PINGが軟鉄鍛造MB『ブループリント』に『MCC ALIGN』を採用した理由【記者の目】
PINGが軟鉄鍛造MB『ブループリント』に『MCC ALIGN』を採用した理由【記者の目】
配信日時:2019年5月24日 02時56分
PGAツアー「チャールズ・シュワブチャレンジ」初日、トニー・フィナウが6アンダーの首位発進を決めた。手にするアイアンは今週PINGが8月8日発売を発表した『ブループリント』。フィナウ自身が「このアイアンで、打てないショットは存在しない」と、その操作性を評価する新作である。
⇒PING初の鍛造マッスル『ブループリント』は買いか? 青写真どころか、頭痛の種な件
PING安齋氏から、改めて『ブループリント』に関する説明があった。何しろ、PING初のフル軟鉄鍛造マッスルバックということで、同社の歴史の転換点とも呼べるモデル。これには周到な準備があったと言う。
■手をつけてこなかった分野への、周到な準備
「PINGはこれまで寛容性の高いもの、すべてのゴルファーのために大切なことは【ミスへの強さ、やさしさ】であると信じてきました。ただ、上級者の3割くらい、PGAツアープロでもかなりの人数が難しいはずのマッスルバック(以下、MB)をなぜか好むという事実も認識していました。この不都合な真実を、長年独自に研究していたのです。
PGAツアーのMBユーザーは、使用する理由を“やさしいから”“結果がいいから”と様々に説明します。【MB=やさしい】というマインドが本当なのか、PINGは昨年『ブループリント』のプロトタイプを多くの選手に配り、時間をかけて調査したのです。結果、選手たちが言うとおり、寛容性の高い『iBlade』 より上下左右の円が縮まる結果となる人が24%いました。
例えば、飛ばし屋のトニー・フィナウに豪快な印象があるかもしれませんが、実に多彩なアイアンショットを見せます。だから『ブループリント』の操作性やフィーリングを気に入ってくれました。上級者のうち、3割弱の人はサイズの違うどんなヘッドでも打点がブレない調査結果も出ています。そんな、ごく一部の上級者が、操作性のあるMBをやさしいと感じるのです」(PING安齋氏)
と、PINGはこれまでのポリシーがありつつも、唯一手を付けてこなかった、「ごく一部の上級者のニーズにも応える」ことを決断したのだった。それはこれまでの物づくりのポリシーを曲げたわけではなく、検証結果から「どんなゴルファーのニーズにも応える」と言う、当たり前の判断だった。
■『MCC ALIGN』も2Iも、上級者ニーズに応えた結果
また、グリップの採用もPGAツアーだけでなく世界のツアーの流れを見渡し、「上級者のニーズに対応した結果」だと言う。今回の『ブループリント』にはPINGの他のアイアンには採用されていない、ゴルフプライド『MCC ALIGN』を標準採用したと言う。理由を安齋氏はこう語る。
「先程言ったように、フィナウ選手はいろんな球を操りますよね。昨今のツアープレーヤーはショット毎にクラブの長さを極端に短く持ったりするケースが多く、【グリップの先まで太い方がいい】というプロや上級者が非常に多いのです。ですから、これまでのPING純正グリップのようにテーパーが付いたものではなく、右手部分もずっと太い寸胴の『MCC ALIGN』を標準採用しました。
もちろん、それだけが理由ではなく、ALIGNの常にスクエアに握りやすい点など、さまざまなメリットを考えてのことです。加えて、今回の『ブループリント』には2番アイアン(ロフト17.5度)からご用意していますが、これもごく一部の上級者の要望だとしても、しっかり応えていきたい気持ちの表れですね(笑)」(同)
PING本社には、世界中の契約プロたちが実際に使用するクラブと全く同じレプリカモデルを展示している。筆者はそれらのクラブを実際に握ったため、この話には納得感があった。バッバ・ワトソン、キャメロン・チャンプ、トニー・フィナウ。彼らが使用するグリップは驚くほどの【極太・寸胴】だったのだ。
もちろん、身長も高く、手のサイズが大きいため、一般的な日本人には極太に感じて当然。(筆者のグローブサイズは26cm)が、右手部分までしっかり太く、テーパーの弱めな寸胴タイプというのが共通しており、それがドライバーからアイアンまで貫かれていた点が非常に印象的だった。
■なぜ“軟鉄鍛造”と表記しないのか?
ところで、『ブループリント』の素材・製法は、「8620カーボンスチール・鍛造製法」と表記されている。筆者は「なぜ他社と同様に、分かりやすく【軟鉄鍛造】と表記しないのか?」と問うた。
「ご指摘のとおり、他社では8620カーボンスチールを【S20C】と表記するケースが多いことは承知しています。でも、『グライドフォージド』ウェッジも同様にPINGは8620カーボンスチールと表記していて、一貫して当社の表記をしているだけ。他意はありません」(同)
とのことで、ALBA.netでは今後もPING『ブループリント』を“軟鉄鍛造”と表記することにする。それにしても、PINGの新たな領域拡大をどう捉えるだろうか。筆者には、「ますます死角のないメーカーになった」としか、感じられない。
最近、テーラーメイドやホンマから、歴史に名を残す可能性のあるMB(ROSE PROTO、P7TW)の発売が相次いでいるが、PING『ブループリント』も、まったく違うバックグラウンドから誕生した、歴史に名を残すMBとなる可能性を感じている。
Text/Mikiro Nagaoka
⇒PING初の鍛造マッスル『ブループリント』は買いか? 青写真どころか、頭痛の種な件
PING安齋氏から、改めて『ブループリント』に関する説明があった。何しろ、PING初のフル軟鉄鍛造マッスルバックということで、同社の歴史の転換点とも呼べるモデル。これには周到な準備があったと言う。
■手をつけてこなかった分野への、周到な準備
「PINGはこれまで寛容性の高いもの、すべてのゴルファーのために大切なことは【ミスへの強さ、やさしさ】であると信じてきました。ただ、上級者の3割くらい、PGAツアープロでもかなりの人数が難しいはずのマッスルバック(以下、MB)をなぜか好むという事実も認識していました。この不都合な真実を、長年独自に研究していたのです。
PGAツアーのMBユーザーは、使用する理由を“やさしいから”“結果がいいから”と様々に説明します。【MB=やさしい】というマインドが本当なのか、PINGは昨年『ブループリント』のプロトタイプを多くの選手に配り、時間をかけて調査したのです。結果、選手たちが言うとおり、寛容性の高い『iBlade』 より上下左右の円が縮まる結果となる人が24%いました。
例えば、飛ばし屋のトニー・フィナウに豪快な印象があるかもしれませんが、実に多彩なアイアンショットを見せます。だから『ブループリント』の操作性やフィーリングを気に入ってくれました。上級者のうち、3割弱の人はサイズの違うどんなヘッドでも打点がブレない調査結果も出ています。そんな、ごく一部の上級者が、操作性のあるMBをやさしいと感じるのです」(PING安齋氏)
と、PINGはこれまでのポリシーがありつつも、唯一手を付けてこなかった、「ごく一部の上級者のニーズにも応える」ことを決断したのだった。それはこれまでの物づくりのポリシーを曲げたわけではなく、検証結果から「どんなゴルファーのニーズにも応える」と言う、当たり前の判断だった。
■『MCC ALIGN』も2Iも、上級者ニーズに応えた結果
また、グリップの採用もPGAツアーだけでなく世界のツアーの流れを見渡し、「上級者のニーズに対応した結果」だと言う。今回の『ブループリント』にはPINGの他のアイアンには採用されていない、ゴルフプライド『MCC ALIGN』を標準採用したと言う。理由を安齋氏はこう語る。
「先程言ったように、フィナウ選手はいろんな球を操りますよね。昨今のツアープレーヤーはショット毎にクラブの長さを極端に短く持ったりするケースが多く、【グリップの先まで太い方がいい】というプロや上級者が非常に多いのです。ですから、これまでのPING純正グリップのようにテーパーが付いたものではなく、右手部分もずっと太い寸胴の『MCC ALIGN』を標準採用しました。
もちろん、それだけが理由ではなく、ALIGNの常にスクエアに握りやすい点など、さまざまなメリットを考えてのことです。加えて、今回の『ブループリント』には2番アイアン(ロフト17.5度)からご用意していますが、これもごく一部の上級者の要望だとしても、しっかり応えていきたい気持ちの表れですね(笑)」(同)
PING本社には、世界中の契約プロたちが実際に使用するクラブと全く同じレプリカモデルを展示している。筆者はそれらのクラブを実際に握ったため、この話には納得感があった。バッバ・ワトソン、キャメロン・チャンプ、トニー・フィナウ。彼らが使用するグリップは驚くほどの【極太・寸胴】だったのだ。
もちろん、身長も高く、手のサイズが大きいため、一般的な日本人には極太に感じて当然。(筆者のグローブサイズは26cm)が、右手部分までしっかり太く、テーパーの弱めな寸胴タイプというのが共通しており、それがドライバーからアイアンまで貫かれていた点が非常に印象的だった。
■なぜ“軟鉄鍛造”と表記しないのか?
ところで、『ブループリント』の素材・製法は、「8620カーボンスチール・鍛造製法」と表記されている。筆者は「なぜ他社と同様に、分かりやすく【軟鉄鍛造】と表記しないのか?」と問うた。
「ご指摘のとおり、他社では8620カーボンスチールを【S20C】と表記するケースが多いことは承知しています。でも、『グライドフォージド』ウェッジも同様にPINGは8620カーボンスチールと表記していて、一貫して当社の表記をしているだけ。他意はありません」(同)
とのことで、ALBA.netでは今後もPING『ブループリント』を“軟鉄鍛造”と表記することにする。それにしても、PINGの新たな領域拡大をどう捉えるだろうか。筆者には、「ますます死角のないメーカーになった」としか、感じられない。
最近、テーラーメイドやホンマから、歴史に名を残す可能性のあるMB(ROSE PROTO、P7TW)の発売が相次いでいるが、PING『ブループリント』も、まったく違うバックグラウンドから誕生した、歴史に名を残すMBとなる可能性を感じている。
Text/Mikiro Nagaoka