パターのリシャフト、考えたことあります?【QPのギアマニュアル】
クラブフィッターとしてアマチュアゴルファーと向き合っている、QPことプロゴルファー関雅史が最新のギアマニュアルを紹介する。今回はパターのシャフトのお話。
配信日時:2023年11月2日 04時11分
パターのシャフトといえば、スチールが定番です。しかし、最近のツアープロのシャフトを見ると、カーボンやカーボンとスチールの複合などバリエーションが増えています。パターのカーボンシャフトは少数派ですが、わりと昔からありました。スチールよりもしなり感が強く、ボールの転がりがよくなるモノが多かったです。グリーン上で苦しんだ経験のある人は、自分で打たなくてもシャフトが仕事をしてくれるので好んで使っていました。ほかにも「ショットと同じようにしなったほうがタイミングを取りやすい」、「テークバックで速く上げがちなので、しなる方がゆっくり上げられる」といったメリットを感じる人には高評価でした。
また、スチールと同等の硬さのカーボンもあります。このメリットは打感の良さです。カーボンはスチールに比べると振動減衰が極端に少なくなるので、ボールを打ったときの振動が手に残りにくく、フィーリングがよくなります。まあ、これに関しては、振動があった方がいいという人もいるので、好みで分かれますね。
そして、最近はスチールよりもねじれないカーボンもあります。アイアンのシャフトの回でもお話ししましたが、スチールよりもカーボンの方がトルクを絞れて、安定志向のモノが作れるようになっています。ツアープロが使用するカーボンシャフトは、硬めが多いですね。実際、2020年のBMW選手権で松山英樹選手が、米国LAゴルフの〈TPZONE ONE35〉というカーボンシャフトを使いました。LAゴルフ製のカーボンシャフトは、ブライソン・デシャンボーやリッキー・ファウラーらも使用して話題になりました。
松山選手が使ったカーボンシャフトは、スチールと同等の重量で、スチールよりトルクを絞ってあり、捻じれの少ないモノ。ストローク中、フェースの向きが安定しやすかったり、自分の思ったタイミングで打ちやすいという狙いを感じられます。ただ、捻じれが少ないということは、車で例えるならF1のハンドルです。遊びがないのでストロークが少しブレるとフェースの向きも変わるので、技量がモロに出ます。カーボンは振動減衰が少なく、フィーリングが良くなるというのは共通していますが、剛性やトルクによって特長に違いが出ます。
手元側がカーボン、先端部がスチールという複合シャフトもあります。最初みたときは斬新だなと思いましたが、 オデッセイのストロークラボを筆頭に、使用プロが増えています。これは軽いカーボンを使うことで、シャフト重量を軽くしています。そのぶん、ヘッド部とグリップ側を重くしているので、クラブの慣性モーメントが大きくなります。また、手元側に重量があるカウンターバランスなので、ストロークを安定させる効果もあります。こちらはフィーリングで合う、合わないがはっきり分かれますね。
そして、定番のスチールシャフト。本来は硬くてねじれないのが特長です。見た目は同じスチールでも、ステップ有りと無しで差が出ます。あるメーカーさんは、ステップ有りの方が少しだけしっかり目にできていて、打感も硬く感じられます。一方、無しの方は、打感は軟らかく感じます。ヘッドやインサートが同じでも、ステップの有り無しで、感じ方が変わります。ステップの有り無しを替えただけで、しっくりくるようになったという話も聞きます。
他にもリシャフト用のスチールシャフトは、重量が重いものがラインナップされています。重い方が、手先で動かしにくいので、安定したストロークを求める方に向いています。
ちなみに市販モデルはほとんどスチールシャフトです。採用されている理由の一つは、〝安さ〟だと思います。今使っているシャフトで違和感がなければ、そのまま使っていても何の問題もないと思います。ただ、素材や重量による違いで、ストロークに与える影響は確実に生まれます。打ち出しの数センチのズレで、結果が左右されるのがパッティングです。かなりマニアックではありますが、ストロークの違和感を解消するために、パターのシャフトを見直すのも、一つの手だと思います。案外ヘッドを替えるよりも効果があるかも知れませんよ。
関雅史(せき・まさし)/1974年生まれ、東京都出身。PGA公認A級ティーチングプロの資格を持ち、クラブフィッティングも行う。東京・駒込のゴルフスタジオ「ゴルフフィールズ」で活動。
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