自分のピッチングウェッジのロフト、知ってますか?【QPのギアマニュアル】
クラブフィッターとしてアマチュアゴルファーと向き合っている、QPことプロゴルファー関雅史が最新のギアマニュアルを紹介する。今回はピッチングウェッジのお話。
配信日時:2023年9月20日 08時12分
アマチュアの方から100ヤード以内のショットのコツをよく聞かれます。短い番手で打てるので、できれば1ピン以内に寄せたいですよね。まず、自分のウェッジのフルショットのキャリーの距離を知ることが大切です。そして、フルショットでは大きい状況ではスリークォータースイングやハーフスイングで5~10ヤードほど飛距離を落とすコントロールショットで距離を合わせます。しかし、コントロールショットを身につけていても、最近はPWに落とし穴があり、うまく縦の距離を合わせられないケースがあります。昨今のアイアンは、上級者向けのマッスルバックから飛距離性能を重視したモデルと、ラインナップが豊富です。同じPWでもモデルによってロフト角は大きく違います。
20年ほど前のPWのロフト角といえば48度ぐらいが一般的でした。しかし、徐々にロフトが立つモデルが増えて、現在は42~43度が一般的です。PWというより昔の9番アイアンといえます。
ちなみに最近の市販されているモデルで最も寝ているのは47度で、最も立っているのは37度です。同じ見た目のPWでも、その差は10度もあります。「PWが飛ぶぶんにはいいだろう」と思う方もいるでしょう。クラブ単体で見れば、その考えも間違いではありません。しかし、その下のウェッジとのつながりがゴルフを難しくしてしまいます。
一般的なアイアンは、クラブが短くなるにつれてロフトを4度寝かせています。クラブの長さ、重量、ロフトなどを調整して同じ力感で振って飛距離差が出るように設計されています。いわゆる飛距離の階段ですね。アマチュアの方のPWの下のウェッジで、よく見るのは52度、58度です。この組み合わせは、ツアープロに多く見られ、アマチュアにも浸透したといわれています。この組み合わせが生み出されたころのPWは、47~48度でした。ロフトピッチがアイアンの4度とそろうため、52度になることが多かったのです。サンドウェッジが56度ではなく58度が主流になったのは、シビアなシチュエーションでロブショットなどテクニカルなアプローチをするのに便利だからです。
52度、58度の2本のウェッジを使っている方が飛び系アイアンを使うと、PWと52度のロフトの差が15度ということも起こります。こうなるとフルショットしたときにPWで120ヤード、52度のウェッジで80~90ヤードと30ヤード以上の差が出てしまいます。30ヤードの距離をコントロールするのは難しいですよね。
プロ仕様のクラブでもロフトが立っているので、48度のウェッジを入れたり、52度を50度に変えるプロも増えています。PWを含めて4本という選手も少なくありません。自分が使うPWが43度なら、52度の上に47~48度のウェッジを入れたり、PWが40度なら44~45度を入れて52度を50度にするなど考えてみましょう。アイアンのロフトピッチに沿う形でウェッジを考えると、フルショット時の飛距離の差がほぼ均等になり、コントロールも計算しやすくなります。
100ヤード前後の距離で縦の距離感が合わないと感じていたら、メーカーのウェブサイトなどでPWのロフト角をチェックし、その下のウェッジの構成を考えてみてください。流行に乗って52度、58度という選び方はやめましょう。クラブをきっちりそろえることで自分のやるべきことがシンプルになり、上達スピードは早まります。
ただし、ウェッジにこだわりを持つ方もいると思います。例えば50度のウェッジだったら、100ヤード前後はすべてこなせるなど。ウェッジは自分の手のひらのように、思いどおりにボールを打てるものだったら、その感覚は大切にしたいところ。手になじんだウェッジを中心に、下からアイアンのロフト設定を考えるのも、一つの手です。
また、最後にもうひとつ注意点が。昨今の単品ウェッジはスピン性能を重視しているため、昔のウェッジと比べて飛距離が出にくい傾向にあります。反対に飛び系アイアンのPWは飛距離を追求したモデルの流れで設計されているので飛距離が出やすくなっています。この飛ぶPWと飛ばないウェッジ2本のロフトピッチを均等にしたからといって、そのまま飛距離も均等になる可能性は低いです。そういった場合は少しロフトの立ったウェッジを選ぶと調整しやすいです。
皆さん、こうしたことに留意してセットのアイアンやウェッジを選んでみてください。
QPのギアマニュアル