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    新ゼクシオの「ウェイトプラステクノロジー」で、本当に“トップは安定する”のか?【記者の目】

    新ゼクシオの「ウェイトプラステクノロジー」で、本当に“トップは安定する”のか?【記者の目】

    配信日時:2019年10月8日 10時52分

    • ギア
    『ゼクシオイレブン』『同エックス』に採用された、「ウェイトプラステクノロジー」。
    『ゼクシオイレブン』『同エックス』に採用された、「ウェイトプラステクノロジー」。
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    7日に発表されたダンロップゼクシオイレブン』と『同エックス』。これまでも「スイング慣性モーメント」などの難しい用語を用いながら、アベレージゴルファーのスイングを良くすることに取り組んできた同社。今回の「ウェイトプラステクノロジーで、飛びのパワーポジションに導く」との説明は、さらに踏み込んだもの。アベレージゴルファーの【トップの位置ブレが40%減る】と明言した結果、多くのギアライター、ジャーナリストから突っ込まれることとなった。

    ■「トップの位置が安定する」って言い切って大丈夫!?

    質疑応答では「メーカーがスイングを直す点に言及するが、実際のお客さまに誰が責任を持って伝えるのか? 量販店の店員なのか?」「メーカーがスイングを直す点にまで言及しなければならないほど、クラブ開発の余地は限界まで来ているのか?」と、スイング改善効果の明言自体が“マーケティング優先では?”と疑われていた。

    そう問う気持ちも分かる。筆者も「トップの位置ブレが40%減る」と聞くと、酷いクロスに長年悩むだけに、どうしても過度な期待をしてしまう。加えて、2013年にはヨネックスがレッドデビルこと『EZONE XP』で20g(ゼクシオイレブンは13g)もグリップエンドを重くし、カウンターバランスで重ヘッドを振り切る設計をしていた。そして、トップが安定するとは一言も言及していない。

    前述の通りダンロップは以前からスイング改善領域に踏み込んできたし、クラブ全体のバランスに開発余地が多大にあることは質問者も分かっていたはずだ。今回の11代目の設計意図が、ダンロップの開発者のインタビュー記事によく表れている。

    「前作の10代目は、スイングはそのままにクラブの動きを変えることで打点を芯に集め、ナイスショットを出やすくするというものでした。その同じ流れの中で、今回は“スイング自体を変えることはできないか?”と考えました。そこで着目したのがスイングのトップです。トップで違和感があると、もうナイスショットは期待できないですよね?これはゴルファーなら感覚として分かると思います。そこでモーションキャプチャを使って、アベレージゴルファーのトップでのヘッドの位置を調べてみると、バラつきがハンドボールの大きさほどにもなることが分かりました。それを何とかできないかというのが、【ウェイトプラステクノロジー】開発のきっかけでした」(同社開発・中村拓尊氏)

    これまでの「カウンターバランス」とはどう違うのか?

    「単にグリップを重くするだけでは、クラブ全体が重くなってカウンターバランスの効果を打ち消してしまいます。具体的には、トップまでは効果が出るものの、重いクラブはそこから振りにくいのでスピードが出ません。つまり、力があって振り切れる人はいいものの、多くのアマチュアには、シャフトやグリップを軽くした上でウエイトを載せて初めて効果が得られます。それに、各パーツを軽くしてからウエイトを載せるほうがスイング軌道が安定しますし、スイングスピードも出ます。そこがカウンターバランスとの違いであり、代々軽量化に取り組んできたゼクシオだからこそ実現できたのが【ウェイトプラステクノロジー】なのです」(同)

    ■トップのエラーはクラブで直る? 選手は「練習しかないでしょ」

    これまでも手元重心設計のシャフトでスイング中にかかるゴルファーの負荷を減らそうと軽量化に努めてきた経験から、踏み込んだ発言にはそれなりの理由があったのだ。では、筆者のように酷いシャフトクロスでも【クラブで直る】のか? 上原浩治さんや中嶋常幸、新垣比菜、大堀裕次郎ら契約プロにも意見を聞いた。

    「野球でも、パワーポジションというか、トップのポジションは大事ですよ。ピッチングでもそこが安定しないとコントロールが悪くなるからね。バッターも同じじゃないかな。そこがズレないように、普段から練習してフォームを固めようとしているわけだから」(上原浩治さん)「いや、それは練習しかないでしょ。トップの位置のエラー? それに気づけなきゃ選手としてダメでしょ。普段なんのために練習しているのか」(中嶋常幸プロ)「そうですね、トップを安定させるなら、練習だと思います」(大堀裕次郎、新垣比菜プロ)

    と、アスリートたちから一笑に付されてしまった。やはり、クラブでトップの位置エラーは直らないのか? それは言い過ぎなのか。天に唾するわけではないが、筆者は「自分の出力エラーに気づいてトップの位置安定に導く」可能性をしかと感じる。開発者の意図にもそのヒントがあった。

    「クラブ本来の性能を、どれだけゴルファーが打ち消さないか。これは、ゴルファーのポテンシャルを、どれだけクラブがムダなく引き出すか、と言い換えてもよいのですが、この観点から言うと、“軽くて、よく撓る”のがよいクラブです。ところが、【パワーのある人は必要以上に振り回してしまい、そのクラブは“合わない”ことになります。つまり、クラブの“進化”が、一部のゴルファーには扱いにくさにつながってしまうというジレンマです】。言いにくいのですが、ゼクシオの場合、その進化によって、ブランド誕生当時はメインのお客様だった世代のゴルファーが離れてしまった部分があります。

    いまゴルファーの多くが使っている300g弱というモデルにしても、昔からすれば非常に軽くなっているのですが、ゼクシオの場合、軽量化という進化のスピードが速すぎて、まだまだ自分にはパワーがあり、軽量クラブは自分の使うクラブではないというゴルファーを置き去りにしてしまった。ゼクシオがゴルファーのポテンシャルを引き出すクラブとしては確実にレベルアップしてきたことを思えば、これは非常にもったいないことです。では、軽量クラブが持つ本当の価値に気づいていない、あるいは軽量クラブにある種の偏見を持っているゴルファーにも、ゼクシオの魅力を体験してもらうためにはどうすればいいのか? そう考えた時、やはり2つのラインアップが必要だと」(同)

    これは若者向けの『エックス』が生まれた経緯を語っているのだが、出力エラーがクラブのミスマッチを生むくだりと【ウェイトプラステクノロジー】のトップ安定効果は似た話だと感じる。今回『ゼクシオイレブン』『エックス』を打って、筆者はあることに気づいた。「ウェイトプラステクノロジーの入った『ゼクシオ』だと、手先が力まず、振り回さない」のだ。酷いシャフトクロスに悩むぶんぶん丸の筆者でさえ。

    今まで自分が出力していた力を100だとすれば、50以下になるイメージ。軽いものを引っ叩いていいはずがない前提も分かりながら、自分の出力が50程度に自然に抑えられた。「そんなに軽く振って飛ぶの?」との疑問が誰にも浮かぶはずだが、打てば分かる。初速もヘッドスピードも、50の出力で100の時と遜色ない数字が出た上、球も安定することに心底驚いた。

    「出力を落とすと曲がらないし当たるけど、飛ばない」が、これまでの筆者の常識だったが、『ゼクシオイレブン』も『エックス』も覆してくれた。こればかりは打たなければ気づけない。なにしろ、筆者も打つ前までは「クラブでトップの位置が安定するなんて、あり得ない!」と、ダンロップのロジックを疑いに疑っていたのだから。トップの位置が暴れる出力の問題を抱える人にこそ、先入観を捨てて打ってみてほしい。

    Text/Mikiro Nagaoka

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