【記者の目】新作が明らかに飛ぶのに“替えられない”スピースと石川遼。その姿が重なる件
【記者の目】新作が明らかに飛ぶのに“替えられない”スピースと石川遼。その姿が重なる件
配信日時:2018年8月1日 02時05分
<WGC-ブリヂストン招待 事前情報◇31日◇ファイアーストーンCC(7400ヤード・パー70)>
「WGC-ブリヂストン招待」の練習日。今年で最後となるファイアーストーンCCでの開催、選手たちはその歴史に名を刻もうと、調整を重ねている。既報のとおり、ディフェンディングチャンピオンの松山英樹がさまざまな新ギアをテストする中、現地記者から「ジョーダン・スピースが新作を…」と連絡が入った。
■スピースが新作TS2、TS3を全然テストしない件■
「トーマス、ホフマン、アン・ビョンフンらがすでに入れているタイトリストの『TS』シリーズのドライバーですが、この日の練習でもスピースは打ちませんでした。タイトリストの人が来て、ものがあるにも関わらず、です。スピースがいなくなった後、タイトリストの2人は何やら話していました。その後、FWだけは新しいものを打っていましたが…」(現地記者A)
⇒タイトリストの新作『TS』シリーズとは?画像大量でお届け!
筆者にすれば、当たり前のことで驚きはない。むしろ、『TS』シリーズのFWをテストしたこと自体が驚きで、前向きなニュースに感じた。なにしろ、スピースは『915D2』ドライバーの申し子なのだ。2015年の「マスターズ」「全米オープン」、2017年の「全英オープン」と、メジャー3勝すべてをこのドライバーで獲ってきた。(先日の「全英オープン」も最終日途中まで惜しかった…)
メジャーだけではない。2014年の11月に『915D2』に替えたスピース。投入直後に「オーストラリアンオープン」「ヒーローワールドチャレンジ」で勝利。PGAツアーでは現在までに11勝しているが、2勝目の2015年の「バルスパー選手権」以来、この『915D2』で勝利を積み上げてきた。スピースのサクセスストーリーは、このモデルと共にあると言っても過言ではない。
「生半可なことでは、体の一部を替えられない」というのが、スピースの本音ではないだろうか。
『TS』シリーズが飛ぶのは、他のタイトリスト勢の投入スピードからすれば、おそらく本当のことだと思う。ただし、スピースに当てはまらないのは当然のこと。もはや、『915D2』は彼の体の一部になっているのだと思う。数ヤードの飛びとどちらが重要か? アマチュアの筆者でも、スピースの気持ちは容易に想像ができてしまう。
■スピースと重なる、『XR16』を替えられない石川遼■
筆者の目には、そんなスピースと現在の石川遼が重なって見えている。もちろん、デビュー時からスイングの変わらないスピースとは違い、石川遼はかねてからスイング修正に意欲的だ。おそらく、世の中のゴルファーには「スピースと石川遼が重なる?」と、筆者と真逆の反応を示すだろうが、現在の石川遼は明らかに違って感じる。
先日、「ISPSハンダマッチプレー」では一回戦負けとなったが、これまで口にしてきたスイング修正は語られなかった。「ドライバーもアイアンも全体的にバランスがいい状態。ショートゲームを含めたトータルを積み上げる段階に入って1ヶ月です。何かを変えるという段階は脱して今の練習を続けていけば結果は出せる」と、ドライバーの手元浮きなどに悩む数ヶ月前の姿はない。大幅なスイング修正について今後語られることは減るだろう。
石川のクラブ担当をするキャロウェイ島田氏にも話を聞いた。「なぜ2本の柱が入った『GBB EPIC STAR』を使えていたのに、それよりやさしくなった同じ2本の柱の『ROGUE』シリーズは使えないのか?」と。石川遼は、昨年後半の帰国以来、過去モデルの『XR16』を使い続けている。そして、そのドライバーで約半年間悩んでいたのだ。筆者には『XR16』に固執する理由が見いだせなかった。
「新作(ROGUE)のテストはもちろん常にやっていますし、常時新作も持っている状態ですよ。テストでも明らかにボール初速などエースより飛ぶデータも出てます。でも、なかなか替えるのは難しいと思います。元々、クラブ変更にはかなり慎重なタイプで、テストし始めてから3、4週間徹底的に打ち込んでから“もう大丈夫”という段階まで来て初めて試合に投入するタイプ。
それに、帰国後の昨年後半に5試合連続の予選落ちなど、本当に苦しんできました。いま使う『XR』はそれこそ何万球打ったんだろう? というくらい、凄まじい練習量をしてきました。どん底の時期から、このクラブで練習を積み上げて今がある。このクラブでスイング作りを一から見直して積み上げてきたので、そう簡単には替えられないと思いますよ」(キャロウェイ島田氏)
そう、スピースと同様、『XR16』は石川の体の一部となっているのだ。
表には見えない、石川の影の努力と苦悩をつぶさに見てきた島田氏の言葉だけに、筆者は納得せざるを得なかった。「今季から選手会長職があり、これまでクラブテストに充てられた時間もままならないこともあると思います。本人は絶対にそれを口にしませんけど」と、島田氏が最後につぶやいた一言がやけに胸に刺さった。
アマチュアと違い、契約するメーカーにサポートされているプロゴルファー。クラブを替えるにも、替えられないことにも、その影には我々の想像以上の“事情”がある。
Text/Mikiro Nagaoka
「WGC-ブリヂストン招待」の練習日。今年で最後となるファイアーストーンCCでの開催、選手たちはその歴史に名を刻もうと、調整を重ねている。既報のとおり、ディフェンディングチャンピオンの松山英樹がさまざまな新ギアをテストする中、現地記者から「ジョーダン・スピースが新作を…」と連絡が入った。
■スピースが新作TS2、TS3を全然テストしない件■
「トーマス、ホフマン、アン・ビョンフンらがすでに入れているタイトリストの『TS』シリーズのドライバーですが、この日の練習でもスピースは打ちませんでした。タイトリストの人が来て、ものがあるにも関わらず、です。スピースがいなくなった後、タイトリストの2人は何やら話していました。その後、FWだけは新しいものを打っていましたが…」(現地記者A)
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筆者にすれば、当たり前のことで驚きはない。むしろ、『TS』シリーズのFWをテストしたこと自体が驚きで、前向きなニュースに感じた。なにしろ、スピースは『915D2』ドライバーの申し子なのだ。2015年の「マスターズ」「全米オープン」、2017年の「全英オープン」と、メジャー3勝すべてをこのドライバーで獲ってきた。(先日の「全英オープン」も最終日途中まで惜しかった…)
メジャーだけではない。2014年の11月に『915D2』に替えたスピース。投入直後に「オーストラリアンオープン」「ヒーローワールドチャレンジ」で勝利。PGAツアーでは現在までに11勝しているが、2勝目の2015年の「バルスパー選手権」以来、この『915D2』で勝利を積み上げてきた。スピースのサクセスストーリーは、このモデルと共にあると言っても過言ではない。
「生半可なことでは、体の一部を替えられない」というのが、スピースの本音ではないだろうか。
『TS』シリーズが飛ぶのは、他のタイトリスト勢の投入スピードからすれば、おそらく本当のことだと思う。ただし、スピースに当てはまらないのは当然のこと。もはや、『915D2』は彼の体の一部になっているのだと思う。数ヤードの飛びとどちらが重要か? アマチュアの筆者でも、スピースの気持ちは容易に想像ができてしまう。
■スピースと重なる、『XR16』を替えられない石川遼■
筆者の目には、そんなスピースと現在の石川遼が重なって見えている。もちろん、デビュー時からスイングの変わらないスピースとは違い、石川遼はかねてからスイング修正に意欲的だ。おそらく、世の中のゴルファーには「スピースと石川遼が重なる?」と、筆者と真逆の反応を示すだろうが、現在の石川遼は明らかに違って感じる。
先日、「ISPSハンダマッチプレー」では一回戦負けとなったが、これまで口にしてきたスイング修正は語られなかった。「ドライバーもアイアンも全体的にバランスがいい状態。ショートゲームを含めたトータルを積み上げる段階に入って1ヶ月です。何かを変えるという段階は脱して今の練習を続けていけば結果は出せる」と、ドライバーの手元浮きなどに悩む数ヶ月前の姿はない。大幅なスイング修正について今後語られることは減るだろう。
石川のクラブ担当をするキャロウェイ島田氏にも話を聞いた。「なぜ2本の柱が入った『GBB EPIC STAR』を使えていたのに、それよりやさしくなった同じ2本の柱の『ROGUE』シリーズは使えないのか?」と。石川遼は、昨年後半の帰国以来、過去モデルの『XR16』を使い続けている。そして、そのドライバーで約半年間悩んでいたのだ。筆者には『XR16』に固執する理由が見いだせなかった。
「新作(ROGUE)のテストはもちろん常にやっていますし、常時新作も持っている状態ですよ。テストでも明らかにボール初速などエースより飛ぶデータも出てます。でも、なかなか替えるのは難しいと思います。元々、クラブ変更にはかなり慎重なタイプで、テストし始めてから3、4週間徹底的に打ち込んでから“もう大丈夫”という段階まで来て初めて試合に投入するタイプ。
それに、帰国後の昨年後半に5試合連続の予選落ちなど、本当に苦しんできました。いま使う『XR』はそれこそ何万球打ったんだろう? というくらい、凄まじい練習量をしてきました。どん底の時期から、このクラブで練習を積み上げて今がある。このクラブでスイング作りを一から見直して積み上げてきたので、そう簡単には替えられないと思いますよ」(キャロウェイ島田氏)
そう、スピースと同様、『XR16』は石川の体の一部となっているのだ。
表には見えない、石川の影の努力と苦悩をつぶさに見てきた島田氏の言葉だけに、筆者は納得せざるを得なかった。「今季から選手会長職があり、これまでクラブテストに充てられた時間もままならないこともあると思います。本人は絶対にそれを口にしませんけど」と、島田氏が最後につぶやいた一言がやけに胸に刺さった。
アマチュアと違い、契約するメーカーにサポートされているプロゴルファー。クラブを替えるにも、替えられないことにも、その影には我々の想像以上の“事情”がある。
Text/Mikiro Nagaoka