プロゴルファーも実践!カウンターバランスのメリットとクラブ調整法
「グリップを5g重くするとクラブはどうなるの?」グリップを重くするシステムや、中尺パターがツアープロの間で流行して、「カウンターバランス」という用語を耳にする機会が増えました。ただ、それが実際には何を指すのか、またどんな効果があるのか、少々わかりづらい……と感じている人も多いでしょう。この記事では、カウンターバランスについて詳しく解説していきます。
配信日時:2024年6月26日 09時57分
1.カウンターバランスはクラブのバランスを軽くすること
ゴルフクラブの調整において「カウンターバランスにする」とは、クラブのバランスを軽くすることです。
「カウンターバランス(Counterbalance)」の単語の意味としては「平衡重り」で、偏った重さの均衡を取ることを指します。
ゴルフでは、クラブバランスの調整でアイテムを使って実際にクラブを調整したり、体の使い方を工夫したりして「グリップ側を重くする(クラブのバランスを軽くする)」ことを、カウンターバランスにするといいます。
カウンターバランスが注目される背景
カウンターバランスは以前から存在する手法ですが、以下の理由で近年アマチュアの間でも注目されています。
■ミスが出にくい、打ちやすいなどとして、大きなクラブヘッドが人気になった
■軽量シャフトが進化してきた
■手軽な調整アイテムが登場した(ツアーロックゴルフのような製品)
クラブバランスの調整において、ヘッド側を重くする作業ではバランスが重くなるのに対し、カウンターバランスでは手元側を重くしてバランスを軽くする、といった違いがあります。ギアの進化に伴い、カウンターバランスにチューニングする重要性が増してきている、というわけです。
ただし、そのままで調子がいいと感じていれば、必ずしもクラブバランスの調整を行う必要はなく、より振りやすくするために取り入れたり、より細かい調整を加えたりするための作業である点は押さえておきましょう。
カウンターバランス以外の調整方法も含め、詳しくは「ゴルフクラブのバランスとは? 基礎知識&計算から目的と調整方法まで解説!」を参考にしてください。
カウンターバランスのメリットと効果
カウンターバランスの理論は、「手元の重さを上げれば、ヘッドを軽く感じ、結果として振りやすくなる」という考え方です。
そのため、カウンターバランスの具体的メリットとしては、例えば、クラブが重くて振り切れない場合に、振りやすさがアップするなどがあります。その結果、打点や軌道、リズムの安定性が増す、という効果が得られるのです。
カウンターバランスにしたクラブに想定される、クラブごとの主なメリットと効果は、以下の表を参考にしてください。
クラブ | カウンターバランスにした際のメリット | 具体的な効果 |
---|---|---|
ドライバー ユーティリティ アイアン | ・ヘッドスピードが速くなる ・振りやすくなる ・シャフトが短く感じて操作性が上がる ・スイング軌道が安定する | ・飛距離が伸びる ・ミート率が上がる ・フック、引っ掛け、チーピンが出にくくなる |
ウェッジ | ・手元が安定してクラブのブレが減少する ・リズムが安定する | ・アプローチのダフリやトップを減らせる |
パター | ・重みで手が浮かずストロークが安定する ・テンポが安定する | ・テークバックで低く引きやすい ・芯でとらえやすくなる ・特にショートパットで方向と距離が安定しやすい |
「カウンターバランスのパター」って何?
「カウンターバランスのパター」は、カウンターバランスで作られているパターを指します。
トーナメンでプロが使っているのを見かけますが、標準的なパターよりも長尺になっており、中尺パターともいわれます。
両手の周囲の重量を増すことで、安定感とコントロール性を高めてくれる重いヘッドを使用できるようにしています。
カウンターバランスのデメリット
いいことばかりに思えるカウンターバランスですが、以下のデメリットが生じる可能性もあります。
■ゴルフクラブの総重量が重くなる
■ボールの芯に当たりづらくなる
バランスを軽くするために、グリップ側を重いもので調整した結果、クラブの総重量は重くなります。とはいえ、これは現在のクラブは軽量になっているため、特に力のない人以外は問題にならないかもしれません。
また、バランスを軽くし過ぎるとスイングの軌道が安定せず、芯に当たりづらくなるといった弊害も考えられます。たしかに芯に当たらなければ元も子もありません。
クラブのバランス調整は、あくまでも「自分が振りやすい」バランスを模索して行いましょう。
2.カウンターバランスの具体的な方法
クラブをカウンターバランスに調整する具体的な方法には、以下のようなものがあります。
◆グリップ側に鉛を貼る
◆重いグリップに交換する
◆グリップに挿しこむタイプの製品を装着する
また、クラブに対して直接調整を施す以外にも、グリップを短めに持つという昔ながらの方法もあります。「グリップを短めに持つ」とテコの原理で手元が重くなり、カウンターバランス効果を得られるのですが、これは実際にプロも取り入れている方法です。
クラブを短めに持って振りやすく感じたら、カウンターバランスが有効な可能性が高いといえるでしょう。
詳しくは「田辺ひかりはクラブを短く握り、カウンターバランス効果で飛距離&操作性アップ!」を参考にしてください。
カウンターバランスをする際の注意点
クラブに対して直接処置を施す前に、あらかじめ以下の注意点を確認しましょう。
1:クラブの元のバランスを確認してから調整する
2:現状回復が簡単な方法、安価な方法から試す
3:ルール違反に注意
1と2は、調整がうまくいかない場合に、元に戻しやすくするためです。
3のルール違反に関しては、鉛などで重さを調整することは禁止されていないものの、ラウンド中にその位置を移動させる行為(はがす、貼る、ヒールからトゥに移動させる等)がNGとなっているので注意が必要です。なお、ルールに適合した鉛がプレー中に意図せずはがれた場合、クラブの損傷として扱われます。ペナルティなしでそのままプレーを続行するか、同じ鉛を同じ位置に貼る修理は可能です。(規則4.3a)
◆グリップ側に鉛を貼る
グリップ側に鉛を貼る方法は最も手軽で安価です。テープやシールの鉛は調整もしやすいため、初めてでもカウンターバランスを試しやすいでしょう。グリップに1gの鉛を貼ると、バランスは約0.2ポイント軽くなります。少量から始めて、振りやすいバランスを見つけてください。
価格は2.5gの鉛が8個入りで400円程度です。安価に試せる上、鉛をはがせば元の状態にも簡単に戻せます。
◆グリップを交換する
グリップ自体を交換して重くする方法もあります。
グリップの本体価格は1,000円〜2,000円程度。一般的に300円程度の工賃でショップに依頼できます。ただし、ショップによっては日数がかかる場合もあるため、時間には余裕を持っておきましょう。
グリップを交換する場合に重要な点は、元のグリップの重さを把握しておくこと。製品のスペックを確認したり、交換を依頼する際に外したグリップをショップで測ってもらったりして把握しておきましょう。交換するグリップを決める際の基準になるほか、元に戻したい場合にも必要になるからです。
なお、交換して合わないと感じた場合、グリップを再交換すれば元の状態に戻りますが、事前に鉛テープなどで感覚をチェックしておくと無難です。
高価になるものの、カウンターバランス対応をうたったグリップもあるので、交換の際は検討してもよいでしょう。
◆グリップに挿すタイプの製品を装着する
グリップエンドに専用の工具で穴を開け、異なる重さのウェイトを交換できるようにする製品もあります。
プロも使用する「ツアーロックゴルフ」は少々値が張りますが、装着するウェイトの交換で手軽にバランスを変えられるとして人気があります。装着には有料で専用フィッティングを受ける必要がありますが、その後の調整は重りを変更するだけです。
グリップエンドに挿すだけの簡易な製品が安価で入手できるので、まずはそちらを試すのもよいかもしれません。
3.カウンターバランスはツアープロも取り入れている
クラブに対して直接処置を施すタイプのカウンターバランスは、ツアープロも実際に取り入れています。彼ら彼女らのプレーを参考に、取り入れるかどうかや、どの製品にするか検討することも、ゴルフの楽しみ方の一つでしょう。
「ツアーロックゴルフ」を使用しているプロ
日本版公式サイトによると、片山晋呉、上田桃子、小祝さくら、吉田優利、古江彩佳などが取り入れています。
また、PGAツアーでは約30名のプロが導入しているとされ、米公式サイトにはベン・ホーガンやサム・スニード、ジャック・ニクラウス、セルヒオ・ガルシア、アーニー・エルス、レティーフ・グーセンの名前が並んでいます。
カウンターバランスのパターを使用しているプロ
カウンターバランスのパターは、イップスに悩むゴルファーに効果があるとされ、プロの間で流行している一因と考えられています。同様の症状で悩んでいる場合、試してみてもよいでしょう。
カミロ・ビジェガス、アダム・スコット、ルーカス・グローバーはL.A.B. Golfのトルクフリーパターを使用しています。カウンターバランスのパターが注目されるきっかけの一つとなったW・クラーク、K・ブラッドリー、R・ファウラーはオデッセイ「VERSA JAILBIRD」(製造終了)を愛用。ジャスティン・トーマスはスコッティキャメロンの「PHANTOM X 9」を選んでいます。
カウンターバランスのグリップを使用
カウンターバランスのグリップは、2024年のツアー優勝者にも選ばれています。
ザンダー・シャウフェレは、PGAチャンピオンシップ優勝時に「SuperStroke Zenergy Pistol 2.0」を、デイビス・ライリーは、チャールズ・シュワブ・チャレンジ優勝時に「SuperStroke Zenergy Pistol Tour Putter Grips」を、ロバート・マッキンタイアは、RBCカナディアンオープン優勝時に「SuperStroke Zenergy Pistol 1.0」を使用していました。
4.まとめ
ゴルフクラブの調整は、あくまで自分が振りやすくするための作業です。いずれの方法でも、感覚を確かめながら、心地よいスイングができるように整えましょう。また、あまり極端にバランスを変えてしまうと、今までと異なるミスが出るようになるかもしれません。まずはグリップに鉛を一つ貼ってみるなど、簡単かつ安価な方法から挑戦してみてはいかがでしょうか。