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    「楽だし、簡単」の真意は? 池田勇太がL字型パターを使う理由

    text by Kazuhiro Koyama

    配信日時:2019年7月12日 04時00分

    • ギア

    時代を彩ったL字型パターの名器

    尾崎将司の代名詞として知られる『Tommy Armour IMG5』

    尾崎将司の代名詞として知られる『Tommy Armour IMG5』

    L字と言えば、オールドファンに馴染みの深いのが、尾崎将司の愛器である『Tommy Armour IMG5』である。『IMG』の“G”とはグースネックの意味で、尾崎の好みを思わせる強めのグースネックが特徴だ。尾崎の全盛期には、ヴィンテージパターとして、高額で取引されていた時代もある。数十万円払って手に入れた人も少なくないらしい。

    池田勇太の使用した『ジャンボ尾崎90勝記念パター』は、この『IMG5』を模して作られたもの。他にも数多くの復刻版があるL字型の名器だ。90勝パターが出るということは、90もの勝利のうちの多くが、こうしたシャープなL字型で勝ち取ってきたということだ。その中には、ウィニングパットを2度仕切り直したことで有名な、88年の日本オープンもある。大型マレットがなかった時代、プロたちはこうしたパターで技術を競っていた。
    多くの復刻版を生んだL字型の名器、ウイルソン『8813』

    多くの復刻版を生んだL字型の名器、ウイルソン『8813』

    L字型のもう一方の雄がウイルソンだ。なかでも名器の誉れ高いのが『8802』、『8813』という2モデルで、『8802』は、パターの名手、ベン・クレンショーが愛用したことでとみに有名だ。ウイルソンには、『デザインドバイ アーノルドパーマー』のようなヴィンテージパターとして価値の高いものもあれば、おびただしい数の復刻版もある。

    また、前述のオデッセイ『#8』やクリーブランド『デザインドバイ』、1995年に発売された『スコッティキャメロン NAPA』のような、ウイルソンタイプのL字パターは少なくない。いわばスタンダードなL字型と言える形状だ。

    コーリー・ペイビンが1995年に全米オープンを制したのがこの形状のパターだった。翌年、尾崎将司は、L字型のフィーリングを持つマレット型『WOSS』を使用し、年間8勝をあげた。L字の名手であるジャンボが使用をやめたこのあたりから、L字の使用プロは減り始め、2000年になる頃には少数派になっていた。

    アマチュアの使用者が減るのは無理もない。ツアープロの使用者が減り、メーカーから発売されることも少なくなった。さらに、L字は難しいというのが定説になっていったのだ。今、ゴルフ場にこうしたクラシックなL字を持っていったら、同伴プレーヤーに「そんな難しそうなパター使ってるの?」と驚かれるのではないだろうか。
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