ドライバーは軽くて振れるものが飛ぶわけでもない!【QPのギアマニュアル】
クラブフィッターとしてアマチュアゴルファーと向き合っている、QPことプロゴルファー関雅史が最新のギアマニュアルを紹介する。今回はドライバーの総重量のお話。
配信日時:2023年9月21日 08時11分
皆さんは、ご自身で使っているドライバーの重さをご存じでしょうか。重さは飛距離や方向性に影響する、けっこう大事な要素です。ウッドがパーシモンの時代は、すべてのクラブが重く、ドライバーは約360グラムもありました。当時は軽く作る技術がなかったため、クラブの重さに対する選択肢がほとんどなく、非力なゴルファーは不利でした。技術が進歩した今では、軽量化が進み、一般的に280~310グラムのモデルが多く、最軽量では260グラムを切るものもあります。軽量ドライバーでも、しっかりしたシャフトを装着したモデルが増え、ヘッドの重さに対して選択肢の幅がかなり広くなり、自分に合った重さのクラブを手にすることができるようになりました。
ゴルフクラブの特性には、ボールがつかまりやすくなるフックフェースはアベレージ向き、つかまりを抑制しやすい手元調子のシャフトはアスリート向きなど、区分けすることがあります。しかし、本来はクラブの特性だけで〝○○向き〟と決めることはできません。フックフェースが好きなアスリートだっていますし、手元がしなるシャフトでミート率が劇的に上がったアベレージゴルファーだっています。
ですが、総重量だけは唯一、アベレージ向け、アスリート向けといった区分けの目安があるのです!初心者を含めたごく一般的なアベレージゴルファーは280~290グラム。上達志向のあるアマチュアやセミアスリート、スコアでいえば80~90台のゴルファーは290グラム~300グラム。競技に出るような70台でプレーするアスリートゴルファーは310グラム以上必要です。もちろん体形やヘッドスピードによって多少は前後しますが、スイングスキルによって適正な総重量は変わってくるのです。
最近の市場では、軽量化モデルのドライバーが増えて、ある種流行になっています。加齢による体力の衰えなどから、軽量ドライバーを手にする方が多いのでしょう。確かに重めのクラブと軽めのクラブを比較しながら打つと、軽めのクラブの軽さが強調され、ヘッドスピードが高くなりやすいもの。弾道計測器などのデータを比較すると、軽めのクラブのほうが飛ぶケースが多いものです。ですが、それは最初だけです。軽めのクラブを購入し、そのクラブだけを使っていると、その重量に慣れてしまい、だんだんと速く振れなくなっていきます。つまり飛ばなくなってしまうのです。
もちろん重すぎてもダメです。重すぎるとスイング中の抵抗が大きくなりすぎ、ヘッドスピードが下がったり、最悪の場合ダフリのミスにつながります。クラブの適正重量は、個々の基礎体力を基本とし、スイングスキルや加齢によって変動しますが、よほどのことがない限り急激に変化することはありません。体力が衰えてきたからといって、いきなり軽量クラブを使って、さらに飛ばなくなったゴルファーを私はたくさん見てきています。
先ほど目安をお話ししましたが、重さで迷ったら少し重めの仕様をお勧めしています。なぜなら適度に重さを持ったクラブのほうが、メリットが大きいからです。メリットはいくつかありますが、一つはミスヒットに強くなること。芯を外したときに、重たいほうがヘッドはブレにくくなります。またスイング中にクラブから発生する遠心力が軽いものよりも大きくなるので、それに負けまいと自然と踏ん張り、体が浮いたり余計な動きもしにくくなるため、スイングの再現性が高くなります。
どんなにクラブが進化しても、ゴルファーそれぞれの体格やスキルに見合ったクラブの適正重量は急に大きくは変わらないのです。目先のヘッドスピードに目がくらむと、軽すぎるドライバーは長い目で見てデメリットを生む可能性もありますよ。
関雅史(せき・まさし)/1974年生まれ、東京都出身。PGA公認A級ティーチングプロの資格を持ち、クラブフィッティングも行う。東京・駒込のゴルフスタジオ「ゴルフフィールズ」で活動。
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