【バケモノたちの使用ギア】全米OP&世界ランク2位!松山英樹は何が進化したのか?
世界最高峰のPGAツアーは松山を上回るバケモノ揃い。今回はスピンオフのPGAツアーデータ・ドリブンシリーズとして、さまざまな公式データからギアとバケモノの相関関係をひも解いて行きたいと思う。今回は、話題独占のこの男!
配信日時:2017年6月21日 09時47分
肉体改造の成果でヘッドスピードが上がり、キャリーもトータルも7〜8ヤード増!
松山のデータで顕著なのは、昨季から今季にかけてドライビングディスタンスが大幅に伸びていること。PGAツアー参戦時からさして変化のなかった飛距離が劇的に進化している。まだ試合数の消化が少ないとはいえ、ヘッドスピードが5マイル以上も(50.44m/s⇒52.96m/s)アップしている。
このヘッドスピードアップからすれば、もう少しボール初速が伸びてもいいはず(現在は76.85m/s)だが、それでもキャリーもトータルも約8ヤード増。また、スピン量も150回転減っており、明らかにデータが良くなっている。
ご存知のとおり、松山は昨年10月末の「CIMBクラシック」でエースドライバーを変更している。ずっと愛用していたダンロップ『SRIXON ZR-30』をキャロウェイ『GREAT BIG BERTHA』に替え、昨季の4月から『SRIXON Z-STAR XV』にボールを変更済みだ。
ボールは早くから替えていたため、低スピン化や初速アップは『GREAT BIG BERTHA』に替えた影響だと見る向きも多いだろう。だが、シャフトも『ツアーAD DI-8 TX』で変更がないにもかかわらず、ヘッドスピードが2.5m/sもアップしていることから、松山のトレーニングの賜物と見る片山の見立てが正しいとも言える。よくヘッドスピードが1m/s上がると4〜5ヤード飛距離が伸びると言われるが、松山の8ヤードの飛距離アップはそれと近似値を示している。
このヘッドスピードアップからすれば、もう少しボール初速が伸びてもいいはず(現在は76.85m/s)だが、それでもキャリーもトータルも約8ヤード増。また、スピン量も150回転減っており、明らかにデータが良くなっている。
ご存知のとおり、松山は昨年10月末の「CIMBクラシック」でエースドライバーを変更している。ずっと愛用していたダンロップ『SRIXON ZR-30』をキャロウェイ『GREAT BIG BERTHA』に替え、昨季の4月から『SRIXON Z-STAR XV』にボールを変更済みだ。
ボールは早くから替えていたため、低スピン化や初速アップは『GREAT BIG BERTHA』に替えた影響だと見る向きも多いだろう。だが、シャフトも『ツアーAD DI-8 TX』で変更がないにもかかわらず、ヘッドスピードが2.5m/sもアップしていることから、松山のトレーニングの賜物と見る片山の見立てが正しいとも言える。よくヘッドスピードが1m/s上がると4〜5ヤード飛距離が伸びると言われるが、松山の8ヤードの飛距離アップはそれと近似値を示している。
松山本人は、「ヘッドが壊れたから替えた」と言っている
キャロウェイ『GREAT BIG BERTHA』に替えた理由を、松山本人は「ヘッドが壊れたから」と答えており、あくまでも暫定的なものらしい。その言葉に嘘はなく、昨季ダンロップの新モデルは、今年3月の「WGC-デル・マッチプレー選手権」で『SRIXON Z765プロトタイプ』、6月末の「WGC-ブリヂストン招待」で『SRIXON Z565』を試しており、ダンロップから最適なものが仕上がればすぐに変更する意向を示している。
筆者はこれまでに、松山の周辺からさまざまな彼のギアへの好みを耳にしている。それをまとめると、下記のようなものになる。
・最もこだわるのは顔。気に入らないと試打しない
・柿を真っ二つに割ったようなフェース向きがハッキリした顔を好む
・ヘッドサイズは小ぶりではなく、大きめのものが好き
・単純な飛距離よりミスがミスとはっきり分かるものを選ぶ
ダンロップは当然もっと深い部分を把握しており、現在販売されている『Z765 Limited Model』は、まさにそんな松山の好みを完全に具現化したもののように思える。では、なぜ松山は使わないのか? 筆者は低スピン過ぎる性能にあるのではないかと疑っている。
松山英樹や石川遼は、PGAツアーの厳しいコースセッティングにより、「285〜290ヤードのキャリーを打てば、ハザードをキャリーで越せてティショットのマネジメントがラクになる」との考え方が基本だという。この考えは、もちろん、松山や石川だけではなく、PGAツアーで戦う選手全員が共有しているに違いない。そのため、近年PGAツアーのキャリーが大幅に伸びていると見ていいのではないか。
今季の松山は平均288ヤードのキャリーで、このラクな状態を手に入れている。しかも、昨季よりも150回転スピン量が落ちた状態で。『Z765 Limited Model』を使うことで今よりもスピン量が減ると、おそらくキャリーが減ってしまうことになるのだろう。松山は、使いたくても使えないというのが本当のところではないだろうか。
また、片山晋呉が手放しで褒めた肉体改造も大きい。筆者は「ハードなトレーニングで完成した肉体面の出力アップがドライバー選びに影響している」と関係者から聞いている。平均2.5m/sのヘッドスピードアップがデータに現れているが、身体の出力アップでこれまでの『SRIXON ZR-30』では右への吹き球が出るようになったのだとか。そして『Z765 Limited Model』ではスピン量が減りすぎる。このちょうど間のいいところが、暫定的に『GREAT BIG BERTHA』ということのようだ。
また、ジュニア時代から松山を知る関係者から、こんな逸話も耳にした。松山がジュニアの頃にフェースのど真ん中で打ったドライバーのヘッドの後方部分が凹んだのだとか。なぜ直接当たるフェースが凹むのではなく、ヘッド後方が凹むのか? 想像するに、あまりにも強い圧力でヘッドをたわませたため、それが復元する際にヘッドの薄い部分の後方が引っ張られて凹んだのだろう。
筆者が知る限り「フェースを割った」「凹んだ」というドラコン選手の逸話は聞いたことがあるが、「フェースのど真ん中で捉えてヘッド後方が凹んだ」なんて話は聞いたことがない。今でこそプロレスラーのような体格の松山だが、か細いジュニア時代から常人では考えられないインパクトの圧力を手にしていたのか。
ちなみに、全米オープンの最終日、飛ばし屋のJ・B・ホームズとさしてドライバーの飛距離が変わらないことに驚いた人も多いだろう。間近で見ていた青木功は「つかまってるからいいんだよな」と繰り返し、解説の丸山茂樹は「振れている。1回しかフィニッシュで手を話さなかった」と言っていたが、皆さんには松山が振りちぎっていたように見えただろうか。
筆者は逆で、抑えてバランスよく振っているようにしか見えなかった。(過去に振ったなぁと思ったホールでボール初速80m/sを越えていたのを目撃したため)余力を持ったスイングでPGAツアーの平均以上の飛距離を手に入れており、曲がらない。片山晋呉が言うとおり、ディスタンスゲーム化するPGAツアーでトップに上り詰めるのも納得だ。名実ともに怪物、いや、“バケモノ”と呼びたくなる。
Text/Mikiro Nagaoka
筆者はこれまでに、松山の周辺からさまざまな彼のギアへの好みを耳にしている。それをまとめると、下記のようなものになる。
・最もこだわるのは顔。気に入らないと試打しない
・柿を真っ二つに割ったようなフェース向きがハッキリした顔を好む
・ヘッドサイズは小ぶりではなく、大きめのものが好き
・単純な飛距離よりミスがミスとはっきり分かるものを選ぶ
ダンロップは当然もっと深い部分を把握しており、現在販売されている『Z765 Limited Model』は、まさにそんな松山の好みを完全に具現化したもののように思える。では、なぜ松山は使わないのか? 筆者は低スピン過ぎる性能にあるのではないかと疑っている。
松山英樹や石川遼は、PGAツアーの厳しいコースセッティングにより、「285〜290ヤードのキャリーを打てば、ハザードをキャリーで越せてティショットのマネジメントがラクになる」との考え方が基本だという。この考えは、もちろん、松山や石川だけではなく、PGAツアーで戦う選手全員が共有しているに違いない。そのため、近年PGAツアーのキャリーが大幅に伸びていると見ていいのではないか。
今季の松山は平均288ヤードのキャリーで、このラクな状態を手に入れている。しかも、昨季よりも150回転スピン量が落ちた状態で。『Z765 Limited Model』を使うことで今よりもスピン量が減ると、おそらくキャリーが減ってしまうことになるのだろう。松山は、使いたくても使えないというのが本当のところではないだろうか。
また、片山晋呉が手放しで褒めた肉体改造も大きい。筆者は「ハードなトレーニングで完成した肉体面の出力アップがドライバー選びに影響している」と関係者から聞いている。平均2.5m/sのヘッドスピードアップがデータに現れているが、身体の出力アップでこれまでの『SRIXON ZR-30』では右への吹き球が出るようになったのだとか。そして『Z765 Limited Model』ではスピン量が減りすぎる。このちょうど間のいいところが、暫定的に『GREAT BIG BERTHA』ということのようだ。
また、ジュニア時代から松山を知る関係者から、こんな逸話も耳にした。松山がジュニアの頃にフェースのど真ん中で打ったドライバーのヘッドの後方部分が凹んだのだとか。なぜ直接当たるフェースが凹むのではなく、ヘッド後方が凹むのか? 想像するに、あまりにも強い圧力でヘッドをたわませたため、それが復元する際にヘッドの薄い部分の後方が引っ張られて凹んだのだろう。
筆者が知る限り「フェースを割った」「凹んだ」というドラコン選手の逸話は聞いたことがあるが、「フェースのど真ん中で捉えてヘッド後方が凹んだ」なんて話は聞いたことがない。今でこそプロレスラーのような体格の松山だが、か細いジュニア時代から常人では考えられないインパクトの圧力を手にしていたのか。
ちなみに、全米オープンの最終日、飛ばし屋のJ・B・ホームズとさしてドライバーの飛距離が変わらないことに驚いた人も多いだろう。間近で見ていた青木功は「つかまってるからいいんだよな」と繰り返し、解説の丸山茂樹は「振れている。1回しかフィニッシュで手を話さなかった」と言っていたが、皆さんには松山が振りちぎっていたように見えただろうか。
筆者は逆で、抑えてバランスよく振っているようにしか見えなかった。(過去に振ったなぁと思ったホールでボール初速80m/sを越えていたのを目撃したため)余力を持ったスイングでPGAツアーの平均以上の飛距離を手に入れており、曲がらない。片山晋呉が言うとおり、ディスタンスゲーム化するPGAツアーでトップに上り詰めるのも納得だ。名実ともに怪物、いや、“バケモノ”と呼びたくなる。
Text/Mikiro Nagaoka