芯太設計で当たりが厚い! “ゲームチェンジャー”こと、グラファイトデザイン『TOUR AD GC』を【打ってみた】
グラファイトデザインの最新作を【打ってみた!】
配信日時:2024年8月6日 02時39分
5日、千葉市内の会員制サロン「クラブハウス」にて、グラファイトデザインの新製品発表&試打会が行われた。既報の通り、ウッド用シャフト『TOUR AD GC』(税込46,200円)と、ハイブリッド用の『TOUR AD VF HYBRID』(税込26,400円)がこの夏発売予定だが、『GC』はどんな背景から生まれたのか。同社のツアー担当を長く務め、現在企画担当でトップアマの高橋雅也氏がこう話しだす。
■石川遼が即投入2位➡優勝の話題作
「弾道計測器の利用がプロ・アマで一般化し、データで弱点を把握しやすく若い選手を中心にどんどん飛距離が伸びています。これは男子だけでなく女子選手も同様で、インパクトロスを防ぐ方法を選手自ら把握し、フィジカルもスイングも進化してきたため、我々も時代に合う“ニュートラル”を再考し直しました。潰れやネジレを抑えた結果、生まれたのが【ゲームチェンジャー】の頭文字を取った『TOUR AD GC』です。
既に男子ツアーでも多くの選手が使用していますが、中でも『ツアー選手権』の宍戸から即投入した石川遼プロが『右へのファールが出づらく球がネジレない』と気に入ってくれ、いきなり2位、その後優勝しています。また、『DI』ユーザーの松山英樹プロも『白いと速く振れそう』と石川プロと同じ感想を話してくれて、松山プロの感触では少し棒っぽく感じたのか『ハザーダスみたい』と話していました」(高橋氏)
ポジショニングマップでは『PT』同様中調子のど真ん中で、ややフェード寄りに位置する『GC』だが、シャフト設計の心臓部である「芯金」の設計に【超スローテーパー】とも呼べる大幅な変更を加えた。世に高MOIヘッドが増える一方で、8.5㍉のチップ径は変えられない中で、先端~中間部はできる限り“芯太”にして剛性を上げ、中間部~手元部にかけてはフープ外層に【AD SHIELD】と呼ぶ補強を加え“つぶれ”と“ネジレ”を防ぐ新・硬度設計を施し、現代の“ど真ん中”を再定義した意欲作だ。
■6Sの振動数が16cpm↑もしなり量は同じ!?
同社は動作解析『GEARS』も用いて、スイング中の各部のしなりやネジレを測定し、あるJGTOツアー選手のテストデータを例に、『GC』の利点を説明する。中調子・先調子・元調子の別シャフトと比較して、『GC』は特に初動と切り返しでネジレが少ないデータが出ており、結果、ボールスピードとミート率が上がり、スピン軸の傾きが別シャフトより減少する傾向を示したとか。
気になる数字も公開し「6Sの振動数は『PT』や『DI』は265cpmですが『GC』は281cpmになります」。振動数を基準にする人は「同じ6Sなのに16cpmも上げたの!?」と驚くはずだが、『GEARS』測定のしなり量では他シャフトと差がなかったとか。同社が「数字ではなく打ったフィールでご判断頂きたい」と言う通り、これだけ剛性を上げても「滑らかなしなりを感じるはず」。実際『GC』を投入して10戦を重ねた、岸部桃子も絶賛する1人だ。
「以前は『VF』で右に滑る球が出たりしていましたが、『GC』に替えてから、つかまったフェードですごくランが増えていて、すごく効率よく飛ばせるんです。『VF』と同じ『5S』でもすごく硬いとかじゃなく、より体全体を使って思い切り振っていっても大丈夫というか。素直でクセがなくフェードなのにランが10ydくらい増えたので、FWにも入れようと思って今日はテストしに来ました」(岸部)
■トラックマンが甘い!? 1球目から困惑
実際、岸部はHS42m/sでキャリー220yd前後だが、ラン込みだと260ydを越すライナーフェードを連発して驚く。『TOUR AD UB-6S』を使う記者(HS48m/sのローフェーダー)もエース1Wと同じ『TSR2』(10.0)で岸部が見守る中、『GC-5S』の試打を開始すると、1球目で衝撃が。HS46.9m/s、BS69.7m/s、キャリー271.5yd、300.7ydの表示に「嘘でしょ、トラックマン設定が甘すぎない?」と目を疑った。
1球目が衝撃すぎて、余計に力んだ2~4発はミスを繰り返したため、自分のフレックスの『6S』に切り替えたが、ここからさらに打つ度に数字が上がっていくことに驚く。305.5yd(フェード)➡307.1yd(フェード)➡303.0yd(ドロー)を打ったところで、改めて高橋氏に「なぜ、こんなにロスが少ないの?」と聞くと、こんなこぼれ話も。
「優勝して好調の岩田寛プロに『GC』をテストしてもらったんですが、初速などデータ的に明らかに上がったので『使うかな?』と思ったら『やめときます』と。理由は【振れば振るほど飛んでしまうので、振り過ぎてしまって他とバランスが壊れて危険】だと。私も彼と同感でしたが、アマチュアの場合はプロと違って飛ばすことは楽しみを増やすことなので、私自身はタイトリスト『GT』×『GC』という組み合わせで、この秋飛ばしを狙ってみようかなと。(笑)あと、今回の『GC』は選手みなが1WとFWをセットで要望する点も印象的ですね」(高橋氏)
■横田英治「フェードでも飛ぶ」
岩田のこぼれ話と岸部の「体全体で一気に振り切る」との表現が、記者のフィールとも繋がる。『GC』は振動数が16cpmも上がったため、負荷をかけずにサラッと振ると自分の『UB-6S』より硬さを感じるが、出力を上げた途端に滑らかなしなりと追従性に変化するのが心地よすぎてクセになる。何より、打点を微妙に外してもドーンとシャフトの強さでお構いなしに押し切ってしまう“GC特有の当たりの厚さ”が魅力的。復元は遅すぎず速すぎず、昨年の『VF』と違って、いい意味で「何も余計なことをしない」「部材感もない」シンプルな動きも新鮮だ。
『GC』の性能のせいか、トラックマン設定のせいか不明だが、3~5㍉上下左右に打点を外したのにミート率「1.50」以上が出続けて「本当に記者の球?」と、困惑が止まらない。確認のため「アンダースペックの『5R1』で強振すればド右でミート率も下がるはず」と考え、この日一番乱暴なハードヒットを試みた。が、フェースが軌道より2.3度開いて50ydも右に遅れたが、BSは74.2m/sで記者のトラックマン試打最長の317.6ydが表示され、驚きを通り越して呆れた。(ミート率はやはり1.53)アンダースペックでも、芯太設計は相当強そうだ。
横田英治プロのコメントとも、妙に重なる試打体験だった。「グラファイトデザインさんでは珍しくグリップ部分はちょっと太めに感じるんだけど、振るとフェードなのに低スピンで凄い飛ぶのよ。当初は石川遼プロや上田桃子プロの使用が目立っていて、『ドローヒッター向きかな?』と思ったけど、岸部もボクもフェードヒッターが距離を伸ばせるのが嬉しい。『GC』を打つと、今の海外の強い選手の最先端というか、長いドライバーはフェードで、短いアイアンは薄いドローという今風のプレースタイルと重なってくるんだよね」。(編集部M・K)