飛び系アイアンへの買い替えは縦の距離感と相談を!【QPのギアマニュアル】
クラブフィッターとしてアマチュアゴルファーと向き合っている、QPことプロゴルファー関雅史が最新のギアマニュアルを紹介する。今回は飛び系アイアンのお話。
配信日時:2023年11月15日 03時57分
ゴルフクラブでは、プロや上級者が使うプロ仕様のモデルとアベレージ向けのアマ仕様のモデルとで区別して紹介されることがありますよね。そもそもこの2つは設計思想が異なるのです。ドライバーの場合は、プロもアマも求めるのは飛距離です。飛距離を出すためにはインパクトでボールを押して、ボールをつかまえることでボールスピードが出せます。アマ仕様のクラブは、フックフェースや重心角を大きくしたり、つかまる性能を高めて、飛距離アップを狙う設計になっています。一方、プロや上級者は、自分のスイングでつかまえることができるので、クラブにつかまる機能は求めていません。逆に、重心角が大きいヘッドを使うと、ちょっとコントロールしたいときに左へのミスが出てしまうのです。
ここ数年、アイアンはプロ仕様とアマ仕様の差が確実に開いています。プロ仕様のアイアンは、見た目もシンプルですし、ロフトもクラシカルです。ピッチングウェッジのロフト角は46度前後で、6番アイアンのロフト角は30度前後。アマ仕様の飛び系タイプのアイアンは、ピッチングウェッジのロフト角は40度前後で、6番アイアンは25度前後。ロフトだけでもこんなに違います。
プロがアイアンに求めるのは、コントロール性です。縦の距離を合わせたり、ボールを曲げたり、スピンコントロールしやすいマッスルバックやハーフキャビティを使用するのがほとんど。一方、アマチュアの方は、アイアンも飛距離性能を求める方が多いです。そのためアマ仕様のアイアンは、スピン量が少なくなるように設計されています。ポケットキャビティや複合素材のアイアンがそうですね。プロ、アマ、それぞれ求めるニーズによって、設計が異なっているのです。
設計思想が違うということは、クラブを替えるときに注意が必要です。例えば、今までプロ仕様のアイアンを使っていた方が、加齢とともにパワーが落ちてきたからと、アマ仕様の飛び系アイアンに替えたとします。実際、飛距離は伸びますが、その飛距離は自分の想定を超えることがよくあります。これまでプロ仕様で縦の距離を合わせてきた方は、今までと距離感のイメージが変わってしまいます。自分ではミスしていないのに、なぜかグリーン奥へのミスが増えて、結果としてスコアがまとまらないということもよくあります。また、引っかけに悩んでいる人がやさしさを求めてアマ仕様クラブに替えた場合、余計に左にしか行かないこともあります。
こういう話をしていると、プロ仕様のモデルを使っていた方が、アマ仕様のクラブへ替えることに抵抗があるように感じますが、ツアープロがアマ仕様のクラブを使用することもあります。有名なところでいえば、日本一売れたクラブの〈ゼクシオ〉がそうですね。一時期、男子プロでも手にしている人がいました。また、最近人気のピンのGシリーズは、思想的にはアマ仕様で始まりました。
プロがアマ仕様を使えるキーワードは、〝つかまり過ぎない〟、ことです。当時のゼクシオは重心距離が短く操作性が高かったですし、ピンは慣性モーメントを大きくすることで、つかまり過ぎを抑えています。
プロといえども、簡単に上がる、ミスヒットしても前に飛ぶという性能を求める選手も出てきています。これもニーズを求めての選択です。性能が大きく異なるモデルに替えると、メリットとデメリットがはっきりと出ます。ご自身のニーズを考えて、デメリットが少なくなるような、選択をしたいところです。
関雅史(せき・まさし)/1974年生まれ、東京都出身。PGA公認A級ティーチングプロの資格を持ち、クラブフィッティングも行う。東京・駒込のゴルフスタジオ「ゴルフフィールズ」で活動。
QPのギアマニュアル