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    Mr.スパイダー、ビル・プライスに聞く【2】「PGAのマレット増は【無開閉アーク】が増えたから」

    Mr.スパイダーこと、テーラーメイドのパター開発者、ビル・プライス氏の直撃インタビュー第二弾。いま、世界の新潮流である【無開閉アーク型】ストロークが、マレット増の理由だそう!

    配信日時:2022年5月25日 02時00分

    • ギア
    目次 / index
    • PGAツアーの65%がマレット型ユーザー!?(GettyImages)
    • ビルさんがサポートした、過去のテーラーメイド契約トップ選手で、左利き目はジェイソン・デイ(左)だけだったそう(GettyImages)
    • 「日米共通で、みんなトップ選手は正しいポスチャー」(GettyImages)
    • 「選手の約70%は、試合中にトゥ側に打点を外す傾向がある」(GettyImages)
    • 左エイムの名手代表であるデイブ・ストックトン(左)、タイガーはじめ、利き目が右の人に右エイムが多いとか(GettyImages)
    • これまで、アーク型のストロークでは、フェース開閉するのが当然でしたが…
    この記事の写真 10 枚を見る

    TMトップはみな右利き目。「セオリーは危険!」

    PGAツアーの65%がマレット型ユーザー!?(GettyImages)

    PGAツアーの65%がマレット型ユーザー!?(GettyImages)

    ▶▶▶前回の【1】はこちら

    ―― 最近のPGAツアーの潮流について深掘りしたいなと。そもそも、【PGAツアーの65%がマレット型】なこと自体かなり衝撃ですが、ことテーラーメイドのトップ選手たちにパッティングの共通点は何かありますか?

    ビル・プライス そうですね。例えば、利き目の違いはアライメントなど色んな影響があると思っています。今は弊社契約ではないですが、契約していた当時、ジェイソン・デイだけが左利き目でした。それに対して、他のトップ7選手(DJ・マキロイ・タイガー・コリン・マシュー・ガルシア他)は全員利き目が右です。
    ビルさんがサポートした、過去のテーラーメイド契約トップ選手で、左利き目はジェイソン・デイ(左)だけだったそう(GettyImages)

    ビルさんがサポートした、過去のテーラーメイド契約トップ選手で、左利き目はジェイソン・デイ(左)だけだったそう(GettyImages)

    だから、デイが右利き目のボール位置に置くと、全然違う方向に打ち出してしまいます。ここで分かるのは、どちらの利き目が正しいか?のデータはないが、利き目で最適なボール位置があること。パッティングのセオリーでよく言われる「左目の下にボールを置け」とのアドバイス自体、非常に危険なことだと思いますね。

    ―― うわぁ〜〜、確かに……。(ボクは左利き目で良かった)でも、TM(テーラーメイド)のトップ選手みなが右利き目とは超意外ですね。もしかすると、そこがTM選手にマレットが多い理由かもしれないなぁ……。

    ビル・プライス 言い切れませんが、右利き目だと、左の人より横(右側)からボールを見る形になるのは間違いないです。

    日米トップ選手に共通は【正しい姿勢】

    「日米共通で、みんなトップ選手は正しいポスチャー」(GettyImages)

    「日米共通で、みんなトップ選手は正しいポスチャー」(GettyImages)

    ―― 利き目の他に【パターの名手に共通点】はありますか? 例えば、欧米と日本の違いとか、共通点とか……。

    ビル・プライス 先ほど日本のコーチ陣とも話していたのですが、日米の共通点があるとするなら【パターの名手はみな正しい姿勢を取る】ですね。これが狂うと軌道もズレるので、名手に世界共通だと思います。姿勢が悪いと、どんな軌道からでも打ててしまって再現性に問題が生じます。

    ―― なるほど。ボールとの距離とか、その辺りも狂う?

    ビル・プライス そうですね。あと、パターの名手はみな【ヒジ・手首・パターまで一直線の延長線上で構えます】。これは、DJ・マキロイ・デイとみな身長も手の長さも違う中で共通。唯一当てはまらないのは、極端に長いパターを使う場合だけです。

    ―― その腕とパター一直線はセオリー通りですね! 変にハンドダウンで構える選手は、現代はほぼ居ないです。他に何か意外な事実はありますか?

    選手の【7割がトゥ側に外す】から、球位置は真上!

    「選手の約70%は、試合中にトゥ側に打点を外す傾向がある」(GettyImages)

    「選手の約70%は、試合中にトゥ側に打点を外す傾向がある」(GettyImages)

    ビル・プライス 意外なのは、試合だと【選手の70%以上がトゥ側に打点を外す傾向】があること。これはアマチュアなら【離れて立ち過ぎた際に多く出る】ものと同じで、フェースを戻し切る前に当たってしまったり、トゥ側に打点が外れてプッシュすることが多くなります

    逆に、体に近すぎるとヒール打点で左に打ち出す傾向で、こちらの方が選手の割合としては少ないです。(セオリーでは目の少し外側がベストと言われるボール位置だが)目とボールの距離が離れすぎないのが理想だと思います。目の位置は、ボールの真上がいい。

    ―― なるほど。確かに、削り出しパターの巨匠たちが【目の真上より少し外側のボール位置がいい】と提唱してきましたよね……。(昔からのフェース開閉が基本のパター設計だから、それが自然かもしれないなぁ〜)

    ビル・プライス ですから、クランクネックを代表に、パターも【オフセットが付く方がつかまりは良くなります】。プッシュ傾向の人はこういうものを選んだ方がいい。また、視覚的なサイトラインも様々ですし、パターは個々人のクセに合わせた、細かなフィッティングが大事になりますね。

    ―― なるほど。先程の「利き目」もそうですが、人によって、パターのどの部分を見るか?も違いますもんね?

    名手でも、左エイムと右エイムで異なる

    左エイムの名手代表であるデイブ・ストックトン(左)、タイガーはじめ、利き目が右の人に右エイムが多いとか(GettyImages)

    左エイムの名手代表であるデイブ・ストックトン(左)、タイガーはじめ、利き目が右の人に右エイムが多いとか(GettyImages)

    ビル・プライス そうなんです。同じパターの名手でも、アライメントの狙い方の違いに面白い例があります。例えば、フェース開閉させながらつかまえにいくタイガー・ウッズ選手は右エイム、3パットなしの連続記録を持つパッティングコーチのデイブ・ストックトンは左エイムです。

    2人とも名手ですが、狙い方と打ち出し方向が違うのは、自身のミスの傾向を把握しているから。構えた時の狙い方は目標の左右で異なっても、打った後、2人とも目標上に転がるのは同じです。選手全体のパーセンテージとしては、右利き目が多いこととも関連して右エイムが多いですね。

    ―― 面白い!右利き目のトップ選手は、目標の右を狙いがちなのか…。ボクは左利き目なのに、狙いが右。どおりで入らないワケだ……(泣)

    ビル・プライス 結局、フェースが向く方向に飛ぶため、インパクトで狙い通り戻るか?の再現性が大事。どう向けて構えるか、どう軌道を作るかに関係なく、自分のクセ、ミスの傾向を知っておくことです。例えば、マキロイにミス傾向を聞くと、喰い気味に「左だよ!」と言います。これが分かっているからギアで対策できるんですね。

    PGAツアーは1Wもパターも「シャット」に!

    これまで、アーク型のストロークでは、フェース開閉するのが当然でしたが…

    これまで、アーク型のストロークでは、フェース開閉するのが当然でしたが…

    ―― なるほど。他に最近のPGAツアーの傾向などありますか?

    ビル・プライス あります。1Wでシャット傾向なスイングが増えたように、パターでもシャット傾向にストロークが変わってきました。イン・トゥ・インのアーク型ストロークが昔からありますが、フェース開閉するため、ボール位置次第で打ち出し方向が変わりますよね。

    代表格のタイガーは天才的な感性でそこをスクエアにコントロールします。が、2mのパットはわずか0.7度フェース角がズレただけでもカップは外れるもの。フェース角の方向にボールが飛び出す事実が分かっているため、各選手のストロークも変わってきたんです。

    ―― フェース開閉ではなく、シャットで【無開閉】が増えた?
    新潮流のアーク型でも無開閉ストロークが増えているため、マレット型が65%にも増えています!

    新潮流のアーク型でも無開閉ストロークが増えているため、マレット型が65%にも増えています!

    ビル・プライス そう。だから新潮流とも呼べる、【無開閉アーク】がツアーで流行っています。アーク型でもフェース角がスクエアな状態が長い方がいいとみな理解している。これならボール位置が微妙にズレても、打点がわずかにズレても、真っすぐ転がせます。

    この新スタイルの【無開閉アークをしたい】選手たちが増えたからこそ、マレット型ユーザーが65%とブレード型よりも遥かに多くなったんですね。ブレード型はどうしても昔からフェース開閉をしたい人向けですから。

    ブレード育ちでもマレットへ。マキロイがいい例

    ブレード育ちのマキロイですが、マレット型ユーザーに(GettyImages)

    ブレード育ちのマキロイですが、マレット型ユーザーに(GettyImages)

    ―― !!! うわっ、繋がったァ〜〜。そうなると、今後マレット型が増える要素はあっても、減る要素はほぼ無さそうですね! これは米国だけですか? グリーンが変わると、日米で好まれるものが違いそうですが?

    ビル・プライス 欧州や日本など、グリーンの芝質や傾斜、ツアー開催場所が変わるとパーセンテージ的にブレード型が多少増えたりしますが、基本、同じ傾向だと思います。マレットに人気がシフトしていくと思います。一番いい例は、ローリー・マキロイですよね。

    彼はずっとブレード型で育ってきて最初のメジャーも勝ったけど、普段練習ではブレード型を使ってタッチを出していても、試合は『スパイダーX』で、オートマチックに機械的に打てるマレットを使う。元々ブレード使いがマレットの利点を取り入れるいい例です。

    ――そういうことかァ〜〜。結局、我々アマはカッコ良さ重視でブレード型を選んで、実際は入ってないですもん……。(泣)トップ選手は、合理的ですね!でも、元々ブレード型とマレット型じゃ「トゥハング」が全然違うのに、大丈夫なのかな……。
    高MOIヘッドでも、ショートスラントネックなどを付ければ、トゥハングが自在に

    高MOIヘッドでも、ショートスラントネックなどを付ければ、トゥハングが自在に

    ビル・プライス 確かに、パターヘッドを垂らした時の「トゥハング」も非常に重要だと思っています。これまでの通常のヒール側ネックだとトゥハングの角度が大きく、反対に深重心の高MOIは真上を向くフェースバランスに近くなります。

    でも、ショートスラントネックを高MOIヘッドに挿せば、トゥハングが通常ブレードよりもやや穏やか。このように、高MOIマレットでもネック次第でトゥハングをコントロールでき、ブレード育ちのトップ選手でも好みのマレットを自在に選べますから。

    ――なるほど。今日はありがとうございました!

    Text/Mikiro Nagaoka

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