ザックリを防ぐにはグースネックのウェッジがいい【QPのギアマニュアル】
クラブフィッターとしてアマチュアゴルファーと向き合っている、QPことプロゴルファー関雅史が最新のギアマニュアルを紹介する。今回はウェッジのネックのお話。
配信日時:2023年9月26日 06時48分
前回取り上げたFP(フェースプログレッション)値。打ち出し方向やボールのつかまりを左右するこの数値はどのクラブにも存在し、微妙に効果が違います。今回はウェッジのFP値について。これがネック形状の見え方を左右しているのです。特に今回はザックリに悩みを抱える人、必見です。
比較的ウェッジのFP値は、重要性が認知されていると思います。モデルの紹介でよく「出っ刃」や「グース」なんて言葉が使われていますが、まさにこれがFP値のこと。出っ刃とは、ストレートネックともいいますが、リーディングエッジが前に出たFP値の大きいモデルのこと。セミグースやグースはFP値が小さく、リーディングエッジが後方に下がったモデルのことです。最近の市場は、出っ刃のモデルが多いですが、1990年代はグースネックが一般的でした。当時は、グースネックを使用していたジャンボ尾崎さんが全盛期だったこともあり、プロもアマもみんながグースのウェッジを使っていました。しかし、2000年代に入ると、出っ刃のウェッジを使うタイガー・ウッズの影響もあり、外国製ブランドの出っ刃が日本に多く入ってくるようになり、日本でも使用者が急増しました。
ジャンボさんとタイガー、ウェッジのFP値の違いは、日米のゴルフ場の環境や打ち方の違いが大きく影響しています。出っ刃なモデルはリーディングエッジが前方に出ているため、ボールへ直接コンタクトしやすい特性があります。そのためシビアなテクニックを駆使するのに適していますが、タイミングが狂うとザックリやダルマ落としが起こりやすくなります。
一方、グースと呼ばれるFP値の小さいモデルは、フェースが後ろにあるぶん、重心角が大きくなります。重心角が大きいと、インパクト付近で後ろにある重心がシャフトと一直線になろうとします。つまり、トゥ側が前(目標方向)に出るのでフェースにボールが乗りやすく、ヘッドが地面に刺さりにくい形状なのです。重心角の小さい出っ刃は、インパクト付近でフェースが後ろに動こうとするのでダフるとそのままミスになります。
タイガーがプレーする米国は洋芝でペタッとしているので、ボールに直接コンタクトしやすい出っ刃が好まれ、ボールを真ん中から左足寄りに置いてボールだけをサラッと拾うような打ち方に適しています。日本はコーライ芝でボールが浮いた状態になりやすい。グースネックのウェッジでボールを右足寄りに置いて上からトンとヘッドを落とすだけで、簡単に低く出て止まるアプローチが打てます。昔はみんなジャンボさんに憧れて、この打ち方をマネしていたものです。私は〝まさし〟つながりもあって、今でもグースネックのウェッジを使っています。フェースの顔だけでいえば、すっきりした出っ刃のほうが好きですが、機能的な面からグースネックのモデルを選んでいます。
私もプロゴルファーではありますが、ザックリのミスが出ることがあります。特に冬は最悪です。ザックリを防ぐために考えた結果、ストレートネックでボールだけをサラッと拾う打ち方をするより、アバウトに打てるグースネックのほうがいいと思いました。具体的にいうとボールを目玉焼きに見立てて、黄身(ボール)の周りの白身(芝)辺りをバサッと取れば特性上、ザックリしません。ちょっとダフってもボールは前に行ってくれるので安全です。グースネックは高い球が打ちにくいというデメリットはありますが、ザックリしてまたアプローチをするより、確実に次にパットを打てるほうが、スコア的にもメンタル的にもいいですからね。出っ刃のウェッジでボールを右足の前に置いて、一生懸命上から打とうとする方もいますが、これは高度な技術が必要です。
ウェッジはフルショット、アプローチ、さらに悪いライから脱出するときに使うクラブ。大きなミスを減らすことはスコアメイクに直結します。グリーン周りが苦手だと感じている方は、流行で選ばずにグースネックを試してください。ゴルフはミスのスポーツ。そのミスをいかに小さくして、その後、リカバリーしてスコアをまとめるかが大切です。
関雅史(せき・まさし)/1974年生まれ、東京都出身。PGA公認A級ティーチングプロの資格を持ち、クラブフィッティングも行う。東京・駒込のゴルフスタジオ「ゴルフフィールズ」で活動。
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