選手みなが選んだ「形状6」を採用、キャロウェイ『OPUS』ウェッジは、新作なのに“長期熟成”!?
キャロウェイ・ウェッジの今後の流れが決定的に!?『OPUS』の優れた技術的な特異点とは?
配信日時:2024年8月21日 04時50分
「優れたウェッジ」の基準って?
キャロウェイのウェッジを愛用してきた人は、これまで『MD=マックダディ』シリーズに慣れ親しみ、その後は『JAWS』シリーズの鋭い斜め角溝の魅力も体感・恩恵を受けてきたことだろう。さらに振り返れば『MD』シリーズより前の『Xウェッジ』の「形が好きで手放せない」人もまだいるかもしれない。
ネックに「・R・」が刻印された巨匠、ロジャー・クリーブランド氏が手掛けたシェイプの数々の中で、こうした過去の名器を手放せない選手も多くいた。代表例が、石川遼や上田桃子といった、ショートゲームの感性を主に長く活躍する選手たち。彼らは長いキャリアで、言葉では説明しづらい自身のウェッジの基準を、決して曲げることはない。
それもそのはずで、数あるクラブでも「ウェッジがいかに特殊か?」を改めて考えてみてほしい。それが毎年発売されるような、ドライバーやウッド、アイアンとは一線を画した存在なことに容易に気づくはずだ。「飛ばすこと=初速・打ち出し・スピンの向上」がひたすら求められる他カテゴリの常識は当てはまらない。
むしろ、その逆。スピンは求められるにせよ、どちらかと言えば、フェースへの長い乗り感や打感、弾道のコントロール性が強く求められるだけ。ノーメッキが常時提供されるツアーでは、それらはベースとして高い水準にあるため、何が「ウェッジの基準」として機能するのかといえば、自ずと答えは【形状】に行き着く。
選手が選んだ『S6=シェイプ6』
つまり、新しいテクノロジーに左右されがちなドライバーなどとは違い、ウェッジはひたすら感性重視で、各選手が育った過程で微妙に異なってくる。選手のアプローチ技術自体が、ジュニア時代から長い年月をかけて熟成されるのと同様に、基準として使ったウェッジにも差があり、その“長期熟成”された両者が重なるほど、石川や上田のように“替えの効かない手の一部”になってしまう。
この難題に挑んで様々なプロトタイプを製作した結果、コードネーム【S6(シェイプ6の略)】の形状を奇しくも多くのトッププロたちが選び抜くことになった。『OPUS』が未発表プロトタイプだった6月に、ウェッジの魔術師・石川遼が最も大事な「58度」を替えて勝利したことも、試みが正解だったことを物語る。『OPUS』を愛す、米国広報のジョニー・ワンダー氏も自身の過去を正直に明かし、その魅力を語る。
「すべての偉大な芸術はシンプルなもの。それがいま私達が手にしているものです。『OPUS』ウェッジは、昔ながらのツールを現代の技術で作り上げています。ハッキリ言うと、これはプレイヤーに一切の妥協を求めない、シンプルで昔ながらの形状だと言えます。時には研究開発、マーケティングなどすべて終えた後、最もシンプルな答えが正解となることもあります。私は、この仕事では『ヒット曲を演奏するだけ』と(比喩して)よく言います。そう、『OPUS』はまさにそれで、ゴルファーなら誰もが過去に愛用したウェッジを持っています。
私にとっては『588』、ピン『EYE2カッパー』、キャロウェイ『MD5 T』です。3つはそれぞれ異なる理由で優れていますが、最終的にはユーザー体験が決め手となります。私はこれら3つに絶大な信頼を寄せており、どんなショットでも打てると感じてきました。公平を期すために言うと、他のウェッジにも素晴らしいものがありますが、性能チャートに山と谷が多くありました。各性能を1~10で評価すると、分野によって10が付けば2や3が付くものもありますが、本当に優れたウェッジは7や8しか付きません」(米国広報、ジョニー・ワンダー氏)
オーソドックスなティアドロップ型の【S6】=『OPUS』は、丸すぎず直線的すぎず、ネックとフェースのつながりも、従来のくぼみがあるタイプではなく、滑らかな曲面になったことで「誰にとっても構えやすい」伝統的なシェイプへと生まれ変わった。
極上ワインが名の由来。でも最新の“溝”が2本増えた
約19ヶ月もの時間をかけ、何度も改良し、ようやく“形”になった『OPUS』。その名の由来は、カリフォルニアの最高級ワインを製造するワイナリーから来たと言い、この辺りもワイン製造を生業とした創業者イリー・キャロウェイの歩みへの畏敬の念を感じる。ただ、“長期熟成”はワインでは聞こえは良くとも、クラブでは「古いモノ」とネガティヴに捉える向きもあるかもしれない。
が、あくまで長期熟成は選手の技術と感性を支える“形状”の話で、ウェット時のスピン性能を引き上げるため、鋭い斜め角溝【37Vグルーブ】をキープしつつ、溝そのもののピッチを狭くし、新しくスコアラインを2本も追加。構えやすい形状と相まって、直感的なフィーリングで意のままに弾道コントロールできる仕上がりとなった。また、昔のウェッジとは違うのは、フェース表面のブラスト処理にも精密なテクノロジーを引き継いだこと。
OPUS Wedge
「OPUSウェッジのフェース面には、ツアープレーヤーからも好評だった『JAWS FORGED』のブラスト処理が引き継がれています。粗さがグレードアップしたもので、よりしっかりとボールを捉えてくれます。また、溝と溝の間にはマイクロフィーチャーも設置。斜めに小さな凸部が形成されているものですが、フェースを開いたときにはターゲットに正対し、スピン量の増加にも貢献します」(同社広報)
Tグラインドを追加、MIM製法の限定作も!
新しい試みとして、ソールグラインドに技を使える【T】を追加した点も、選手ファーストな『OPUS』らしい考え方だと言えるだろう。
「ソールグラインドは、4種類をラインアップ。スタンダードな【S】、前作よりもラウンドが強調されたワイドソールの【W】、トレーリングエッジ側を削ることでソールがCのような半円状をした【C】は従来から存在していますが、今回は新たに【T】グラインドも加えました。【T】グラインドは【C】グラインドにも似ていますが、トレーリングエッジ側をより幅広く削った形となり、さらにバンス角が抑えられています。これにより、薄く硬い地面でも、ボールに対して正確にコンタクトすることが可能です」(同社広報)
そして、テクノロジーを追求する同社らしい数量限定の『OPUS PLATINUM』ウェッジもすこぶる新しい。コブラなど一部メーカーしか採用していない【MIM製法(金属射出方式)】を取り入れ、超精密に成形したヘッド上部に、高比重なタングステンバーを合体させ「ギア効果でスピン増を狙う」奇抜なアイデアを形にした。
「OPUSウェッジと同じヘッド形状が採用していますが、大きな特徴の1つがリーディングエッジで、ツアープロのフィードバックを反映し『JAWS RAW』と『JAWS FORGED』の中間的な丸みがあるものになっています。『OPUS PLATINUM』が特徴的なのは、この新しい形状を鋳造でも鍛造でもなく、ウェッジではあまり類のないMIM製法と削り出しでつくり上げたことです。
素材も注目のポイントで、今回は2種類のステンレスを使用していますが、そのうち80%を占めるのが柔らかい『303SS』です。この柔らかさが衝撃を吸収することで、ボールがフェースに乗る時間も増加。結果、プレーヤーにボールコントロールのしやすさをもたらし、バックフェースには削り出しの跡をあえて残しているため、仕上がりもとても美しいものとなっています」(同)
OPUS PLATINUM Wedge
昨今、クラブ契約フリーの選手が増えたが、国内女子ツアーでも契約外でキャロウェイのウェッジを選んで活躍する強い選手が増えている。“ニュー・スタンダード”と呼ぶべき、長期熟成された新しい『OPUS』シリーズは、今後の同社のウェッジの“顔”を決定づける存在と言っても過言ではないだろう。
つまり、「このウェッジと共に自身のアプローチ技術を長期熟成させていく」のが、中長期的な未来を考えた上では、賢い投資と言えるかもしれない。長期間活躍してきた実力者たちが、本当に使いやすい「優れたウェッジ」の基準が根本的に見直され、ここから新たに始まるのだから。(編集部M・K)