クラブのシャフト、「中調子」には気をつけろ!【QPのギアマニュアル】
クラブフィッターとしてアマチュアゴルファーと向き合っている、QPことプロゴルファー関雅史が最新のギアマニュアルを紹介する。今回はシャフトの「調子」の話。
配信日時:2023年10月6日 06時33分
シャフトの性能を表す項目の一つに調子があります。キックポイントとも呼ばれています。この調子を基準に、シャフト選びをしている方も多いと思います。そもそも調子とは何か、ご存知ですか? シャフトの形状は、手元側から先端側に向かって細くなっています。つまり、手元から先端に向かって太さに比例して徐々に剛性が低くなっていくのが基本です。この「基本の剛性分布」に変化を持たせることで、シャフトのしなり方が変わります。そのしなりのポイントがどこにあるかを表すのが調子です。
調子は大きく分けて3種類。先端側がしなる先調子(ロー)、中間がしなる中調子(ミドル)、手元側がしなる元調子(ハイ)。先調子と元調子は問題ありませんが、計測方法の影響で中調子はちょっとした曲者になっています。
調子の計測方法は、手元側を固定して先端側が決められた数値まで曲がるのに、どれぐらいの重さ(負荷)が必要かを計測。次に先端側を固定し、手元側が決められた数値まで曲がるのに、どれぐらいの重さが必要かを計測。二つの結果を合わせたものでしなるポイントを判断します。
中調子とは、本来、中間にしなりのポイントがあるものですが、全体に抑揚がなく、「全体調子」とも呼ばれる特性も中調子に分類されています。前述した計測方法では、中間が硬くて手元側と先端側が軟らかいシャフト、いわゆるダブルキックと呼ばれるモノも、計測上では全体調子として中調子に分類されてしまうのです。性能も振り心地も真逆の性質を持ったシャフトが、同じ中調子になっちゃっているのが現状です。ダブルキックは先が動くので、中調子なのに「あれ、先が動いた」みたいに違和感が生まれることがあるでしょう。
また、細かい特性を持たせたシャフトも同じことがいえます。例えば、「手元を少し緩めて、中間は少し硬くし、その先はまた柔らかくして、先端は硬くしています」というと、しなるポイントが複数あります。こういうシャフトでも中調子です。素材や技術の進化で細かい特性を出せるようになっている今の新製品の大半は、中調子に分類されます。ダブルキックと表記するようにもなってきましたが、中調子はしなるポイントを正しく判断するのは難しいものです。
中調子の本性を見抜くためには、シャフトの剛性分布図(EI図)を参考にしましょう。表の左側が先端で右側が手元側。硬さを表す縦軸は上が硬くなるので右肩上がりの図になります。最近はメーカーさんもこの図を公開してくれてします。
ただメーカーによって基準が違うので、硬さを表す数字の比較はできません。線の波を判断材料にします。前述した基本のシャフトは、右肩上がりのほぼ直線です。曲線の少ないモデルは剛性の強弱が小さくなるため、極端にしなる場所がありません。逆に曲線が大きく、波が複数ある場合は、しなるポイントが複雑と読み取れます。同じ中調子でも波が複数あるものは、中間が軟らかくて中間がしなるものとは違います。
私のお店では、調子という表現はしていません。先しなり、中しなり、元しなり、両しなりと、〝しなり〟という表現で4つに分類してフィッティングしています。その方が間違いは起こりませんからね。
ちなみに、〝クセのないシャフト〟というフレーズを聞いたことがあると思います。先ほどの基本のシャフトとも近いですが、実はメーカーによって基本の設計思想が異なり、いわゆる〝クセのないシャフト〟も特性が違ってきます。私は前述した手元側が硬く、先端に向かって軟かくなるのが、クセのないものと考えています。同様の考え方のメーカーもあれば、手元側と先端側の硬さを近づけて、全体が同じような剛性になるものを〝クセのない〟、基本と位置づけているメーカーもあります。この言葉も注意が必要です。
そういった表現や調子といった言葉に騙されず、剛性分布図で特性を見抜いたり、自分の振り心地を重視して選ぶことが大切です。
関雅史(せき・まさし)/1974年生まれ、東京都出身。PGA公認A級ティーチングプロの資格を持ち、クラブフィッティングも行う。東京・駒込のゴルフスタジオ「ゴルフフィールズ」で活動。
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