アイアンでもカーボンシャフトの選択はあり? スチールシャフトとの違いや使用プロも紹介
アイアン用シャフトの定番と言えばスチールシャフトですが、最近ではカーボンシャフトも種類が豊富に揃っています。この記事では、アイアンのシャフトを選ぶ際の注意点やプロが使用する人気モデルについて解説していきます。
配信日時:2024年4月15日 08時02分
1.アイアンでもカーボンシャフトはあり?
アイアンで上手くボールが打てない、上がらないといった悩みを持っているなら、カーボンシャフトに挑戦してみるのも一つの手段です。
ゴルフにおいて、自分に合ったシャフトを選ぶことはとても大切です。スイングの再現性を高めたり、ミスする確率を下げたり、心地良いフィーリングが得られるなど、さまざまなメリットがあります。
これは全てのゴルフクラブに言えることで、アイアンも例外ではありません。昔からの定番であるスチールシャフトも年々種類が増えていますし、カーボンシャフトもさまざまな重量、特性を持ったモデルが登場しています。
昔は、「スチール=重い」、「カーボン=軽い」というイメージがありました。現在では軽量なスチールシャフトもあれば、重いカーボンシャフトも存在します。必要な性能に合わせて、さまざまな重量のシャフトが揃っていますので、必ず自分に合うモデルがあるはずです。
2.カーボンシャフトとスチールシャフトの違い
カーボンシャフトとスチールシャフトにはどのような違いがあるのか、素材の特性から徹底的に紹介します。
カーボンとスチールって素材としてどんな違いがある?
シャフトの素材として、カーボンとスチールにどのような違いがあるのか解説しましょう。
まずカーボンの特徴として、比重が軽いことが挙げられます。種類によって変わりますが、カーボンの比重は1.5〜1.8で、鉄の7.8と比べるとかなり軽量であることが分かります。カーボンは比重の軽さを生かして、モノを軽量化するのが得意な素材のため、軽量シャフトを作ることに適しているのです。同時に、設計自由度の高さもあるため、先端が走るようなシャフトにして球の高さを出すなど、スチールシャフトで実現するのが難しい性能を持たせることも可能となっています。
一方でスチールは、重くしっかりしたシャフトを作るのに適した素材です。剛性を高めやすく、スイング中のネジレを小さく抑えることが可能になるため、コントロール製の高いシャフトを作ることができます。設計自由度という意味ではカーボンには及びませんが、最近では細かく肉厚を調整したり、製造工程における熱処理を工夫する方法が開発され、さまざまな性能を持たせることも可能になりました。また、製造コストを抑えやすく、カーボンに比べて安価に作れることもメリットだと言えるでしょう。
カーボンシャフトはサポート機能が欲しい人に合う
シャフトに、スイングをサポートする“お助け機能”を求める人には、カーボンシャフトがおすすめです。パワー不足をカバーしたい、ボールの高さを出したい、ボールをつかまえたいといった悩みがある場合は、適切なモデルを選ぶことで解消される可能性があります。
まず、カーボンシャフトなら軽量で、同じ番手でもスチールより長く作られることが多いため、ヘッドスピードを上げやすく、ボールの高さを出しやすくなります。しなり量の多いモデルを選ぶことで、ヘッドスピードを高めながら、スライスやプッシュなどのミスを防ぐこともできるでしょう。
カーボンシャフトを選ぶ注意点は?
重量やフレックス(硬さ)を選ぶときは、スチールシャフトよりも軽く、軟らかいモノを選びましょう。カーボンは軽量な素材ですが、その分、重いシャフトを作るには多くの材料が必要になります。同じ重さのカーボンシャフトとスチールシャフトの断面図を比較すると、実はカーボンの方が圧倒的に肉厚になるのです。肉厚なシャフトをしならせるには、相応のパワーが必要です。
そのため、90グラム台のスチールを使っていたからと言って、同じ90グラム台のカーボンを選んでしまうと、むしろハードでクラブが使いづらくなる…という事態になりかねません。カーボンは柔らかいものというイメージがあるかもしれませんが、アイアン用シャフトに関して言えば、重い重量帯のモノはしなりが少なく、スチール以上にハードに感じるモノが多くなります。
スチールシャフトが合うのは自分で球筋をコントロールしたい人
最近ではお助け機能の付いたモデルも存在しますが、基本的にスチールシャフトは剛性が高く作られたモノが多く、ゴルファーが振ったなりにボールが飛んでくれます。自分のスイング、スキルでボールをコントロールしたい人にスチールシャフトが最適です。
また、番手ごとの飛距離を安定させて、狙った距離を打ちたい場合もスチールシャフトがおすすめです。お助け機能を持ったカーボンシャフトはしなり量が多めで、振り方によっては、ボールが急激に飛ぶことがあります。剛性の高いスチールシャフトは、振ったなりの飛距離が安定して出てくれる特性があり、思いがけない飛びが出る可能性が低くなっています。プロや上級者になるほど、飛距離のブレを嫌がる傾向が強いため、男子プロを中心にスチールシャフトが根強い人気を誇っているのです。
これ以外にも、カーボンシャフトとスチールシャフトを選ぶポイントとして、打感の違いが挙げられます。同じヘッドに装着したとしても、カーボンシャフトの方が衝撃を吸収する特性が強く、打感がソフトに感じられることが多いです。一方で、人によっては「打感がぼやけた」と感じることもありますので、衝撃がダイレクトに手に伝わりやすいスチールシャフトのソリッドな打感が好まれる場合もあります。自分が求めるフィーリングに応じて、シャフトを選ぶことも大切です。
初心者はカーボンとスチールどっちがいい?
結論から言うと、一定以上のパワーがある初心者の方はスチールシャフトを選んだ方が良いです。
基本的にカーボンシャフトはメリットを享受するために軽量なモノを使いたいですが、初心者が闇雲に軽いシャフトを使ってしまうと、上達を遅らせてしまう危険性があるからです。アイアンはある程度の重さがあることで、ダウンブローに上からヘッドを打ち込みやすくもなりますし、しなり量の少ないスチールの方が、ヘッドが遅れて入ってくるので、ハンドファーストなインパクトを作りやすくなります。
スイングの土台ができて、その上でクラブにどんな性能が欲しいか見えてきたら、カスタムのカーボンシャフトを使用することを検討すると良いでしょう。
3.ツアー優勝プロが使っているアイアンのカーボンシャフト
最後に、ツアー優勝した女子プロが使用しているカーボンシャフトのおすすめモデルとその特徴について紹介していきます。
岩井千怜『レクシス カイザi(8S)』
今季の開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」を制し、ツアー通算5勝目を挙げた岩井千怜プロは契約するヨネックスのカーボンシャフト『レクシス カイザi』の“8S”を使用しています。ヨネックスは、ヘッドだけでなく、シャフト開発にも力を入れているメーカーで、ドライバーからアイアンまで、さまざまなモデルを展開しています。
『レクシス カイザi』は、アイアン用では珍しい先中調子タイプのシャフトです。強烈なしなりと高い復元力を持つ新素材「2G-Namd Flex Force」を採用することで、インパクト時のエネルギーロスを軽減。ヘッドの走りによって、ボール初速を上げながら、適正スピンがかかって、グリーンに止まるボールを打ちやすくなっています。
スペックとしては70グラム台、80グラム台それぞれにSとRのフレックスがラインナップされています。先が走るタイプのシャフトをウッドで使用している場合、非常に相性が良いシャフトで、振り心地が揃ってくれます。
原英莉花『アッタスFF(85)』
国内メジャー「日本女子オープン」2勝などの実績を持つ原英莉花プロは、USTマミヤの『アッタスFF』を使用しています。60グラム台から90グラム台まで幅広い重量帯がラインアップされていますが、原プロは上から2番目に重い“85”を使用しています。
『アッタスFF』シリーズは、アイアン用カーボンの常識を覆すさまざまな工夫が施されたシャフトです。まずSやRなどの設定がない「フレックスフリー設計」を採用しています。これにより例えば、5番用のシャフトをそのまま5番のヘッドに装着すればSフレックス相当の硬さになりますが、5番のヘッドにあえて7番用のシャフトを装着してRフレックス相当まで柔らかくする…といった調整が可能となっています。最適な硬さを選べることで、タイミングが取りやすくなり、左右へのブレを抑えることができます。
他にもシャフト先端に衝撃吸収剤を配置した「KSテクノロジー」によって、インパクト時の衝撃を軽減し、飛距離のバラつきを抑えることに成功。衝撃が減ることで、体への負担も少なくなるので、腰や手首に不安がある人にもおすすめなモデルとなっています。
また、番手ごとに2グラム以上の重量差を付ける「ウェイトフロー設計」も採用されていて、ロングアイアンは軽量で振り抜きやすく、ショート番手は重めでコントロール性が高くなるように調整されています。
西村優菜『MCI(70R)』
2023年から米国女子ツアーに参戦し、見事にシード権を獲得した西村優菜プロは、藤倉コンポジットの『MCI』シリーズを愛用しています。6IからPWまでは“70R”を、ウェッジには“80S”を入れています。
『MCI』はカーボンと金属を複合した新しいタイプのシャフトで、女子プロを中心に根強い人気を誇っています。カーボンシャフトは比重が軽く設計自由度の高さがあるものの、同時にさまざまなデメリットも存在します。例えば、スチールに比べて手元重心になりやすく、ヘッドバランスが軽くなったり、重くした場合にフィーリングが悪くなりやすいことです。
そこで藤倉コンポジットが開発したのが「MCI(メタル・コンポジット・テクノロジー)」で、比重の重い金属を複合することで、カーボンの設計自由度を生かしながら、より細かな重心位置の調整を可能とする技術です。これにより、カーボンシャフトのしなやかな動きを生かしながら、スチールシャフトのような耐久性やネジレ剛性を持った高性能なシャフトの製造が可能となりました。
『MCI』シリーズは50グラム台から100グラム台とかなり幅広いスペックが用意されていますが、これも金属を複合する技術があるからこそできた豊富なラインナップなのです。
リ・ハナ『アッタスアイアン(80S)』
2023年シーズンの「樋口久子 三菱電機レディス」で初優勝を挙げたリ・ハナ(韓国)もアイアンでカーボンシャフトを愛用しています。使用モデルは、契約するUSTマミヤの『アッタスアイアン』の“80S”。前述した原プロが使用している『アッタスFF』は操作性に優れたモデルでしたが、『アッタスアイアン』は飛距離性能に特化したモデルとなっています。
『アッタス アイアン』には、高密度金属「タングステン」をパウダー状にして配置したカーボンシートが使用されています。より細かな重心設計が可能になり、重量帯ごとに最適なバランスが出るように調整されています。同時に、スイングパワーをストレートにヘッドに伝えることも可能になり、飛距離を出しやすくなっています。
また「番手別フレックス設計」が採用され、番手ごとに弾道を最適化しながら、同じ感覚でスイングできるように調整されていることもポイントになっています。
申ジエ『TOUR AD Type-2(65S)』
元・世界ランク1位、米国女子ツアーで賞金女王を獲得したこともある実力者の申ジエ(韓国)は、グラファイトデザインの『TOUR AD-65 TypeⅡ(S)』とかなり軽量なカーボンシャフトを使用しています。
『TOUR AD-65 TypeⅡ』は、軽量でありながら、程良いしっかり感を持たせることで、飛距離と方向性を両立させたモデルです。気持ちの良い振り抜きを重視した設計で、幅広いプレーヤーに対応できるようになっています。先端部の剛性が高めに設計されていますので、ミスショットでも距離や方向のブレを小さく抑えられています。中調子でクセの少ないシャフトになっていて、高弾道ボールでピンを狙うことができます。
4.まとめ
今回はアイアン用のシャフト、特にカーボンシャフトに焦点を当てて解説しました。カーボンシャフトは、さまざまな特性を持ったモデルが存在する分、自分に合ったモノを見つけるのが難しくもありますが、最適なモノを見つけたら、手放せないクラブになることは間違いありません。ショップによっては、カーボンシャフトの装着されたアイアンを試打できることもありますので、ぜひ一度打ってみることをおすすめします。