マッスルバックは難しい!?【QPのギアマニュアル】
クラブフィッターとしてアマチュアゴルファーと向き合っている、QPことプロゴルファー関雅史が最新のギアマニュアルを紹介する。今回はマッスルバックアイアンのお話。
配信日時:2023年11月27日 02時36分
先日も日本に帰ってきてプレーする雄姿を見せてくれた松山英樹選手は、世界屈指のアイアン巧者です。その手に握るのはマッスルバックですよね。フラットバックともいわれますが、いわゆるプロや上級者が好む形状です。そりゃそうだと思っていましたが、あることに気が付きました。
松山選手といえば、ドライバーはいわゆる難しいモデルは使いません。プロ入り当初からしばらくはスリクソン〈ZR30〉を使っていましたが、その後は契約外ですが外資系に手を出し、今はスリクソン〈ZX5 MkⅡ〉というヘッド体積が大きくて寛容性の高い、いわゆるやさしいといわれるモデルを好んで選んでいます。
あれだけ芯に当てるのがうまい選手がドライバーはやさしいモデルを好んでいます。マッスルバックも、やっぱり〝やさしい〟と感じているからだと思います。
前回、〝やさしいクラブ〟についてお話させていただきましたが、松山プロにとって、マッスルバックは求めるニーズに合っていて、やさしいアイアンなんです。マッスルバックの特長でもある、圧倒的にスピン量が増えることで、縦距離や横の曲げ幅を含めて、スピンコントロールしやすいからだと思います。
マスターズを開催するオーガスタナショナルGCは、グリーンにピンポイントにスピン量多めで落とすことでチャンスにつけられます。そこを見据えて使い続けていたのだと思います。
ミスヒットに強いアイアンは曲げたいときに思ったような曲がり幅は打てないもの。曲げてコントロールしたいときに、その球が打てるからこそ〝やさしい〟と感じているのでしょう。
ただ、松山選手が1970年代とか昔のマッスルバックを使うかというと、それはないと思います。なぜ使わないかというと、今のマッスルバックは、すごくいい進化をしています。一見、ただの鉄の塊に見えますが、重心位置の調整などがされていて、やさしくなっています。
昔はネックの重量が多くて、重心点でいうとかなりネックに寄っていましたが、モデルによってはヘッド内部に別素材を入れることで重心位置を調整し、芯に当てやすくなりました。他の形状に比べて重心距離が短く、もともと芯に当てやすいマッスルバックですが、芯に当てやすくなったことでよりスピンが入りやすく、ボールを拾いやすくなったのです。昔に比べるとかなりやさしくなっています。
スピン量が増えるってことは、浮力がつくのでボールが上がりやすくなります。ドライバーのヘッドスピード40 m/s以上ある人は、6番アイアンぐらいまでなら十分に使えると思います。
ただ、うまく使いこなすためには、インパクトでボールを押せることがポイント。スイングで押せない人は、道具を工夫することでも可能です。マッスルバックはもともとヘッドが重いので、押しやすくなりますが、シャフトをしならせることで同じ効果を得られます。たとえば、80~90グラムのスチールシャフトを挿して、D2以上のヘッドバランスが出るようにすると効果的です。
やっぱり、マッスルバックアイアンは、クラシカルな見た目でかっこいいですよね。プロや上級者が使う難しい印象があると思いますが、進化しているだけに、工夫をすれば「かっこいい」を手に入れることができると思います。
関雅史(せき・まさし)/1974年生まれ、東京都出身。PGA公認A級ティーチングプロの資格を持ち、クラブフィッティングも行う。東京・駒込のゴルフスタジオ「ゴルフフィールズ」で活動。
QPのギアマニュアル