『B-Limited 220MB アイアン』は、小さくて、直線的でシャープなヘッドのアイアンです。

マッスルバックのヘッドのこだわりは、大きく分けて、直線にこだわりが強い派と、曲線にこだわりが強い派に分かれます。古くは、ウィルソン系という前者と、スポルディング系という後者に分かれるのです。

ブリヂストンスポーツは、その昔、スポルディングの日本代理店をしていて、その後、クラブ作りを始めるときにもそのハウツーが活かされたことから、曲線にこだわりがあるゴルファーと相性が良いアイアンを作るイメージがありました。しかし、『B-Limited 220MB アイアン』は、直線的なこだわりを強く感じる仕上がりだと思いました。

良く言えば、良いところ取りをして、上手く作ったという感じになります。

実際にコースで『B-Limited 220MB アイアン』を打つまで、特別な期待をしていませんでした。近年のマッスルバックを見直す風潮で、この数年は、世紀を代表するような素晴らしいマッスルバックのアイアンが市場投入されていますので、今更感があったからです。

打ってビックリしました。理屈は一切わからないのですが、とにかく、縦距離が合いまくるのです。実質、他のアイアンもあった関係で、3ラウンドで13ホールで使用しましたが、ピンの50センチ以内にボールが止まったホールは3ホールで、それ以外も、ほぼ全ホールがピンハイ（縦距離が合って、ピンの横）という結果でした。

この結果は、驚異的です。あり得ない漫画のような世界でした。僕自身の調子が良かったこともあったとしても、スゴいことです。

ロフトよりも、半番手弱飛ぶという印象でしたが、それを最大距離として、僕の場合だと8番アイアンで125ヤードです。121ヤードを打つシーンで、8番を打つときに、4ヤードを落とす具体的で確実な技術はありません。少し落ちれば良いなぁ、と打つ前に祈ってから、普通に打つわけです。諸々の情報がスイングにフィードバックされて、楽に打った結果が、ベタピンになるというわけです。

「男は黙ってマッスルバック」という快感は、こういうふうに、感性と結果がマッチしていく中で生まれます。

アイアンは、ボールを狙い通りに止めることが目的のクラブです。そして、テクニックは、狙い通りに距離を落として止めるところに使われるのです。

『B-Limited 220MB アイアン』は、敏感で繊細なゴルフをしたいゴルファーにオススメします。バランスが良いマッスルバックアイアンは、下手な深キャビティのアイアンよりやさしく感じることがありますが、まさに、それを強く感じました。

何も足さない、何も掛けない。等身大で勝負するアイアンとして、『B-Limited 220MB アイアン』はお見事な完成度です。

飛距離がしっかりと出るゴルファーでなければ、クラシックなロフトに近いアイアンなので使い切るのはむずかしいです。僕のヘッドスピード40m/sだと、使えるけれど、スコアアップに直結はしない可能性が出てしまいます。それでも、『B-Limited 220MB アイアン』はロマンを感じます。

『B-Limited 220MB アイアン』は、試打会や特約店など、限られた販売経路でしか入手できないリミテッドなクラブです。そういう希少価値みたいなことが似合うアイアンだと思います。あぁ、昔のようにパワーがあったらなぁ、としみじみとさせる『B-Limited 220MB アイアン』は、本当に憎いヤツです。

『B-Limited 220MB アイアン』

ヘッド素材　軟鉄鍛造（S20C）
ロフト　　　#3/20度、#4/23度、#5/26度、#6/29.5度、#7/33度、#8/37度、#9/41.5度、PW/46度
シャフト　　N.S.PRO MODUS3 TOUR 120（S）

ロマン派ゴルフ作家。1965年東京都文京区生まれ。中学１年でゴルフコースデビューと初デートを経験し、ゴルフと恋愛のために生きると決意する。競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れた青春を過ごし、ゴルフショップバイヤー、広告代理店、市場調査会社を経て、2000年よりキャプテンc-noのペンネームでゴルフエッセイストに。日本ゴルフジャーナリスト協会会員