フックフェースはホントに良くない!?【QPのギアマニュアル】
クラブフィッターとしてアマチュアゴルファーと向き合っている、QPことプロゴルファー関雅史が最新のギアマニュアルを紹介する。今回はドライバーのフェースアングルのお話。
配信日時:2023年10月10日 03時28分
ドライバーを構えた時のヘッド形状、いわゆる顔にこだわりはありますか? 丸顔、洋ナシ顔、人それぞれ好みはあると思います。顔の好みに大きく影響するのがフェースアングルです。フェース角とも呼ばれます。フェースアングルとは、簡単に言えば、ポンと地面にヘッドを置いたときにフェースがどこを向くかということです。フェースが目標方向より左を向くのがフックフェース、またはクローズフェース。右を向くのがオープンフェースです。フェース面が真っすぐ目標を向くスクエアフェースを0度で表し、フックフェースはプラスの数字、オープンフェースはマイナスの数字で表します。
フェースアングルの違いは、ボールの打ち出し方向やつかまり具合、サイドスピン量に影響します。フックフェースは構えたままの角度で当たれば、目標より左方向にボールを打ち出しやすく、ボールがつかまりやすくなります。逆にオープンフェースは右に打ち出しやすく、つかまりが控えめになります。
ひと昔前、ボールをつかまえる技術がまだ身に付いていない、初中級者向けのクラブは、プラス1~3度ぐらいのフックフェースが多く採用されていました。「スライスしなさそう」と気に入る方もいますが、フェースが左を向いていると構えづらいという声をよく聞きました。構えづらさを感じる方は、左に向いたフェースを真っすぐにして構えます。そうするとフックフェースの効果が消えたり、設計通りの性能が発揮されなくなります。
フックフェースを嫌がる人が多かったこともあり、最近は、フックフェースの設計でも塗装などで左に向いて見えないようにしたり、フェースアングルを0度前後で設計し、重心角を大きくするなど、他の方法でボールをつかまえやすくする工夫を施すようになりました。今は、昔ほど左に向いたフェースは少なくなってきています。
一方、上級者やアスリート向けのドライバーは、昔からオープンフェースに作られることが多いのです。最近のモデルの数値でいうと、マイナス2~4度で、特にスイングでボールをつかまえるドローヒッターは、ヘッド性能でつかまり過ぎないように、強いオープンフェースを好む傾向にあります。実は、これにはもうひとつ理由があります。ヘッドは後ろ側が膨らんでいる形状から、目の錯覚を起こして、設計の数値よりフェース面が左に向いて見えるようなのです。数字上ゼロ度のスクエアフェースでも、人間の目にはプラス2度のフックに見えます。マイナス2度のオープンフェースがスクエアに見えるのです。ですから数字上、オープンフェースの設計が多いのだと思います。
これは物理的な現象で、腕前は関係ないのですが、つかまり過ぎを嫌う上級者がクラブを選ぶ基準として重要視することが多いため、より右を向いたフェースアングルが好まれるわけです。
ドライバーがパーシモンだったころ、フェースアングルは今よりもオープンで、8度ほど開いていました。当時はフェースの開閉を大きく使ってボールをつかまえるスイングをしていた影響です。その中でも当時のドローヒッターは特に開いたものを好み、反対にフェードヒッターは比較的オープンの度合いが少ないものを好みました。スイングのイメージや打ちたい弾道によってフェースアングルの好みは変わってしかるべきなのです。
一般的にスクエアに見えるヘッドが「いい顔」とされがちです。しかし、先ほどもいいましたが、実際の設計上では2度ほどオープンフェースになっていることが多いのです。どんなに「いい顔」でも、スライスに悩むゴルファーには向いているとはいいがたいです。やはりフックフェースのモデルの方が、スライスしない弾道が打てるはずです。一般的にフックフェースが肯定的に受け入れられることが少ないのですが、フックフェースを使うことでスライスが収まるゴルファーはたくさんいますし、上級者でもつかまったフェードを楽に打つにはオススメです。
ヘッド形状が美しいことに越したことはないですが、形にこだわりすぎてミスが大きくなってしまっているゴルファーは意外と多いです。スイングタイプによって好みは分かれていいんです。
関雅史(せき・まさし)/1974年生まれ、東京都出身。PGA公認A級ティーチングプロの資格を持ち、クラブフィッティングも行う。東京・駒込のゴルフスタジオ「ゴルフフィールズ」で活動。
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