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    第36回 マンガの世界だけではない マッチプレーやプレーオフの駆け引き【小田美奈のキャディ目線】

    かつては専属キャディとして宮里藍を支え、現在は二児の母として家庭を支え、ハウスキャディとして一般ゴルファーも支える小田美奈さんが、ツアーの裏側やゴルフに役立つ情報をお届け!

    配信日時:2022年8月16日 06時00分

    • ゴルフライフ
    全米女子アマ決勝戦の19ホール目の様子(USGA)
    全米女子アマ決勝戦の19ホール目の様子(USGA)
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    今年の「全米女子アマ」は、17歳の馬場咲希が(日本ウェルネス高2年)が36ホールマッチプレー方式の決勝戦でチョン・モネ(カナダ)を11&9の大差で下して優勝した。マッチプレー方式は日本のトーナメント競技ではあまり馴染みがないが、ストロークプレー方式とは何が違うのか。宮里藍の専属キャディを経て、現在某ゴルフ場でハウスキャディとして働いている小田美奈さんに、その駆け引きについて聞いてみた。
    __________________________

    全米女子オープンで実現した渋野日向子と馬場咲希の練習ラウンド【写真】

    少し前の事になりますが、私が勤めているゴルフ場でクラブ選手権競技が行われました。「クラチャン」 と言われるその競技の決勝は、36ホールのマッチプレー。普段、なかなか経験することのないマッチプレーですが、トーナメントでもその競技方法を採用しているものは滅多に見られなくなってしまいました。

    ストロークプレーとの違いは、やはり 「相手がいる」 ということ。相手が今どんな状況にあるのか、今どちらがどれだけ勝っているのかを常に考えながら、臨機応変にマネジメントをすることが求められる点ですね。マッチプレーという形での競技は少なくなりましたが、一騎打ちの形になることは珍しいことではありません。それは、数名の選手が同スコアで首位のままホールアウトした際、優勝を決めるためにプレーオフになった場合です。

    2004年の「マスターズGCレディース」、宮里藍プロのキャディをしていたときの最終日最終ホールでの出来事。同スコアでやってきた宮里プロと古閑美保プロ。それぞれのバーディパットは、宮里プロがピン横エッジ、古閑プロがピン奥から。そして、それはどちらも同じような距離…。私がピンから見比べて、なんとなく遠いかなぁぐらいの感覚で、宮里プロが先と判断しました。

    結果はプレーオフとはならず、18番でバーディパットを沈めた宮里プロが優勝。古閑プロはパーで1打差2位でした。試合終了後、先輩キャディから 「見た目で判断できない場合は悩まず自分の選手を優先するように」 と教わりました。先に打つ方が、気持ちも楽だしプレッシャーもかけられるので有利だからと。

    ゴルフマンガのような話ですが、具体的に相手を褒めるなどして意識を一点にもっていかせたり、キャディが伝える風向きに首を傾げてみたりといった、同組のプレーヤーやキャディを少しだけ混乱させる方法は実際あります。また、手袋を取り替えてみたりしてプレーのタイミングを遅らせるなど、技のように言われているものもあって、それを実践している選手を見たことがあります。

    ただ、それがもし相手も知っている方法であったとき、そんな心理戦に持ち込もうとするほど余裕がないのだと気づかせることになってしまうので、使いどころややり方には十分に注意が必要だと感じました。相手がそういったことを目論んでいることを知るためにも、なんとなく卑怯に感じてしまうような方法も、知っていて損はないのかなと思います。

    こういった相手やキャディからの駆け引きに惑わされないために必要なのは、やはり 「自信」 です。自信を持つことで、相手にもコースにも惑わされることなく、状況を判断することができます。迷ったまま打つことがいい結果に繋がることはないということは、皆さんご存知の通り。選手が迷わないように、それが間違っているかもしれないと不安を感じたとしても、自信を持って伝えることがキャディにとって大事なことと言えるでしょう。

    ■小田美奈/おだみな 元プロキャディ。大学のサークルでゴルフを覚え、トーナメント運営のアルバイトからプロキャディに転身。男子、女子両ツアーで活動し、宮里藍のデビューからアメリカ本格参戦まで専属キャディを務めた。これまでに宮里藍で9勝、今井克宗で2勝の計11勝をサポート。同じプロキャディの小田亨さんと結婚し、現在は二児の母をしながら、近所のゴルフ場でハウスキャディとしてアルバイト中。

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