FW、特にスプーンは、何度も書いていますが感性で使うクラブです。相性のようなものがクラブに搭載された機能より重要になることもあるから面白いのです。『VG3スプーン』のような大きなヘッドを僕は好きになれません。テストラウンドでも、地面から打つときは抜けの不安があって、あまり結果も良くありませんでした。ただ、ティアップしたときは本当に頼りになったのです。やさしいドライバーのように感じましたし、弾道も高めで棒球の飛び方をして心強かったです。

大型ヘッドFWについて、『VG3スプーン』を通して色々と追求してみました。識者二人に話を聞いて、曖昧だったことも明確になりました。僕とは逆にヘッドが大きくて、薄いことに安心感を抱く人はたくさんいます。小さなヘッドが流行していることで、大きなヘッドが好きな人には厳しい環境です。『VG3スプーン』は、まずはそんな人に打ってほしいスプーンです。藤川さんと話したのですが、今回の『VG3スプーン』は大型ヘッドだということがゴルファーに浸透していないことがもったいない、と強く思いました。

例えば、アイドルグループを応援するときに、メンバーの中で特別に好きで推す一人がいますよね。センターのメインボーカルが好きな人もいれば、あまり目立たないけど頑張り屋のメンバーを好きな人もいます。中には、身長の高い低いや、やせ形や、筋肉質や、ボッチャリや、容姿の好みが推す理由ということもあるようです。

異性の好みというのは不思議なものです。包容力があり、甘えさせてくれそうな異性に魅力を感じる人もいれば、気まぐれで、冷たく感じるクールな異性に魅力を感じる人もいます。『VG3スプーン』は、包容力があり、甘えさせてくれる異性のようなスプーンです。優しさに甘えることは、相思相愛であれば、何ら恥ずかしいことではありません。グループの中に好みのタイプがいても、見つけられなければなにも始まりません。

ゴルフクラブの場合、ただ見て応援したり、握手できたりするだけで満足なんてことはありません。自分のものにすることが可能なのです。全ての恋愛と同じように、付き合ってみなければ、本当に相性が良く、相思相愛が長く続くかはわかりません。ゴルファーとクラブも、実際に打ってみなければ本当のことはわからないのです。

『VG3スプーン』と実際に付き合ってみたら……思っていたのと違って合わないと感じる人もいるでしょうし、逆に絶対に合わないと思っていたのに雷に打たれた衝撃を伴う特別な1本との出逢いになる人もいるはずです。挑戦なくして、道は開けません。フラレることを恐れてはいけません。『VG3スプーン』は、そんなことを思わせるスペシャルな1本です。


（著者紹介）篠原嗣典
ロマン派ゴルフ作家。1965年東京都文京区生まれ。中学１年でゴルフコースデビューと初デートを経験し、ゴルフと恋愛のために生きると決意する。競技ゴルフと命懸けの恋愛に明け暮れた青春を過ごし、ゴルフショップバイヤー、広告代理店、市場調査会社を経て、2000年よりキャプテンc-noのペンネームでゴルフエッセイストに。日本ゴルフジャーナリスト協会会員