大慣性モーメントのアイアンはいいことばかり!? どんなプレーヤーに合うのか教えて!【フィッターに聞く】
ついに慣性モーメントが4000g/㎠を超えるアイアンが登場。ただし、大慣性モーメントのモデルを使う場合は、注意が必要だ。
配信日時:2024年3月15日 02時35分
クラブの性能を表す言葉としてよく使われるのが「慣性モーメント(MOI/単位はg/cm2)」。物理用語ですが、クラブ的に“慣性モーメントが大きい”というと、「少々芯を外れてもボールが曲がらないし、飛距離も落ちない=スイートエリアが広い」ということになります。
さてこの慣性モーメント、主に使われるのはドライバーだということは皆さんもご存じの通り。ドライバーの左右の慣性モーメントは上限5900g/cm2と決められていますが、今どきのドライバーは上限ギリギリのモデルが多く、そういう意味では、“易しい”モデルがそろっているということになります。ちなみに、『10K』とうたっているドライバーは左右と上下の慣性モーメントを足した数字。ここでは左右の慣性モーメントについて話していきます。
そんな流れの中で、アイアンも大慣性モーメントを追求するモデルが増え始めています。昨年発売されたヤマハの『RMX(リミックス)VD/Xアイアン』は、慣性モーメントが何と4000g/cm2。正直言って、これまでアイアンの慣性モーメントをきちんと調べたことはないのですが、“4000g/cm2”というのはかなり大きな数値で、これを見ただけでも他のモデルに比べて相当曲がりにくいであろうことは容易に想像できます。
形状的には、ネック側に出っ張りがあるなど少し歪な形をしていますが、これが大慣性モーメントの証し。先端にウェートを入れ、ヘッド内部に空洞を設けた中空構造にし、さらにフェース面を薄くするなど、“どこに当たっても”というのは少し言い過ぎかもしれませんが、他のモデルに比べて圧倒的に曲がらないし、飛ぶ構造になっています。
とはいえ誰が打っても真っすぐ、大きく飛ぶかというと、そうではありません。
では、どういう人に合いやすいか。大慣性モーメントの恩恵を受けるために絶対に必要なのは、“フェースローテーションしない”ことです。つまり、フェースの開閉をできるだけ抑えて打つということ。少しでもテークバックでフェースを開こうものなら、トゥ側が重くなっている分、確実に振り遅れるからです。いくら慣性モーメントが大きくても、フェースが開いたまま当たってしまっては、真っすぐ飛んでくれません。
また、大慣性モーメントモデルは、わざとボールを曲げたい人にとっても扱いづらいといえるでしょう。ただただ真っすぐ飛ばすための道具だと思った方がいいと思います。
さらに、ドライバーとの相性も考える必要があります。『RMX VD/Xアイアン』のようなモデルを使うなら、ドライバーも大慣性モーメントの、フェースローテーションを使ってはいけないモデルを選ぶべきです。RMXシリーズでいえば、『RMX VD/Xドライバー』がそれにあたりますが、どのメーカーでも同じブランド名で2〜3タイプのヘッドを用意し、そのひとつは大慣性モーメントを追求したモデルを作っています。必ずそういうモデルと組み合わせて使うようにしましょう。
■吉田 智
よしだ・さとし/クラブメーカーを経て、現在は渋谷にある「プレミアム ゴルフスタジオ」でフィッターを務める。アマチュアだけでなく多くのプロからも信頼され、これまでに女子ツアー5勝、ステップ・アップ・ツアー1勝、シニアツアー1勝をサポートしている
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