この大会には、近郊のセントジュード子供病院で入院したり治療を受けたりしている重い病気の子供たちが招かれ、数人の子供たちは18番グリーンのピンフラッグをカップにさす「ピンキャディ」の役割を担っていた。
ウイニングパットを沈め、初優勝を飾ったゴメスは、自分の喜びはさておき、まずピンフラッグを差した男の子と握手を交わし、グローブやボールにサインして手渡し、男の子が着ているTシャツにも丁寧にサインし、そして優しく抱いて首筋にキス。アテストテントへ向かったのは、その後。人々は、勝者のそんな姿を、微笑みながら見守った。だからなのだろう。外国人のゴメスに贈られた拍手は、ひときわ大きく、温かかった。
敗北したオーウェンの落胆ぶりは、がっくり落とした肩のシルエットから痛いほど伝わってきた。10年以上も勝利の味を味わえないまま、コツコツと頑張ってきた彼が、43歳にして迎えた214回に1回のチャンス。それをモノにできなかった悔しさは筆舌に尽くせない。負のスパイラルから抜け出したいと願い、もがく気持ちも想像はできる。
けれど、「最初で最後」とは、どうか思わないでほしいのだ。10年は長いけれど、リミットではない。43歳は決して若くはないけれど、限界ではない。
優勝したゴメスのサインをもらい、照れ臭そうに頬をほころばせた男の子は、数日後には、がんの化学療法の再開が待っているそうだ。この子にとって、チャンピオンからもらったサインボールやキスは、どれほどの勇気と希望になることか。
ピンフラッグが上手にさせて、観衆から拍手をもらった女の子のうれしそうな笑顔。選手からハイタッチを求められ、背伸びしながら手を合わせた男の子の誇らしげな笑顔。そういう笑顔のため、人々に喜んでもらうため、夢や希望を膨らませてもらうため、そのためにゴルフをすることは、プロゴルファーだからこそ実現できる、いや、プロゴルファーにしか実現できない、プロゴルファーならではの“特権”なのだ。
ウイニングパットを沈め、初優勝を飾ったゴメスは、自分の喜びはさておき、まずピンフラッグを差した男の子と握手を交わし、グローブやボールにサインして手渡し、男の子が着ているTシャツにも丁寧にサインし、そして優しく抱いて首筋にキス。アテストテントへ向かったのは、その後。人々は、勝者のそんな姿を、微笑みながら見守った。だからなのだろう。外国人のゴメスに贈られた拍手は、ひときわ大きく、温かかった。
敗北したオーウェンの落胆ぶりは、がっくり落とした肩のシルエットから痛いほど伝わってきた。10年以上も勝利の味を味わえないまま、コツコツと頑張ってきた彼が、43歳にして迎えた214回に1回のチャンス。それをモノにできなかった悔しさは筆舌に尽くせない。負のスパイラルから抜け出したいと願い、もがく気持ちも想像はできる。
けれど、「最初で最後」とは、どうか思わないでほしいのだ。10年は長いけれど、リミットではない。43歳は決して若くはないけれど、限界ではない。
優勝したゴメスのサインをもらい、照れ臭そうに頬をほころばせた男の子は、数日後には、がんの化学療法の再開が待っているそうだ。この子にとって、チャンピオンからもらったサインボールやキスは、どれほどの勇気と希望になることか。
ピンフラッグが上手にさせて、観衆から拍手をもらった女の子のうれしそうな笑顔。選手からハイタッチを求められ、背伸びしながら手を合わせた男の子の誇らしげな笑顔。そういう笑顔のため、人々に喜んでもらうため、夢や希望を膨らませてもらうため、そのためにゴルフをすることは、プロゴルファーだからこそ実現できる、いや、プロゴルファーにしか実現できない、プロゴルファーならではの“特権”なのだ。