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    テーラーメイド『Qi10』シリーズは、なぜいきなり1万越えのMOIを実現できたのか

    1月10日、ついに正式発表された、テーラーメイド『Qi10』シリーズ。これまで、未発表段階の昨年から同作を追い続けてきたALBA.net編集部が、その革新性を掘り下げたい。

    所属 ALBA Net編集部
    ALBA Net編集部 / ALBA Net

    配信日時:2024年1月24日 05時20分

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    • テーラーメイドのドライバー史は、ここ4年は【スピード】で始まり【寛容性】の2が出るサイクル
    • PGAツアー開幕戦「ザ・セントリー」から『Qi10 MAX』ドライバーを投入した、コリン・モリカワ(GettyImages)
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    1W設計は、何か求めると何かを失う“トレードオフ”の関係

    テーラーメイドのドライバー史は、ここ4年は【スピード】で始まり【寛容性】の2が出るサイクル

    テーラーメイドのドライバー史は、ここ4年は【スピード】で始まり【寛容性】の2が出るサイクル

    「飛んで曲がらない」ドライバーは永遠のテーマ。飛ばしにいくと曲がり、安全にいくと飛ばなくて、両立できずゴルファーは悩んできた。これは、ドライバーの設計も似ているかもしれない。ミスしてもブレない【高MOI】を追求すると、減速やスピン過多で【飛び】も失われがちだった。
     
    テーラーメイドはアルミフレーム構造にした21年の『SIM2』を機に、Inertia(慣性モーメント)を追求し、ここ2年でカーボンウッドを掲げ、素材から大変革。22年の『ステルス』から60層カーボンフェースを採用、ヘッドの約半分の重量を占めていたフェースの軽量化で圧倒的な設計自由度を手にした
     
    23年の『ステルス2』では、『SIM2』でアルミ製だったフレームをカーボン製に。さらに設計自由度が増し【スピード】追求の『ステルス』に【寛容性】を加えた。テーラーメイドのドライバーは、まず【スピード】追求の初代が出て、次に【寛容性】を加えたやさしい“2”が出るサイクルが多かった。
     
    『Qi10 MAX』で、スピードと寛容性を両立!

    迎えた2024年。『ステルス』➡『ステルス2』と続いたカーボンウッドの第3弾は、『ステルス3』ではなく『Qi10』へ一新。名前の由来は「The quest for 10,000 inertia(1万MOIの探究)」で、次世代慣性モーメント(MOI)の追求にシフトした。
     
    左右のMOIを大きくするため、重心距離を長くすると=つかまらない。上下+左右MOIを大きくするため、後ろに長い深重心で重ヘッドにすると、スピンが増えて空力が悪化し、ヘッドスピードも下がる。このトレードオフの難題に、同社は軽いカーボンと金属を置き換え、効果的に重量配分することで挑んだ。
     
    カーボンウッドの初代『ステルス』が出たとき、同社は「今後発売するフラッグシップは、全てカーボンウッドになる」と宣言したが、その意味はコレだったのか!と振り返る人もいるだろう。当時から『Qi10』への道筋を描いていたはずだ。
     
    カーボンウッドだから難題を解決

    従来作はアドレス時にクラウンの金属部が目立ったが、今回は【インフィニティカーボンクラウン】で97%を覆う形に。そして『Qi10 MAX』後ろに8㍉『Qi10』は4㍉大型化した。カーボンに置き換えた余剰重量を効果的に配置することで、これまで最も寛容性の高かった8600g/cm²の『ステルス2HD』より『Qi10 MAX』16%も上下+左右MOIを高め、ついに【10K=10,000g/cm²】を突破した。
     
    寛容性だけでなく、ボール初速もフェースの広範囲で引き上げた。第3世代となる60層カーボンツイストフェースと新開発フレームでエネルギー伝達効率が増し、初速も+0.7mphとなる。今作はヘッドも重過ぎないため俊敏に振れ、10KのMOIで深重心にもかかわらず、フェース面上の重心位置も抑えてスピン量も増えすぎない。『Qi10 MAX』で、ついに【スピード】と【寛容性】のトレードオフに終止符を打ったと言えるのだ。

    PGAツアー開幕戦「ザ・セントリー」から『Qi10 MAX』ドライバーを投入した、コリン・モリカワ(GettyImages)

    PGAツアー開幕戦「ザ・セントリー」から『Qi10 MAX』ドライバーを投入した、コリン・モリカワ(GettyImages)

    この性能を顕著に証明するのが、メジャー覇者のコリン・モリカワ『Qi10 MAX』への移行だろう。元々小ぶりで低スピンな2020年の『SIM』ドライバーを替えられなかった男が、なぜ【10Kにシフト】できたのか? ハワイで行われたアディダスのイベントで本人を直撃した。
     
    「球がまとまるしシャローな見た目も◎」

    「やっぱりボールの散らばりが減ることが決め手だね。すごく球がまとまる点が、本当に安心感につながってる。ボクはフェードヒッターだから、ミスする時は右に行きすぎてしまうのが結構あるミスなんだけど、それを抑えてくれるのが『Qi10 MAX』なんだ。
     
    ナイスショットした時は、どんなレベルのゴルファーでもどこに飛ぶか分かるけど、ミスした時にどこに行くか分からないのが最もツアーで危険なこと。これなら、ミスした時にどこまで行くかかなり軽減される。だから『Qi10 MAX』なんだ」(コリン・モリカワ)
     
    約4年近く使った『SIM』と顔やサイズが違うのに替えた理由は、やはり10Kの寛容性。それもそのはず、下記のスロー動画で分かる通り、10Kと10Kではないモノは、トウに約2cm打点を外した時のヘッドの軌道が大違いだ。

    「ボクは構えた時にシャローなフェースが好きで、『Qi10』『Qi10 LS』は少しディープに見えるかな。『Qi10 MAX』も『SIM』と比べると別にシャローじゃないんだけど、後ろまですごく長くて大きいから、視覚的にシャローに見えて使えるんだ。最初は慣れなかったけど使う内に結果もついてきて、後ろまで大きい所も安心感につながってるね。
     
    音とフィーリングは、過去一番と言っていいくらい。一般にミスヒットすると音が悪くなるものだから、個人的にはセンターヒットした時の打球音をすごく重視してるんだ。少し重いような、あまり高くないような音というか、重い音がボクの好みだね」(コリン・モリカワ)
     
    フェードヒッターのコリン以外にも、ヘッドスピードの速い飛ばし屋のネリー・コルダも実戦投入。彼女はドロ―ヒッターだが、より散らばりを減らせる『Qi10 MAX』はヘッドスピードが遅くミスヒットの多い一般アマチュアからハードヒッターのプロまで、幅広く好まれることが分かる。
     
    バランス型の『Qi10』、空力を増した『Qi10 LS』

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    真ん中のモデル『Qi10』は、前述の通り『ステルス2』より後ろに4㍉長くなり、見た目に安心感を増したバランス型のヘッドで、MOIも前作比5%アップしている。通常なら、その分スピン量が上がりそうなものだが、『ステルス2』よりも低スピンになっている。
     
    国内男子ツアーで昨年初勝利した飛ばし屋の岩崎亜久竜や欧州で飛躍した久常涼の2人は『Qi10』がお気に入り。岩崎は「構えた時の安心感がって、自分はけっこう上がらなくて右滑りが多いんですけど、『Qi10』は球が上がりやすくてつかまりやすい。つかまったドローが打ちやすい」と絶賛。

    久常も「本当に優しくなっています。ミスヒットにももちろん強いし、やっぱり平均距離が伸びてるっていう実感があります。やっぱりその辺はすごく感じますね。ミスヒットの時にカバーするというか、ミスのこの差(曲がり幅)やムラが減って平均的に距離が伸びている」と好感触だ。その他、先週の欧州ツアー開幕戦でローリー・マキロイも『Qi10』へ移行し豪打を見せている。

    トミー・フリートウッドタイガー・ウッズスコッティ・シェフラーらチーム・テーラーメイドの海外選手がこぞって昨年末から実戦投入したのが、低スピンな『Qi10 LS』だ。今作はフロントウェイトが18gになり、さらにその一部をカーボンソールパネルで被せたデザインを採用している。

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    理由は、ヘッドが加速する際にヒール側からトウに向けて流れる空力を改善するため。『ステルス2プラス』とMOIはほぼ同等だが、欧州開幕戦で昨季平均300.34ydだったフリートウッドが、平均313.5ydをマークして優勝するなど、その飛距離アップは明らかだ。
     
    これら『Qi10』シリーズドライバーは3機種体制で、カスタムシャフトのアップチャージが1万円と、円高対応も嬉しいところ。FWとレスキューも『Qi10 MAX』『Qi10』『Qi10 TOUR』の3機種を用意、『Qi』アイアンも2月2日発売だが、ドライバーを識者にチェックしてもらった。

    Qi10 MAX以上のヘッドはない!」

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    テストしたのは、『ステルス』や『ステルス2』シリーズのドライバーを数百本売りまくってきた、吉川仁プロ。トラックマン4やGCクワッド、動作解析GEARSなどを組み合わせ、シャフトの剛性分布も用いる精密なフィッティングが得意だが、Qi10 MAX以上のドライバーなんてないのでは?」と、冒頭から話す。

    「やさしい高MOIドライバーは他社にもありますが、『Qi10 MAX』はカーボンウッドでしか出せない性能だと断言できますね。上下左右MOIが1万を越えた点でも明らかですが、上下左右に打点をかなり外しても目標に球が残り、何よりも高MOIにありがちなスピン量や打出し角が増えすぎず、ロスなく飛ばせる

    深重心な高MOIはお尻が垂れやすく、ロフトが付いてスピンも入って強く前に押せないけど、ほぼカーボン製の『Qi10 MAX』だけは別。今までのテーラーメイドにも、他社にも無かった高MOIで、真っすぐ構えた後は、フェース開閉せず小細工も入らず、ドーンと真っすぐ球を目標に運べます。ラク過ぎるでしょ!」

    試打した3本ともロフト10.5°で、それぞれの純正シャフト『Diamana BLUE TM50』と『Diamana SILVER TM50』のフレックスSを打ってもらったが、『Qi10』『Qi10 LS』の印象はどうか?

    「スタンダードな『Qi10』『Qi10 MAX』と同じ純正シャフト『BLUE 』でネジレのないストレート球が連発しました。『Qi10』はやや後ろに長い洋ナシ形状で、『ステルス』や『ステルス2』だった人も違和感なく移行でき、低スピンでロスなく飛ばせる感が増して、ほどよく開閉や操作もしたい人向けに感じますね。

    『Qi10 LS』は、『ステルス+』『ステルス2+』を使うヘッドスピードの速い人が、より低スピンで左を避けながら、とにかく強弾道でロスなくぶっ飛ばせる印象。打感はソフトなのに初速も速く、今までの『+』より散らばりが抑えらたのは、純正シャフト『SILVER』の仕上がりが秀逸さもありますね。カスタムが不要なほど完成度が高いです」

    長くなったが、次回は吉川プロに前作との比較試打および、もっと詳細に『Qi10』シリーズの魅力をお伝えしよう。

    取材協力/4Plus Fitting Labo & Golf Salon

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