FJ『Pro/SLX』にカーボン版登場!「凹んだソールのX」の履き心地は?男子プロの本音
撮影・上山敬太 取材協力・アクシネットジャパンインク
配信日時:2024年8月19日 23時52分
凹んだソールなのに、本当に芝を噛むの!?
6月末に、国内女子ツアー会場で縦方向の溝のアウトソールが特徴的な『PROLITE』なるスパイクレスシューズのフィッティングが行われ「横ブレしない」と評判になっていたが、今度は、国内男子ツアー「横浜ミナト」でフットジョイ(以下、FJ)が選手のヒアリングとフィッティングを実施していた。男子ツアーでは今年『Pro/SLX』を着用する選手が多く、その秘密を探るため、選手のリアルな反応を直撃した。
ゴルフシューズに詳しくない記者は、その凹んだソールを見た瞬間「真ん中が宙に浮いたソールで本当に芝を噛むのだろうか?」と疑問が浮かんだが、一般ゴルファーも同様に思う人も多いだろう。そこで、物理的なメカニズムは後から聞くとして、まず、実際に『Pro/SLX』を使用する選手に、率直な使用感を聞いた。
何しろ、『Pro/SLX』の使用者は契約外選手も含めて、かなりの人数に達している。確認できた契約男子プロは、幡地隆寛、前田光史朗、篠優希、イ・サンヒ、ブラッド・ケネディ、鈴木晃祐、片山晋呉、木下裕太、木下康平、野呂涼、金田直之、小鯛竜也、伊藤有志、阿部裕樹、副田裕斗、田中章太郎、貞方章男、中西直人で、契約外でも4人使用する選手がいる。女子も契約プロの菊地絵理香、ペ・ソンウ、宮澤美咲、比嘉真美子の他に契約外選手2名が着用している。
まずは、『Pro/SLX』のノーマルモデルと、今回登場した【X】のサスペンション部分がカーボン仕様『Pro/SLX Carbon Leather Laced』の両方を試していた、鈴木晃祐の反応を聞いてみよう。2つを履いて、カーボン版を選んだ理由は? Xの形状はパフォーマンス力につながるのか?
鈴木晃祐「スパイクよりグリップ力を感じる」
「(二つの『Pro/SLX』を)履いてみて、しっくりきたのでカーボンの方にしました。しっかりグリップしてくれるし、スパイクよりグリップ力を感じます。あとは、軽さですね。カーボンだけど、軽いので18ホール歩き切れるのが一番自分の中ではポイントなのかなと思いました。
デザインもけっこう自分の中では好きですね。自分はけっこうカラーが入ったウエアを選びやすいので、合わせやすいというか、良い感じです。(BOAでなく紐を選んだ理由は)たまにボアも履きますよ。そんなにこだわりはないタイプですが、靴の中の余っている部分を、紐だとしっかり足にフィットしてくれるので」(鈴木)
カーボン版『Pro/SLX Carbon Leather Laced』は、アッパー部分がノーマル版の合皮と違って、ソフトで足に馴染みやすい高級感溢れる本革になっている。次に聞いたのが、ノーマルタイプを好んで履いている、前田光史朗だ。
前田光史朗「連戦でもPro/SLXは疲れにくい」
「以前は(ドライジョイズ)『プレミア』シリーズを履いていて、それもすごくしっかりしていて好きだったんですけど、連戦だと少し疲れが出たというか、少し固い感じがしてました。この『PRO/SLX』に変えてからしっかりしたホールド感を残しつつも、プレミアと比べると軽くなっていて連戦でも疲れにくいなっていう印象がありますね。今年初シードでほぼ初の連戦、疲れも感じ始めた中でこのシューズがあるからこそ頑張れているというか。
(BOAか紐か)ボクはずっと紐が好きでその流れで紐を選ばせてもらってますね。BOAだと締まりすぎてしまうというか、締めつけ具合とかが少し難しい。その締め方とかで少しムラがあったというか、少し上の部分が痛くなったりとかがあったので。紐だったら、同じ締め付け具合など別に気を使う必要もなくすんなり履ける。ラクだし、いいのかなって。
(安定感は)最初に履いた時、急斜面でもしっかりスイングできるので、すごくいいなと思った。ちょっと夏になって芝も伸びてきて、しっかり振らないといけない場面とかでもしっかり足が地面に定着するような感じなので、その面ではすごく良いなと思っています。体重移動もすごくしやすくて、スパイクレスということを忘れるぐらい安定感があるし、滑るのを気にすることもないので本当にプレーに集中できますね」(前田)
FJ六車氏「白い部分が地面を感じやすい」
ノーマルモデルの前田、カーボン仕様の鈴木、二人とも「凹んだソールでも滑らず、安定感がある」との共通意見だが、どうして宙に浮いたソールでも安定感が出せるのか?ツアーでフィッティングをしていた、FJの六車氏によると、ソールのトラクションの複雑な形状に理由があると言う。
「まず、スイングする時に力が一番加わる場所は(足の)外側なんですよね。我々の分析でこのアウトソールの特徴は、特に横方向のブレをなくす点になります。スイングすると外側に力がかかるので、アウトソール外側がより幅が広く少し深いというか、ヨコ方向のブレを防ぐような形になっています。もちろんツマ先下がり・ツマ先上がりの縦方向にも、こういった(地面を)刺すようなものでグリップ力を上げています。
選手たちのフィードバックから良いコメントをいただいているのが、この足裏で地面を感じるところ(前後の白い部分の2カ所)って、すごくグリーンや地面のアンジュレーションを感じ取れるので、たくさんスパイクが付いていると『地面の感覚を感じられない』となるんですけど、これはフラットな接地感覚を得られるので、敢えて真ん中の接地量をなくしている側面もあるんですよ」(六車氏)
「Xの4方向に適切に力が伝わる」
そして、宙に浮いて凹んで見えるソールは、実は荷重が加わることで適切に動くのだとか。つまり、常に凹んでいるわけでなく、歩行や体重移動に適切な動きでしなり、サスペンションのように「X」がしなって力を伝達する役割をはたすことになる。
「足を着くと、この凹みやアーチがなくなるんですよ。ソールが足の骨と同じような動きをするんです。(足を地面に着いた際アーチが浅くなること)接地するとアーチがなくなって、この動きがクッションになる。踏み出す時にまたアーチができて、アーチがある状態とない状態を繰り返すのが、人の足の歩く動作になります。X字にした理由は、ここがたわんで(中心部分が上から押されること)4方向にたわんだ力がグッと広がる。荷重によって、4方向に力が広がり、しっかり地面をつかむ形に伝達するよう設計しているんですね」(六車氏)
全く新しい「凹んだソール」の秘密は、スイングだけでなく、歩行も含めたトータルパフォーマンスを高めるためのモノだった。どおりで「疲労に強い」「安定感もある」「横ブレしない」と、男女プロたちから評価されるはずだ。
“フットジョイの”スパイクレスだからこそ出来た、斬新な新構造。あなたは、『Pro/SLX』のノーマル版かカーボン仕様かどっち!? 記者は両方履いてみて、心地よい方を選ぶつもりだ。(編集部M・K)
✦取材協力/フットジョイ(https://www.footjoy.jp/)