プロギア『RS-F』販売停止に見るルールの功罪【前編】
text by kazuhiro koyama
配信日時:2016年12月29日 03時00分
高反発は、フェースセンターの一部分に
『RS-F』は、“ギリギリ”の反発係数を売りにしたモデルだ。そのためプロギアでは、万が一にもルール違反品が出ないよう万全を期して、ヘッド一個一個の個別検査を行い、パスしたものだけを出荷するように徹底していたという。それがなぜ制限値を上回るヘッドがでてきてしまったのか。
R&Aでは調査の詳細を明らかにしていないが、「市場で『RS-F』をサンプリングしたもののなかで、フェースインパクトエリア内のオフセンターの一部分で、反発規制ルールの上限を超える商品が規定比率以上に混在したことが確認された」のが、適合外と裁定する理由だという。この「オフセンター」という言葉にヒントがあるかもしれない。
ここでのインパクトエリアとは、フェースセンター部分の1.68インチ(約4.26センチ)内のこと。ヘッドの全数検査とはいえ、約4センチ以上のエリアの点をすべて計測しつくすのは難しいだろう。そう考えると、スイートスポットではない少し外れた場所に、基準値を上回る反発が出る場所が、一定数存在したのかもしれない。このあたりが、検査の漏れが出た理由なのではないだろうか。
地クラブでは、ヘッドの全数検査を行い、反発係数の高いものを出荷することを売りにしているメーカーもあるが、『RS-F』の件を考えると、同様に違反品が出る可能性もゼロではないだろう。そう考えると、各メーカーは今まで以上に検査にシビアにならざるをえず、コスト面の負担は大きくなる。製造誤差を考えるとフェース反発をこれまでより低く作ることも視野に入れることになるだろう。それは、最終的にはゴルファーの不利益につながることだ。
R&Aでは調査の詳細を明らかにしていないが、「市場で『RS-F』をサンプリングしたもののなかで、フェースインパクトエリア内のオフセンターの一部分で、反発規制ルールの上限を超える商品が規定比率以上に混在したことが確認された」のが、適合外と裁定する理由だという。この「オフセンター」という言葉にヒントがあるかもしれない。
ここでのインパクトエリアとは、フェースセンター部分の1.68インチ(約4.26センチ)内のこと。ヘッドの全数検査とはいえ、約4センチ以上のエリアの点をすべて計測しつくすのは難しいだろう。そう考えると、スイートスポットではない少し外れた場所に、基準値を上回る反発が出る場所が、一定数存在したのかもしれない。このあたりが、検査の漏れが出た理由なのではないだろうか。
地クラブでは、ヘッドの全数検査を行い、反発係数の高いものを出荷することを売りにしているメーカーもあるが、『RS-F』の件を考えると、同様に違反品が出る可能性もゼロではないだろう。そう考えると、各メーカーは今まで以上に検査にシビアにならざるをえず、コスト面の負担は大きくなる。製造誤差を考えるとフェース反発をこれまでより低く作ることも視野に入れることになるだろう。それは、最終的にはゴルファーの不利益につながることだ。
“ギリギリ”を狙った功罪とユーザーの落胆
メーカーであるプロギアにも、結果として非難されるべき点がないわけではない。是非もないことだが、“ギリギリ”の反発係数を狙ったこともそのひとつだ。反発係数は、CT(特性時間)値という単位で表されるが、制限値は 239 μs(マイクロセカンド)と定められている。現在、許容誤差として 18 μsが認められているので、CT値が240〜257μsであった場合は、制限値を越えてはいるものの、許容範囲内とされている。これは、大量生産における製造誤差に配慮したかたちだ。
しかし、“ギリギリ”を狙うのであれば、制限値の239 μsでは、話にならない。許容範囲ギリギリの257μsに近い数字を目指して作られただろう。もし、制限値と許容範囲を取り違えて認識していたとしたら、基準値オーバーの個体が出た遠因といえるだろう。
さらに、プロギアでは昨年、ルール不適合の高反発ドライバー『SUPER eggドライバー』 を発売している。高反発であるため、反発係数の基準値は当然オーバーし、市場でもかなり好評だった。確信犯的にルールを破ったクラブが市場で評価を得たあとに、“ギリギリ”の反発を狙いにいった姿勢が、R&Aの注意を引く要因となった可能性も否定できない。それで検査の結果が変わるわけではないが、裁定が厳しくなることには、繋がったかもしれない。例えば、リスト除外までの期間を1年ないし、2年設けるという“配慮”があった裁定であれば、メーカーの負担はずっと小さいものになったはずだ。
とはいえ、R&Aの指摘を受けて、交換品などの対応策を出したメーカーの姿勢は非常に誠実なものだった。現時点では、ヘッド交換申込はそれほど多くないという話もあるが、それは無理もない話だ。手元にあるクラブのほうが、飛距離が出る可能性があるなら、競技ゴルファーでないユーザーにとっては、ヘッド交換は“わざわざ飛ばないクラブ”に変えることになる。
交換品ヘッドは、新しいモデルを1から作るのは難しいので、より厳密に検査をすることで適合品として対応するということだ。その点を考えると、飛距離差はほとんどないと思われるが、使う人の心理は微妙なものだ。結局、このクラブに魅力を感じて購入したゴルファーが、落胆する結果になったのが残念だ。
次回は、R&Aのルールについて、さらに言及したい。
しかし、“ギリギリ”を狙うのであれば、制限値の239 μsでは、話にならない。許容範囲ギリギリの257μsに近い数字を目指して作られただろう。もし、制限値と許容範囲を取り違えて認識していたとしたら、基準値オーバーの個体が出た遠因といえるだろう。
さらに、プロギアでは昨年、ルール不適合の高反発ドライバー『SUPER eggドライバー』 を発売している。高反発であるため、反発係数の基準値は当然オーバーし、市場でもかなり好評だった。確信犯的にルールを破ったクラブが市場で評価を得たあとに、“ギリギリ”の反発を狙いにいった姿勢が、R&Aの注意を引く要因となった可能性も否定できない。それで検査の結果が変わるわけではないが、裁定が厳しくなることには、繋がったかもしれない。例えば、リスト除外までの期間を1年ないし、2年設けるという“配慮”があった裁定であれば、メーカーの負担はずっと小さいものになったはずだ。
とはいえ、R&Aの指摘を受けて、交換品などの対応策を出したメーカーの姿勢は非常に誠実なものだった。現時点では、ヘッド交換申込はそれほど多くないという話もあるが、それは無理もない話だ。手元にあるクラブのほうが、飛距離が出る可能性があるなら、競技ゴルファーでないユーザーにとっては、ヘッド交換は“わざわざ飛ばないクラブ”に変えることになる。
交換品ヘッドは、新しいモデルを1から作るのは難しいので、より厳密に検査をすることで適合品として対応するということだ。その点を考えると、飛距離差はほとんどないと思われるが、使う人の心理は微妙なものだ。結局、このクラブに魅力を感じて購入したゴルファーが、落胆する結果になったのが残念だ。
次回は、R&Aのルールについて、さらに言及したい。