タイトリスト『プロV1』『プロV1x』の新作がいよいよ発売されます。プロトタイプの段階から世界中のツアープロが多数の勝利を重ねてきたこのボール、なぜNo.1なのか? ALBA本誌取材班がこの謎を探る旅に出ました。
【第3章】タイトリストボールが受け続ける、最後の審判。
薄肉化されたニューモデルでも従来と変わらぬ抜群のスピンとフィール、そして耐久性を発揮する独自のウレタンカバー。
アクシネットカンパニーの本社から車で20分ほど南下。タイトリストのボール工場『BALL PLANT III』に少しだけ立ち寄ることができた。ここはウレタンカバーボールの専用工場である。すなわち、歴代のプロV1・プロV1xはここで生み出されてきた。機密事項満載の聖域である。
――タイトリストの製品哲学は、最終検品工程に表れる――
タイトリスト ボールプラントIII。原材料や工作機械を見ても、我々素人にはその特殊性、特許性など知るよしもないが、重要な工程の最後には必ず、真剣な眼差しで綿密な検品作業が行われている、それだけはわかる。
例えば、ボールのエンジンともいわれるインナーコア。複数のゴム素材を配合し均一に練り合わせながらその元素材が作られていく。スタッフがその一部を切り取って検品ルームに運んでいくが、まずは設計された通りの性質、成分になっているのかをチェックするのだという。驚いたのはこのあと。規定をクリアした合格品をさらに3区分に細分化し、再び練り直すのだ。
製造誤差を限りなくゼロに近づけるために、素材レベルから最大限の均一化を図る
「例えば、合格品の中でも少しだけ軟らかかったり、硬かったり、その中間的なものも存在します。ここではそれぞれをどう混ぜればさらに均一になるのかを計算し、次の工程に指示を出すのです。そうすることで合格品の中でのバラツキもさらに減らすことができ、同じ性能を備えたゴルフボールを作ることができるのです」(検品スタッフ)
これはインナーコアだけの話ではなく、各行程で詳細な検品と、均一性を高めるための独自の工夫(その多くが秘匿事項)がされているのだという。製造ラインでは、ニュー『プロV1・プロV1x』が最終検品行程に入っていた。製造中の検品チェック項目は90〜120に上るが、注目すべきなのは製造工程の最後である。
ディスプレーに映る、黒くて丸い影。機械には“CAUTION X - RAYS”と書いてある。そう、ここでは検品の最後にレントゲンでボールの中身をチェックしているのだ。
タイトリストゴルフボールの創設者、フィル・ヤングが初めてゴルフボールの中の真実を見た1930年代のあの日からずっと、すべての
タイトリストボールは一つずつ、レントゲンをとおして最後の審判を受けてきた。「プロが使うボールも、皆さんが使うボールも同じクオリティ」。メリー・ルー・ボーンが自信満々に語った理由が、製造行程の最後を見ればよくわかる。こうして最高の1球が、最高の1億球となるのだ。(文中敬称略)
文・高梨祥明