松山英樹は、超難しいバンス0度の60度ウェッジをフェースをマン開きで打ってるの?
米国ツアーのプレーオフシリーズ初戦を制した松山英樹。初の年間王者を狙う松山が愛用する60度ウェッジのソール形状について詳しくレポートしたい。
配信日時:2024年9月1日 02時00分
米国ツアーのプレーオフシリーズ初戦を制した松山英樹。初の年間王者を狙う松山が愛用する60度ウェッジのソール形状について詳しくレポートしたい。
松山はのウェッジは『クリーブランド RTX4 フォージド』で48・52・56・60度を採用。シャフトは『DGツアーイシュー』を使用している。米国の難しい芝に対応するため特に重要となるのが、60度のウェッジ。この番手のソール形状がかなり独特だというが、松山のクラブを担当するダンロップの宮野敏一氏にじっくり話を聞いた。
「52・56度の『クリーブランド RTX4 フォージド』は、オーソドックスなソール形状で市販品とほとんど変わりません。52・56度は5年以上同じものを使っています。ただ、フェースが開きやすいようにトゥ・ヒール側は落としてC型のソール形状に仕上げています。松山プロはアイアンのように真っすぐが感じられる顔を求めます。ウェッジでもなるべくリーディングエッジはストレート感があった方がいい。ただ、リーディングウェッジをストレートにしすぎると打ちにくいので、いい頃合いを探さないといけないのが難しいところです」
では、一番肝となる60度ウェッジのソールはどんな特徴があるのだろうか?
「『ボーケイ ウェッジ』のKソールのような幅広の形状を、ソールの前と後ろを削った『台形ソール』に仕上げています。今はそういう形状のウェッジを使うプロは米国ではけっこう多いです。タイガー・ウッズもローリー・マキロイもそう。リーディングエッジ側、軌道の入り口に小さいバンスがあるので、芝に入れる際に最初に当てってくれます。入口に狭い大きめのバンスがあると、バミューダなど手ごわい芝でも刺さらずにしっかり打てるのです」
ただ、ソール中央部の大きな面には、ほとんどバンスがなく、平らな部分はバンス0度だという。その方がフェースを開きやすいからだ。いろいろな試行錯誤の上、このソール形状に行きついた。本来はバンスがあったほうが、ソールが芝に当たった際にヘッドが抜けるようになるのでやさしくなるというのが通説だが……。
「実際に測定するとバンスはありますが、ソール真ん中部分のバンスはほぼ0度だと思います。米ツアーでも0度は珍しいですね。松山プロは、フェースをかなり開いて速く振っていきます。コリン・モリカワも同じように振りますね。米国の芝は強いので、しっかり速く振らないと、芝を切って球を上げられないんだと思います。フェースを開いて速く振り、ある程度高さを出していかないとグリーンで止まりません。アプローチでは柔らかい球を打ってボール初速をいかに遅くするかが大事になりますから」
バンス0度の60度ウェッジを宮野氏が打つと、ボールがフェースに乗らずに全然飛ばないと語る。フェースを開いてもバンスが邪魔にならないため、硬いライや難しいラフでも難なく寄せられるのだが、大胆にフェースを開いてバンス0度のモデルで打つ技術は、相当な高等技術と言える。
「米国のバミューダ芝は本当に難しいんです。本来はモジャモジャでフワフワなんですけど、ギュッと密集していて硬くなっているときがあります。それだとヘッドが刺さってしまい、全然飛ばない。バミューダ芝のウェッジでの対策は本当に難しいと思います」
先日、松山はPWを抜いて46度ウェッジを投入した。PWのつかまり過ぎる印象をなくすために変更したのだというが、それもすべて来年のマスターズやメジャー大会に向けての調整の意味もあるという。さらなる高みを目指して松山と宮野氏の試行錯誤の日々は今後も続いていくのだろう。
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●松山英樹は、アイアンもバンスがほとんどないモデルを使っているという。関連記事【松山英樹愛用のアイアンは、バンスがほとんどなくて超難しいってホント?】を読むと、その秘密が分かります。