドが英断
では、ドライバーを中心としたウッドはどうなのか。筆者は過去に苦い経験を何度もしている。大手メーカーほど、供給量の多さから【製品個体差の当たり外れが激しい】と言えばいいだろうか。特に、海外ブランドほどその確率が高かったように感じる。
しかし、テーラーメイドはそのこと自体を認め、画期的な改善法で完全に払拭した。これまではCT値の高いものだけを選り分け、ツアープロ支給品は“ツアースパイシー”という呼び名で管理され、要は「飛ぶヘッドだけをツアープロには供給していた」過去を明かした。(市販品には“外れ”があり、筆者は何度も“外れた”)
今回の『M5』『M6』からは、製造・検品体制すら全面的に見直し、全てのヘッドがCT値の高いもの。一度CT値を越えてしまってから、後からレジンの注入でCT値をギリギリ適合に戻すという、画期的な方法で過去の“事情”を乗り越えて見せたのだ。ホンマと同様に、テーラーメイドの“ウッドは”プロ仕様が存在しなくなったと言える。(海外プロはアイアンで選手個々のプロト主義)
■キャロウェイは、ツアー供給品をそのまま販売!
テーラーメイドを例に、過去のドライバーの“プロ仕様”は、反発自体がギリギリで高いものということになる。その点で言えば、テーラーメイド以外の複数メーカーも、既に“プロ仕様”と市販品の垣根がなくなってきている。そう、2019年モデルが「ドライバーの当たり年」と言われる理由だ。
プロギア『RS』シリーズは2016年から、タイトリストは2018年の『TS』シリーズから、CT値を高めて全数検品体制をとり、反発性能を高めたことを明かしている。つまり、この2社なら、確実にツアークオリティの反発性能を市販品でも手に出来るということだ。(検品体制は別にして、ミズノも『ミズノプロ』シリーズでCT値だけでなくCORの高さも公言)
また、直近でキャロウェイが「ツアー供給されていた『エピックフラッシュサブゼロ』の『◆◆』と『◆◆◆』を5月中旬にキャロウェイエクスクルーシブで限定発売します」としている。(ブレンダン・ジョーンズが使用して勝った『◆』はアナウンス無し)
『エピックフラッシュサブゼロ』には、市販品には◆の印はなく、ツアー供給品の証である微妙に異なる仕様のものが、『◆』『◆◆』『◆◆◆』と合計4種類存在。そのツアー供給品自体をアマチュアも5月に購入できるのだ。(前作『GBB EPIC』の時から、キャロウェイはツアー供給品を販売)
このように「ツアープロが使う道具だけは、市販品と別次元のクオリティ」という過去の常識?は、急激に変化しつつある状況だと分かる。質の高いギアを手にしても、腕前が急激に上がる訳でないことは重々承知だが、やはり“選べる”“入手できる”ことは良いことだ。ゴルファーたるもの、腕前は別にして、質の高い道具を所有して悦に入りたい生き物のはず…。(と、自己正当化してみる)
Text/Mikiro Nagaoka
「プロが使うゴルフクラブはアマチュアのギアと違う?? 皆さんが気になるこのご質問、私たちの答えは、製造プロセスとクオリティという点で【No】です!
HONMAがゴルフクラブを製造する過程において、プロ仕様、アマチュア仕様の隔たりはありません。ジャスティン・ローズが使うクラブ同様、店頭に並んでいるギアも【巨大ツアーバン】である酒田工場の高次元な製造工程を経て出荷されています。
ツアー会場にはツアープロのお世話をするツアー担当がおり、プロとコミュニケーションを取っています。皆さんのようなアマチュアゴルファーにとって、この役目を担うのは店舗に常駐するHONMAのフィッターやクラブアドバイザーなのです。そして、店舗を通じて酒田工場であなたのニーズにフィットするクラブを製造しています」(同社SNSより)
このホンマの投稿は、個人的には非常に頷ける話。プロ支給品を打ったことがないため、比較は不可能だが、ホンマの市販アイアンの精度の高さは、歴代モデルで打てば誰にでも体感できるはずだと思う。(美観・仕上げ・打感・スペック…総合的に)そして、ジャスティン・ローズ仕様のホンマ『TW-MB ROSE PROTO』が市販され、タイガー・ウッズ仕様のテーラーメイド『P・7TW』も米国で市販されるなど、プロ仕様アイアンの販売が相次いでいる。
■昨季から、契約フリー選手の“購入”報道が増えたが…
ところで、数年前からクラブ契約フリーとなる強い選手が増えており、それに伴ってそれら選手の使用ギアにも注目が集まるようになった。そして、昨季は市原弘大、ジャンボ尾崎らが【量販店でアマチュア向けに販売される市販品を自腹で購入したこと】が報道された。
大山志保もパターを自腹で購入した市販の『スパイダーツアーレッド』を長らく愛用していたし、契約メーカーの影に隠れているが、実はプロゴルファーたちは“商売道具”を市販で購入するケースも少なくない。ただし、昔は強いプロの“プロ仕様”に市販とは別物の特注品が多かったのも事実。
現在でも、「プロ仕様だけは遠藤製作所で作る」「市販品とは違い、打感を柔らかくするために焼きを入れている」などと、特にアイアンで過去からの“プロ特別仕様”の話を複数メーカーから聞いている。それだけに、ホンマの“精度への自信”の投稿には価値があると筆者は感じる。
■ウッドはどうなのか? テーラーメイドが英断
では、ドライバーを中心としたウッドはどうなのか。筆者は過去に苦い経験を何度もしている。大手メーカーほど、供給量の多さから【製品個体差の当たり外れが激しい】と言えばいいだろうか。特に、海外ブランドほどその確率が高かったように感じる。
しかし、テーラーメイドはそのこと自体を認め、画期的な改善法で完全に払拭した。これまではCT値の高いものだけを選り分け、ツアープロ支給品は“ツアースパイシー”という呼び名で管理され、要は「飛ぶヘッドだけをツアープロには供給していた」過去を明かした。(市販品には“外れ”があり、筆者は何度も“外れた”)
今回の『M5』『M6』からは、製造・検品体制すら全面的に見直し、全てのヘッドがCT値の高いもの。一度CT値を越えてしまってから、後からレジンの注入でCT値をギリギリ適合に戻すという、画期的な方法で過去の“事情”を乗り越えて見せたのだ。ホンマと同様に、テーラーメイドの“ウッドは”プロ仕様が存在しなくなったと言える。(海外プロはアイアンで選手個々のプロト主義)
■キャロウェイは、ツアー供給品をそのまま販売!
テーラーメイドを例に、過去のドライバーの“プロ仕様”は、反発自体がギリギリで高いものということになる。その点で言えば、テーラーメイド以外の複数メーカーも、既に“プロ仕様”と市販品の垣根がなくなってきている。そう、2019年モデルが「ドライバーの当たり年」と言われる理由だ。
プロギア『RS』シリーズは2016年から、タイトリストは2018年の『TS』シリーズから、CT値を高めて全数検品体制をとり、反発性能を高めたことを明かしている。つまり、この2社なら、確実にツアークオリティの反発性能を市販品でも手に出来るということだ。(検品体制は別にして、ミズノも『ミズノプロ』シリーズでCT値だけでなくCORの高さも公言)
また、直近でキャロウェイが「ツアー供給されていた『エピックフラッシュサブゼロ』の『◆◆』と『◆◆◆』を5月中旬にキャロウェイエクスクルーシブで限定発売します」としている。(ブレンダン・ジョーンズが使用して勝った『◆』はアナウンス無し)
『エピックフラッシュサブゼロ』には、市販品には◆の印はなく、ツアー供給品の証である微妙に異なる仕様のものが、『◆』『◆◆』『◆◆◆』と合計4種類存在。そのツアー供給品自体をアマチュアも5月に購入できるのだ。(前作『GBB EPIC』の時から、キャロウェイはツアー供給品を販売)
このように「ツアープロが使う道具だけは、市販品と別次元のクオリティ」という過去の常識?は、急激に変化しつつある状況だと分かる。質の高いギアを手にしても、腕前が急激に上がる訳でないことは重々承知だが、やはり“選べる”“入手できる”ことは良いことだ。ゴルファーたるもの、腕前は別にして、質の高い道具を所有して悦に入りたい生き物のはず…。(と、自己正当化してみる)
Text/Mikiro Nagaoka