最近迷う、アイアンシャフトの選び方【QPのギアマニュアル】
クラブフィッターとしてアマチュアゴルファーと向き合っている、QPことプロゴルファー関雅史が最新のギアマニュアルを紹介する。今回はアイアンのシャフトの選び方のお話。
配信日時:2023年10月25日 02時30分
アイアンのシャフトは、スチールとカーボンの2種類あります。重いシャフトはスチール、軽いシャフトはカーボンと、ひと昔前は重量の違いで使い分けていました。今でもそのイメージを持っている方も多いと思いますが、技術の進化により、重量だけで選ぶのはもったいなくなっています。一般的に鉄素材のスチールシャフトは、「ねじれない」「しならない」のが特性で、安定してボールをとらえやすいのが特長です。炭素繊維素材のカーボンシャフトは「ねじれる」「しなる」のが特性で、しなり戻りが鋭く、振り抜きのよさやボールが上がりやすい特長があります。また、インパクトからフォロースルーにかけてシャフトは振動するものですが、その振動はスチールよりもカーボンの方が少なく、打感がクリアに感じられます。
2種類の素材を単純に比べると、ドライバーのシャフトがほぼカーボンシャフトということからも「カーボン=飛距離」、「スチール=安定」といえます。ただ、これはあくまでも一般論です。最近は飛ばし屋の男子プロでさえ、カーボンシャフトを挿しています。これは、飛距離が欲しいからではありません。
カーボンシャフトの先端部に金属繊維を入れるなどの設計によって、スチールよりもトルクを絞れて、安定志向のシャフトがつくれるようになっているのです。その設計自由度の高さがカーボンの最大の特長といえますが、開発費や製造工程が複雑化するため、高価になりやすいという側面もあります。
飛びのカーボンが〝安定部門〟にも幅を広げていますが、スチールも黙ってはいません。素材などの進化により60グラム台や70グラム台の軽量モデルも開発され、カーボン並みに軟らかくしなり、先端が動いてボールを容易に上げてくれるものも出てきました。
カーボンは40グラム台など一部超軽量帯がありますが、60グラム台から130グラム台まで同重量帯でスチールとカーボンが存在し、その性能差がなくなってきています。重さに関係なく、選択肢が広がったといえます。
シャフトを選ぶ基準は、ショットの安定感を求めるならスチール、飛距離やボールの上がりやすさを重視するならカーボンと考えるのがいいでしょう。その素材の中で自分に合った重量を選ぶのが、おすすめです。
しかし、イメージやニーズによっても選択肢は変わります。例えば、ゴルフ歴の長いプレーヤーは、重いクラブでゴルフをしてきたので、重いスチールを振るのに慣れています。カーボンシャフトで地面にあるボールを打つと、シャフトがねじれそうで嫌という声も聴きます。そういう方は、軽量のスチールの方がマッチすることが多いです。
また、ヘッドスピードはツアープロ並みにあるけど、ボールが上がりにくいという人は、ツアープロ向けの重いカーボンシャフトが合うケースもあります。加齢により、そろそろカーボンかなと思っている人は、しなって上がりやすい軽量スチールがよかったり、逆に、パワーがある人でも、カーボンの方が振り心地がいいということもあります。重量のイメージに関係なく、試す価値はあります。
ただし、「スチールは重そう」や「カーボンはねじれそう」という先入観があまりにも強いと、スイングにスムーズさが失われることもあります。ニーズとイメージをすり合わせて選びましょう。
関雅史(せき・まさし)/1974年生まれ、東京都出身。PGA公認A級ティーチングプロの資格を持ち、クラブフィッティングも行う。東京・駒込のゴルフスタジオ「ゴルフフィールズ」で活動。
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