“勝利への力”、グラファイトデザインの新作『TOUR AD VF』、『秩父 弐』を【打ってみた】
グラファイトデザインらしい、赤✕黒の新作を「打ってみた!」
配信日時:2023年8月29日 03時09分
28日、千葉県の練習場でグラファイトデザインの2024年モデルの試打・発表会が行われた。発表されたのは、 “進化系元調子”の『TOUR AD VF』と、同社初の“ベクトラン”素材を搭載した『秩父 弐』。既にツアー供給済みの『TOUR AD VF』は、Victory Force(勝利への力)の頭文字から名付けられ、男子プロは池村寛世・塩見好輝・山田大晟、女子プロは全美貞・内田琴子らが使用しており「強さの中にやさしさを両立する」がコンセプトだとか。
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同社企画担当で、長年男子ツアーレップを努めた高橋雅也氏によれば「今平周吾プロ、永野竜太郎プロ、中島啓太プロも現在前向きにテストいただいていますが、それぞれ好調のため、シャフト交換するタイミングが中々ない状況です」と話す。言葉通り、前日に優勝争いの末2位で終えた永野竜太郎も会場に駆けつけ、『VF』についてこう話していた。
「自分の場合はコースによって2Iと7Wを入れ替えるんですけど、7Wには『VF』が入っていて、7Wではスピンが増えすぎる傾向が『VF』だとちょうど抑えてくれてコントロールしやすいです。まだ7Wだけで今後ちょっとタイミングを見て1Wももちろんテストしていくつもりです。打った感じは『UB』とかより、分厚い感じというか、芯がある感じがしますね」(永野竜太郎)
1W試打のデモンストレーターを務めた永野のエースは『IZ』だが、徐々にHSを上げて行く中、特筆はスピン量の少なさだ。約1500~1750回転ほどのハイストレートドローで常時300 ydを遥かに超え、温まってきて強振すると画像のようにトラックマン計測でHS 54.3m/s、BS 80.5m/s、CARRY 324.4yd、TOTAL 339.3ydをマーク。優勝争いの疲れを全く感じさせない長距離を『VF』の7Xで放っていた。
次のデモ試打は、二代目の『秩父 弐』で、横田英治がターゲットゴルファーの想定スピードのHS40m/s前後で打っていく。今作は同社初採用の素材「ベクトラン」が最大の特徴。これは「防弾チョッキなどに使用されるクラレ製のケブラー素材の親戚のようなもので、衝撃を吸収する繊維」と、開発の西澤氏が説明する。1W用は手元側の補強に使用しており、手元と先の剛性差で走る上、カウンターバランス的な副次効果もあるとか。
「秩父セカンドを打ってみて、ちょっと安心したのはヘッドスピード40m/s前後の人がすごい飛ばせるシャフトだなとは思ったんですけど、やっぱり技術は必要。ある程度自分が頑張って、それに対してちゃんとシャフトが応えてくれるっていう感じがした。ボクはスクール事業もやっているので『誰がどんなふうに扱ってもOK』みたいなのは困るので、良かったなと思いました。皆さんもぜひ体感してみてください」(横田)
同社の『TOUR AD UB-6X』がエースの記者(HS50m/s弱のローフェーダー)も、『TOUR AD VF-6S』を『ステルス2』の10.5°で打ってみた。説明を聞く時点で相当期待したのは、剛性分布がエースの『UB』と似ていたこと。グリップ部は『VF』の方が硬いが、手元からセンターの広範囲が『VF』の方が緩く、中先が高いだけ。
同社が「M40Xを初めて手元側の補強に使った」点が唯一心配だったが、ここが硬く感じ過ぎないか?は問題がなかった。そして、永野竜太郎が「UBとフィールは違う」と話す言葉の意味が打ってすぐに分かった。
記者が感じた『UB』との一番の違いは、切り返しでグリップ下から真ん中にかけてのしなりが大きいこと。グリップ内はしっかりで、グリップ下の辺りから屈曲ポイントをハッキリ感じる元系のフィールで、最近オーバースイングの矯正でトップをコンパクトにして負荷をかけないスイングに修正中の記者でも、ハッキリ元系の粘りを感じる。同社で元寄りの『DI』・『BB』・『UB』と異なり、切り返しで一旦グッとタメが入る感じ。
昔の手元グニャ系の元系と違うのは、それでも遅れないこと。復元が速すぎない中で、シャフト全体にある程度の走り感もあり、軽やかに振り抜けた。このセンター部から先の復元速度と扱いやすさが絶妙で、インパクトで強く叩く・押したい人も、軽やかに通過させたい人にも両立するフィールとでも言おうか。中元のしなりが『UB』より多いと「インパクトが遅れるはず」と思ったが、意外に間に合うどころか、ドローもフェードも自在に操作でき「元系なのに難しくないし、万人にタイミングが取りやすい」印象だ。
同社の製品マッピング通り『UB』よりややつかまえやすいが、先端はT1100Gの補強で当たり負けに強いため、弾道は同社の現ラインナップでは最も強弾道に位置する。実際、トラックマン表示で2000rpmを下回る打球も多く、最も多くて2400rpm程度。フェードもドローも強烈にランを稼ぎ、HSの割には効率よく距離を稼げるのが印象的で、球が高めでスピン過多の人は要チェックと言えそう。高橋氏に率直に印象を伝えると、こう言う。
「(記者が)手元と真ん中にちょっとギャップを感じるタイプかもしれませんね。そういう関係で手元の硬さよりかは、真ん中の柔らかさでそこのたわみを『VF』を『柔らかく感じる』とか『少ししなりを感じる』っていう人はいます。『UB』の方が実際は(剛性分布が)なだらかというか、ギャップがないから逆に張りを感じたり、そのモデルがよく感じる人がいるので、それは打つ方の切り返しの時間とかにもよると思うんですよね」(高橋氏)
なお、画像のように『ステルス2』と色味がバッチリ合う赤色は『フォースレッド』と呼ぶ特色だとか。同社のコーポレートカラーも赤✕黒で、初代の『Tour AD I-65』もこのカラーリングだったことを覚えている人も多いはず。赤✕黒のデザインは力強いイメージだが、『VF』は意外にやさしい元調子と感じた。
次に、記者にはアンダースペックだが『秩父セカンド』のSを同じ『ステルス2』で打ってみた。FWやUTは【ベクトラン】を全長に採用して地ベタから拾いやすく、アイアンは先端に採用するなど、目的に応じた使用の仕方だが、ドライバーは手元側の採用。たしかに、手元はややしっかりだが、先調子の割には走り方がマイルドで初球から「意外に扱いやすい」と感じた。
元系好みの記者は、先走りがそもそも苦手。が、衝撃吸収する【ベクトラン】の効果か、変な手元の硬さや表面のパリ感もなく、切り返しもマイルド。特筆は、走るのにインパクト付近が、極めて一定な動きなこと。記者の場合、アンダースペックの先調子でよく出る「ド左」が一切なく、安定した高弾道フェードでキャリーを伸ばせた。トラックマン表示もスピン量が『VF』より約5、600rpmほど上がった2700rpm前後で安定していた。
「二代目の『秩父』の方が、どちらかというと暴れが少なくなったかなと思いますよ。軽量シャフトは、いわゆる他社で言うとパキパキが多いっていう認識もありますし、やっぱり難しくしたくなかった。『まだまだ飛ばしたい』年齢層が高めの方が使うので、Sの割には程よくしなって、でも、程よい所がしっかりしてるって言われれば、逆に暴れないし扱いやすい。それがミート率にもつながるし、振り抜きも良くなると思います」(高橋氏)
発売は『TOUR AD VF』が10月6日で税込み46,200円、9月8日発売の『秩父 弐』のウッド用は69,300円となる。