ゴルファーの理想は、ドライバーからパターまで技術に一貫性があること、同じイメージで打てることだ。かつては杉原輝雄や青木功、最近ではタイガー・ウッズがそうした選手の代表だろう。パッティングの上手さがアプローチのイメージにつながり、アプローチはショットの技術へとつながっている。

本来、難しいとされるL字型パターが、「ショットと同じ感覚で打てる」と上級者に重宝されるのはまさにそのためだ。フェースの開閉がしっかりと感じられるL字型だからこそ、フェースターンの大きなアイアンショットのイメージとシンクロさせることが出来る。

しかし、アダム・スコットやジャスティン・ローズのように、圧倒的なショットメーカーでありながら、ショートパットに宿痾を持つ選手は、むしろショットとパッティングを切り離したいと考えるのも無理はない。だからこそ長尺パターを採用し、今また『Directed Force 2.1』パターを手にとっているわけだ。ちなみにローズが今年愛用しているパター『アクシスワン』も、フェースの開閉を抑えた特性をもっている。

近年のPGAツアーで、右手をビリヤードのように持つクロウグリップにする選手が急増しているのは、ショットとパッティングを切り離したい選手が多いことを示している。固くて速く、傾斜がきついグリーンで、ハイプレッシャーのなかでプレーしなければならない彼等は、機械のようにパッティング出来るクロウグリップにして、パッティングのストレスを軽減しているのだ。

アダム・スコットはマスターズでも『Directed Force 2.1』を使い、かつての長尺パター使用時のようなパッティングを見せるだろう。今後、『Directed Force 2.1』や『アクシスワン』のような機械的なパッティングに適したパターを使うツアープロは、日本にも登場するはずだ。パッティングに悩みを抱えるプロは決して少なくないからだ。