流行りのショートスラントネックって、どうなの?【QPのギアマニュアル】
クラブフィッターとしてアマチュアゴルファーと向き合っている、QPことプロゴルファー関雅史が最新のギアマニュアルを紹介する。今回はパターのショートスラントネックのお話。
配信日時:2023年11月21日 02時50分
最近、米ツアーを中心に使用者が増えているショートスラントネックのパター。ダスティン・ジョンソンらが使用し、ここ数年人気が高まっているネック形状です。アマチュアの方の使用者も多いですよね。
ショートスラントネックは、もともとはテーラーメイドの赤いヘッドが目印の「スパイダー ツアー レッド」で採用されました。慣性モーメントが高く、ミスヒットしてもブレにくいヘッドとL字のようなネック形状をしているので、構えやすいとか、ヘッドを開閉しやすいといわれていました。
しかし、私は少し違う感想を持っています。ショット同様、パットのストロークも振り子の動きです。振り子ということは、ダウンスイングの際に、重心位置はシャフト軸線上と一直線になろうとする性質があります。また、人間って重心をすごく感じるものなので、必然的に重心でボールを打とうとします。つまり、慣性モーメントが高い、重心位置が深いモデルのヘッドの場合、重心がヘッドの後ろ側にあるので、クラブも人間の特性もフェースが閉じる動きが強くなります。自分でストロークするのではなく、打たされているわけです。
スライスラインが苦手という人なら、その特性をいかしてボールをつかまえてくれるので、カップの手前で切れにくくなるメリットはあります。
別の視点で見ると、ヘッドを真っすぐ動かそうとしても、勝手にフェースが返りやすくなるので、意図しない引っかけも出てしまいます。
グリップをあまり強く握らず、ストロークをゆっくりした方が合いやすいので、高速グリーン向きです。自分で打たないといけない遅いグリーンの場合は、どうしても引っかけやすくなります。引っかけ癖のある人は、ショートスラントで高慣性モーメントのヘッドは要注意ですね。
パッティングで引っかけを嫌う人は、圧倒的に多いと思います。私も例外なく、その癖を持っております。そういう人は、実は、ショートスラントネックと似ているL字マレットが意外とハマります。
L字マレットの場合、重心は浅く、ネックがヒール側についているので、マシン的に打つとインパクトのときにフェースが開きやすくなります。右に打ち出しやすくなるので、設計上は、引っかかりにくい形状です。
ただ、多くの方は、L字系は難しいというイメージを持っていますが、それは先入観です。たしかに、大型マレットに比べるとスイートスポットが狭く、慣性モーメントは低く、数値上で見ると、再現性が高くないと思ったようなボールを打つのは難しくなります。
よく考えてください。アイアンが真っすぐ打てる人は、アイアンの形状は難しいとは思いませんよね。パターだけ大きなヘッドで、別物のイメージをするより、ショットもパットも同じ形状でシンプルに打ちたいという人も多いのです。アイアンが苦手じゃない人は、決してL字は難しくありません。
設計上、ネックがヒール側にどっぷりついているので、どうしてもトゥ側を動かすイメージが出てしまうと思います。そういう場合は、アイアンショットのイメージ、特にライン出しをするようにストロークしてみましょう。フォローでヘッドを低く出して、押し込む感覚です。ヘッドを低く出すと引っかかることはないのです。ヘッドが早く上がるようだと引っかかってしまいます。
ショートスラントとL字マレットでは構えたときのネックの形状は似ていますが、性質は異なります。引っかけを嫌う場合はL字系のマレットを、スライスラインが苦手で、ボールが捕まらない人はショートスラントネックの慣性モーメントの大きなモデルが癖を治してくれます。
関雅史(せき・まさし)/1974年生まれ、東京都出身。PGA公認A級ティーチングプロの資格を持ち、クラブフィッティングも行う。東京・駒込のゴルフスタジオ「ゴルフフィールズ」で活動。
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