クラブデザインに人生を捧げる男、ショーン・トゥーロンの新作パターは「美しさを極めた」8機種
撮影・山代厚男 取材協力・ダブルイーグル横浜元町店
配信日時:2024年4月22日 09時47分
量産“初期作”『ファーストラン』コレクション!
ーー1990年代に可変機能の特許を多数取得したカスタムパーツメーカー『ZEVO』を興し、2000年代はテーラーメイドの副社長としてメタルウッドを世界的に成長させ、2016年から23年までキャロウェイの副社長としてオデッセイ『トゥーロン』を成功に導いた男、ショーン・トゥーロン。その集大成は“美しいパターデザイン”への原点回帰だーー
調整可能な“可変クラブ”を世に広めた伝説の男が「キャロウェイから独立し、パターブランドを立ち上げた」と聞いたのは昨秋のこと。上記の少量生産≒『スモールバッチ』シリーズを紹介したが、今年は“量産”初期モデル『ファーストラン』コレクションを引っ提げて来日した。簡単にショーン・トゥーロンの経歴を振り返っておこう。➡➡ショーン・トゥーロンがまた独立。『Toulon Golf』で“美しい”パターに原点回帰。まさかのアイアンも!?
ウィスコンシン大学を卒業したトゥーロンは、シカゴで設立されたばかりのTaylormadeに就職、7年ほど営業として働く。その後、画期的な調節性を誇るパーツメーカーの「ZEVO」を興して300人規模に育て上げた後、これを売却。その後、再び「Taylormade」からR&D部門の副社長として招聘されることになり、2016年からは「Callaway」でも同様の役職を務めた。
Taylormadeでも、Callaway&Odysseyでも、開発やデザイン分野を統括し、四桁のエンジニアたちを率いてきたトゥーロン。高速開発サイクルを得意とする“画期的テクノロジーの権化”は、ZEVO時代を含めクラブに関する特許をトータル200以上も取得。そんな生ける伝説がキャリアの最後に選んだ仕事が「息子と一緒に大好きなパターデザインに没頭すること」だ。
他より遥かに長いマシンタイムで美しさに磨き
「多くの開発者やデザイナーを率いて様々な特許を取得してきたのもいい経験でしたが、やっぱりマネジメントではなく、自分でデザインしたいんです。本当に美しいモノは普遍的で時を超えて愛されるものだし、中でもパターは特に愛着を持ちやすいクラブで“替えが効かず”体の一部のような人もいますよね。そういうゴルファーに本気で応えたい。
そこで、我々トゥーロンゴルフは他社の倍以上の“マシンタイム”を導入しました。コスト度外視で長時間をかけて緻密なミルドで美しさを磨き込みつつ、ある程度の量産体制にも目処がついたのです。細部に妥協なく形状も細かく見直し、仕上げも含めて長年温めてきた『ファーストラン』をやっと紹介することができて本当に嬉しい」(トゥーロン)
競合他社パターの製法・素材・作業工程・マシン性能・仕上げの選定工場などを知り抜く男は、「マシンタイム」という、作り手側ならではの特殊な事情を明かす。そして、他社のどのパターか明かさないが「長時間ミルドは手作業の仕上げ研磨と違う緻密さで、美しさや輝きなど細部に違いが出る」と胸を張る。
オデッセイ時代に息子と始めた“アート級”の『スモールバッチ』とは違い、今作『ファーストラン』は、オーソドックスで飽きが来ず、目の肥えたゴルファーのド真ん中。引き算のデザインと、長時間ミルドの証明である金属のヘアラインやミルド痕を敢えて残した仕上げは、たしかに涎が出そうなほど美しい。
『ALCATRAZ』が米国で大人気に!
また「この色に辿り着くのに3年以上もかかった」と言う特殊なチョコレート仕上げは、透明感と艷やかさがオデッセイ時代とは大違いで、光の当たり方で表情が豊かに変化する。刻印ロゴも小さく、ボディ全体の柔らかな曲面に色合いがマッチし、他の削り出しとは一線を画している。
米国では既に発売しており、大型マレットの『ALCATRAZ』が大人気だとか。「形が何かに似て見えるからかな?」といたずらっぽく笑うが、構えるとオデッセイ『JAILBIRD』にソックリ。やや引き締まって見えるが、キャロウェイ独立後も良好な関係を継続し「お互いの強みを活かして協力し合う関係」だと言う。
トゥーロン本人はアライメントの“ドット”が好みで『AUSTIN』がお気に入り。フルミルドパターでありながらも“柔らかな曲線”にこだわり、どこか古き良き6、70年代のアメ車に近い雰囲気や色使いの作風は「たしかにボクは無類のカーマニアだし、クラシックカーも大好きだから影響は否めない。でも、ボクの根っこは、熱狂的なゴルファーなんだ」と笑う。
「ゴルファーって不思議なもので、本当に美しいパターなら自信を持って打てるでしょう?それでいて、最近速くなってきたグリーンにも対応して、浅いフェースミーリングの採用で音や打感など、繊細なタッチの出しやすさにもこだわった。口径を出来るだけ小さくした、可変ソールウェイトで好みの振り心地も調整できるよ」
“替えが効かない1本”の予感
茶色いカラーのボディに、ヘリテージグリーン&クリーム色の控えめなロゴと、どこか懐かしさと最先端が同居する『ファーストラン』。不思議なことに初見の新作なのに、手にするとなぜかゴルフにハマった昔を想い出す。何十本と消費してきたモノと違い、使うほどに風合いが深まりそうで「コレは時代は関係なく“替えの効かない”1本になりそう…」と、ゴルファーの本能が騒ぐ。
記者はオデッセイ時代の『トゥーロン サンディエゴ』の初期作をカスタムオーダーし、納期4週間・約10万円で購入したものをエースとして長く使用してきたが、それと比べても美しさが段違いだ。透明感ある新色と控えめなロゴ、長く愛でたくなる佇まいに正直、一目惚れしてしまった。
写真や文章でだけで、その美しさを表現しきれないのが力量不足で悔しいが、360度どの角度から見ても絵になる新作を、ぜひ、あなたの“肉眼”で確認してほしい。初見でも「あぁ、これは“終の一本”になりそうだな…」と、感じる人は多いはずだ。(編集部M・K)
※ 取扱店はDouble Eagle、PGA TOUR SUPERSTORE、ヴィクトリアゴルフの一部店舗にて(税込132,000円)※ 4月発売商品の入荷については取扱店へ問い合わせのこと