マジで⁉️ フジクラ『スピーダーNXバイオレット』はヘッドスピードアップが可能⁉️ 清本美波とガチ検証
撮影・山上忠 取材協力・上総モナークカントリークラブ
配信日時:2024年9月26日 01時36分
女子プロ人気No.1作の後継をチェック!
「VTC」(部分トルク制御技術)でクセのない中調子をアップデートした21年作『スピーダーNXブルー』(以下、初代)は、当時瞬く間に女子プロ人気No.1に。今秋発売のその後継作『スピーダーNXバイオレット』(以下、バイオレット)は、よりヘッドスピードアップできると言うが本当なのか? 高校時代に初代を使い、現在は『24ベンタスブルー』でHS41m/sのドローヒッター・清本美波と検証することに。
「シャフトでHSアップできるなら嬉しい」と興味しんしんの清本だが、もう一人検証に参加したのが、HS42m/sのドローヒッター・堀尾研仁だ。PING契約のプロコーチも53歳になり「HSが落ちてきた」と言い、生徒のためにも「女子プロが多く使ってトーナメントで何勝もした初代とどちらが速いか試したい。『Violet』のVは“勝利”の意味もあるかもしれないし、注目ですね」と、今回の検証に参加することに。
テスト方法は各自のエースヘッドを利用し、初代と4代目のバイオレットを同一の長さ・フレックスで打ち比べて、トラックマン4でコース試打するスタイル。ボールは清本が使うテーラーメイド『TP5x』を採用し、清本のヘッドは『Qi10 LS』で、堀尾は【10K】ヘッドの『G430 MAX 10K』だ。気温32度、風はやや向かい風の3~5m。
ハーフウェイダウンの一体感で再現性も◎
高校生の2年前に初代『スピーダーNXブルー』を使っていただけに、初球から高弾道ストレートを放つ清本。「打ちやすいしいい球が出ます」と言うものの、ややスピン量が多かったが、後継作『スピーダーNXバイオレット』を試すと、鋭いドローでHSも初速もアップ。理由はどこにあるのだろうか?
清本のヘッドスピード&ボールスピード増を目の当たりにした堀尾は「スピンも減ったし、軌道に対してフェースが開かないから『つかまえて飛ばしたい』人に合いそうですね」。動作解析GEARSも指導に使う彼は、清本の「バイオレットは腰から腰の範囲、ハーフウェイダウンからインパクトで全く遅れないです」との感想に頷く。
「清本プロやフジクラさんも仰るようにバイオレットは初代より張り感があって、遅れる要素を感じないのが特徴でしょう。初代は多くの女子プロが使った中調子の名器ですが、ややマイルドでスピン量多めの人がロスする要素もあったけど、バイオレットは違う。感覚的に腰の位置で遅れなければ、回転も淀みなく増していけてHSや初速アップに繋がるのも当然だと思います」(堀尾)
清本は「DHX技術」でHSとつかまり増!
清本の「先だけ走る感じじゃなくバイオレットはインパクトゾーンで一体感もある」との反応について同社開発者は「それこそが【DHX】の特徴」と清本の反応を喜ぶ。「スイングの各場所で速度ロスしない角度の第2バイアス層を入れたのが【DHX】で、初代より張り感が増し『先端だけ走る』シャフトではなく、復元時に一体感があって扱いやすさも特徴です」と、同社技術開発部の佐藤氏は言う。
上が初代のストレート球で、下がバイオレットのドローのデータだが、同フレックス【50S】比較で距離に大差がつき、清本は同じ振り方で初代より最大「0.4m/s 」速く振れていた。堀尾は「元々スピン量が多めの清本プロは、しなり量の多い初代よりバイオレットの方がフェースが開かずに当たりやすい。HSもそうですが、特に初速が上がって飛距離に直結しますよね」と解説する。
清本も打ち比べた実感をこう話す。「初代だと腰の辺りで少し遅れる感じがしましたが、バイオレットだと遅れる感じが全くなく、シャフト全体がインパクトで走ってつかまります。シャフトでこれだけ変わるとすごく有り難いし、調整して良ければ試合でも使ってみたい」。前述の佐藤氏も「ロボットより人間の方がスピードが上がる」と研究開発の内情をこう明かす。
「DHXテクノロジーは、90°と45°以外の角度のシートで【第2バイアス層】の全長をいろんな角度で補強することによって、スイングのどの場所でもスピードを失うような無駄な変形を抑えます。弊社の検証ではロボットテストでも初代より速度が上がる結果が出ていますが、人間が打つ方がロボットより1.5~ 2倍ほど速くなるデータが出るんですよ」(フジクラ技術開発部・佐藤歩氏)
堀尾は「つかまるのに上がる」と驚く
テーラーメイドの中でも最もMOIが抑えられた『Qi10 LS』を使う清本とは違い、遥かに高MOIな『G430 MAX 10K』の堀尾はどうなるだろうか。「年齢的にもHSが徐々に落ちてきた…」と言うが、バイオレットは【10K】を初代より速く振らせ、強弾道になった清本と反対に、かなり高弾道になる結果が目を引いた。
中弾道ドローが持ち球の堀尾は「HS43m/sくらいですけど、少し落ちて41〜42でもおかしくない」と頭をかく。実際、初代で最初は41m/s強で、温まって最速42.4m/s を記録した。ところがバイオレットに替えると、いきなり43m/sを越えてMAX 43.4m/sと最大1m/sも差が付き、何より弾道の高さに驚く。
「いや、ボクも清本プロとほぼ同じ感想で、腰の位置で全く遅れずにシャフト全体が走ってくれる印象が強いですね。ボクの場合は清本プロの【つかまった強い球】というより【ラクに上がる】方が印象的です。張り感が明らかに初代よりあるのに、シャフトとヘッドが一気に仕事をして弾道を持ち上げてくれました」(堀尾)
「VTC技術」も鬼アプデされていた!
この反応に、前述の佐藤氏はこう明かす。「ロゴ自体は小さくなっているのですが、VTC(部分トルク制御)テクノロジーと呼ぶ、3次元シミュレーション設計で初代より手元と先端のトルクを約10%ずつ引き締めたことで、初代よりもつかまりアップと弾道を持ち上げる狙いがありますね」(フジクラ技術開発部・佐藤歩氏)
また、堀尾は「初代より張り感がアップしていて、2代目の『NXグリーン』や3代目の『NXブラック』を使う女子プロに好評というのも納得です。慣れるともっとHSと初速を上げられそうだし、パワーが落ちてきた生徒さん達にかなり良い報告ができますよ」と、歴代作を使う生徒のため、コーチ目線で話していた。
記者も驚いたが「多くの女子プロが急激に移行できる」点が、何より初代と似ていると感じる。2021年を彷彿するツアー状況が直近で出ており、国内女子メジャーの「ソニー日本女子プロゴルフ選手権」で、2代目『グリーン』、3代目『ブラック』と同人数の9人で、4代目の『バイオレット』がモデル別使用率の1位タイに急増していた。
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この背景には「高MOIヘッドに対応した」剛性分布もありそう。上図のように、歴代作よりも明らかに400~500ミリ付近の剛性を上げ、高MOIでも暴れず・遅れず・速く振らせる狙いもあるとか。清本より【10K】の堀尾の方が結果が出たのも、これらの設計が効いたのだろうか。最後に、堀尾はこう言って検証を締めくくった。
「今回はずっとコーチ目線で初代とバイオレットを打ち比べていましたが、明らかに『パワーが落ちてきた』というゴルファーに試す価値がありそうです。反対に、パワーがある人にも『暴れづらい特性』がバイオレットにはあるので、自分に合うかどうか、まず試してほしいですね」(堀尾)