「ラップ構造のBOA」 搭載がゴルフシューズの最先端
シーズン毎に新しいゴルフシューズが登場するように、BOAフィットシステムもバージョンアップを続けている。そして旬といえるのが「ラップ構造のBOAフィットシステム」。今、あなたがはいているシューズよりも高いパフォーマンスをきっと期待できる。
配信日時:2024年5月17日 03時00分
クラブばかりでなくゴルフシューズも日に日に進化を続け、新たな機能を備えた注目のモデルが登場すると、ついつい気になってしまうのがゴルファーのマインド。このところ人気は、軽くて、足への負担が少なく、しかもリーズナブルなスパイクレスに偏りがちだが、ソールの鋲への信頼感を捨てがたいアスリート志向のゴルファーから、熱い視線を集めているスパイクシューズがある。
それがラップ構造のBOAフィットシステムを搭載したアディダスの『TOUR360 24 BOA』、フットジョイの『TOUR ALPHA(Triple BOA)』、ニューバランスの『UGB2500』だという。そう話してくれたのはヴィクトリアゴルフ六本木ヒルズ店の店長である舘山翔一さんだ。
今回、舘山さんにそれぞれのモデルのどこがゴルファーたちを唸らせているのか、そして3モデルに共通するキモといえるラップ構造のBOAフィットシステムが、それぞれのシューズで果たしている役割を教えてもらった。
地面を感じやすく、悪条件でもしっかりとグリップする 『TOUR360 24 BOA』
アディダスを代表するスパイクシューズである“ZG23”の安定構造と、スパイクレスシューズのベストセラー“コードカオス”の快適性能という、異なるもち味を1足の中で巧みに融合させたのがこの『TOUR360 24 BOA』だ。
『TOUR360 24 BOA』のもっとも大きな特徴が、ソールの土踏まず部分に配された“トルションブリッジ”。空間をはさんで上部と下部に分かれた独特な2ピース構造となっている。上部は足をサポートするために硬い素材を、地面に触れる下部は柔らかな素材を用いている。舘山さんはこんな経験を話してくれた。
「林に打ち込んでしまったとき、ボールは打てそうなのに、露出した木の根の上でアドレスをとらなくてはならないことがありますよね。フツーのシューズだとアドレスが不安定になるのですが、『TOUR360 24 BOA』なら、木の根の上に立つと“トルションブリッジ”がグニュっと曲がるのです。土踏まずが沈んで、ソールが木の根に巻きつくかのような感覚で、ソール全体がピタっとつくように感じるので、ストレスなくショットが打てます」
さらにソールの前足部分には高反発の“LIGHTSTRIKE”を搭載。スイングするときの強い蹴りをしっかりとサポートしながら、潰れすぎることがないため、足元はブレることがない。一方ソールのカカト部分には“JETBOOST”が用いられ、おなじみの“BOOST”ならではのソフトなクッション性を保ちつつ、スイング時のように強い力が加わったときには、これまでの“BOOST”にはない安定感をもたらしてくれる。
「このシューズはソールの硬い、柔らかいが1足の中でうまく組み合わさっていることが、はいてみるとよくわかります。ソールの柔らかさを実感できるのはグリーン。地面の感覚を足裏でダイレクトに感じ取れるので、グリーンの傾斜などが読みやすくなります。また傾斜地でのショットでは、硬さがあることで地面をしっかりとキャッチしてくれますね」
飛びとパワーにこだわった 『TOUR ALPHA(Triple BOA)』
フットジョイの『TOUR ALPHA(Triple BOA)』は一連のスイング動作の中で、シューズがどのように作用することが、ゴルファーにとっては最適なのかを徹底的に分析。そして生まれたのが圧倒的な安定性とフィット感だ。シューズのズレやブレを押さえて、パワーを無駄なくボールに伝えることができるツアーパフォーマンスシューズだ。
それを支えているのが“アルファトラクションアウトソール”。接地性を最大限に向上させるために、左右に幅広く配された9つの鋲が、スイングするとき、歩くときを問わず、優れたグリップ力と抜群の安定感を発揮する。
「このシューズのアドバンテージはなんといってもグリップ力です。ソールには全部で9つの鋲がついています。シューズを真上から見ると、それらの鋲がアッパーから外に向かって張り出すように配置されているのがわかるはず。こうして接地面積をより広げることで、しっかりと体重を支え、さらにテイクバックのときは右足の側面、フォーローのときは左足の側面に“壁”を作ることにも大いに役立ちます」
土台の上にしっかりと乗って、どんなライでも安定したスイングできる。しかも歩行するときにもこのグリップは頼りになるのだが、このシューズの構造はよりショットに重点が置かれていると舘山さんには映るようだ。
「ソールが平らですよね。ベタ足に近い感覚です。接地面積を広げる9つの鋲が噛むことで、悪条件のライでも、練習場のマットの上でスイングしているような感覚で打てるのが心強いですね」
スパイク+スパイクレスの二重のグリップでサポートする 『UGB2500』
ニューバランスの上級者向けシューズ『UGB2500』がバージョンアップしたモデル。18ホールを歩いても高い快適性を保ち続ける独自のミッドソール“FRESH FOAM X”、さらにアウトソールにはTPUパーツを搭載して、クッション性と安定性がバランスよく向上している。
特に“FRESH FOAM X”はニューバランスのランニングシューズなどにも広く採用されており、そのクッション性の高さはよく語られるが、このシューズの真価はグリップ力に現れられているのではと舘山さんは分析する。
「スパイクシューズのグリップというと、ソールを支える鋲をイメージしがち。でも鋲がない部分のソールも実は重要なのです。柔らかな芝の上に立つと体重でシューズは沈みます。そのため鋲はもちろん芝を噛むのですが、鋲がない部分も芝に接地するわけです。そこでどれだけグリップをサポートできるのか。スパイクシューズのグリップ力とは鋲と鋲がない部分をトータルで考えなくてはなりません」
『UGB2500』の鋲のついていないソール部分に触れると、その柔らかさに驚いてしまう。さらにソールの凹凸もグリップを考えて、高さや形状に変化がつけられている。そのため滑りやすい薄い芝でも安定し、接地部分全体がピタっと吸いつくような感覚でプレーすることができる。
「芝をしっかりと掴むスパイクレスのソールに、さらに鋲をつけたような感覚でしょうか。グリップ力が一段と増しているように思えますね。あとベロが動くようになり、前作よりも足入れが改良されて、脱ぎはきがしやすくなったのもポイントです」
ここまで今注目を集めるスパイクシューズ3足の推しポイントを紹介してもらった。だがこれらのシューズの長所は、3足に共通するBOAフィットシステムの存在をなくしては語れないと舘山さんは言う。
それぞれの高性能を支えているのはラップ構造のBOAフィットシステム
ゴルフシューズに搭載されているBOAフィットシステムについては、すでに体験済みのゴルファーも多いはず。ダイヤルをカリカリまわすことでベストなホールド感を生み、足とシューズが一体化するBOAフィットシステムは、すでにゴルファーの足元のスタンダードとなっている。
この3足が採用しているのがラップ構造のBOAフィットシステム。各ブランドでその名称や構造は異なるものの、甲の部分を包み込むようにおおうカバー(ラップ)で、足の内側から外側に向かって締めていくというコンセプトは同じだ。これはBOAテクノロジー社の生体力学研究から導き出された“パフォーマンスフィットラップ構造”というコンセプトで、あらゆるパフォーマンススポーツに有効な構造として提唱されている。
このラップ構造の最大の特徴は、セパレートされたラップによって、人それぞれに異なる甲の高さ(低さ)に合わせたホールド感を得ることができること。つまりフィット感のカスタマイズができるのだ。さらにラップがおおう甲がしっかりとホールドされることで、シューズの中で足が遊ばなくなる。そのためカカトは固定され、ツマ先が前にズレたりしない。カカトがぐらつかず、掴んだり反らしたりといった足指の動きもスムーズに行えるため、パワーロスのない安定したショットにつながるわけだ。またツマ先側のプレッシャーが減ることで、同じコンディションを18ホール通して保つことができるというメリットもある。
そして3足それぞれにラップ構造のBOAフィットシステムをベースに独自のノウハウが加えられている。それぞれのもち味についても、引き続き舘山さんにお聞きした。
『TOUR360 24 BOA』は“360直足BOAラップ”
“360直足BOAラップ”と呼ばれるこのシステムでまず目につくのが、ファスナーのついたラップ構造をおおうカバーだ。カバーには防水性があり、止水ファスナーも採用しているため雨対策にも役立つ。そしてこのカバーがあることでラップ構造のBOAフィットシステムのフィット感をさらに繊細に調整することが可能となる。それによってより繊細に、自分が望むフィーリングに合わせることができるのだ。
「カバーのファスナーをしっかりと閉じればフィット感はアップするのですが、それがマストではありません。私はスタートしてしばらくは足が臨戦態勢に入っていないので、ファスナーを開けたままにして、それから徐々に足の張りやむくみを感じ取りながら、ファスナーを締めていくようにしています。また歩くときにはファスナーを開けるというのもいいと思います。自身のフィーリングに合わせて使い分けられるのがいいですね。ファスナーの開閉をする以前に、ラップ構造のBOAフィットシステムとしてのフィット感はすでに得られているわけですから」
ファスナーをフルオープンにすると、ラップが3枚にセパレートされているのがわかる。従来であればラップ部分は外にそのまま露出するので、ラップには合皮の防水性や耐久性が求められるのだが、カバーがあることによって、ソフトな素材でラップが作ることが可能になる。
「ラップが3枚に分かれることで、より足の甲の形に沿ってホールドすることができます。そしてラップ部分が柔らかくなっているので、甲高の人でも足入れをしやすく、ピタっとしたフィット感が得られますね。ラップ構造のBOAフィットシステムのはき心地が、よりナチュラルになっているのではないでしょうか」
硬軟を巧みに融合させたこのシューズならではのもち味は、ラップ構造のBOAフィットシステムがもたらすナチュラルなフィット感がベースとなって作り上げられている。
『TOUR ALPHA(Triple BOA)』はトリプルBOA
フットジョイならではのカカトについたダイヤルで足首まわりを後ろからホールド、さらにアッパーのサイドで2枚に分かれたラップとふたつのダイヤルによって、甲をホールドしていく。ダイヤルが3つ配置されたトリプルBOAは、現在、フットジョイのこのモデルだけだ。
「甲の前の部分、足首に近い部分で2枚に分かれたラップ。それぞれについた2つのダイヤルで締めるすることで、甲の高い人でも低い人でもそれぞれに合ったホールド感を見つけられます。甲高の人がダイヤルを締めたとき、甲のツマ先近くのラップが浮いてしまうといった心配はありません。どんな形の足でもフィット感に差が出ないように作られています。甲が高い、低いでシューズ選びに悩んでいたゴルファーには試してほしいですね」
そこに定評のカカトのBOAが加わって、3つアプローチからシューズと足を一体化していくのがトリプルBOAだ。このラップ構造のBOAフィットシステムがあってこそ、『TOUR ALPHA(Triple BOA)』は土台の上にしっかりと乗ったかのように、地面を掴むことができる。
『UGB2500』はカカトのレースが見える
同じラップ構造でもシューズの設計に落とし込む際のアプローチは各ブランドでそれぞれだ。このシューズもラップ構造を採用しているが、ラップで足の甲をホールドすると同時に、レースがカカトまでまわりこむことで、足全体をしっかりとホールドする仕組みになっている。
「ゴルフは瞬発性が求められるスポーツではないので、カカトをしっかりとホールドさせることでパフォーマンスがアップします。扱いやすいはき口近くについたダイヤルを調整することで、カカトがきっちりと締まり、さらに甲の高さに合わせてアッパーもフィットしていくのが『UGB2500』の特徴です。」
『UGB2500』の“FRESH FOAM X”のクッション性やグリップ力は、しっかりとホールドされた足元の安定感があってこそ最大限に発揮される。ラップ構造のBOAフィットシステムがそれを支えていることは言うまでもない。
さらに舘山さんはこのように付け加える。
「もっと飛ばしたいとか、安定したショットを打ちたいと思うなら、ここで紹介したラップ構造のBOAフィットシステムを採用したシューズを選んでほしいですね。ヒモのスパイクレスや従来のBOAをはいていたときと比べると、ちゃんと飛んでる感じがあって、安定感もあることを、私も実際によくわかりましたから。それに以前のような、スパイクシューズならではの突き上げもあまり感じなくなっているのもお薦めしたいポイントです」
ラップ構造ではなくてもBOAフィットシステムの恩恵は計り知れない
ここまで最近のスパイクシューズのトレンドともいえる、ラップ構造のBOAフィットシステムを搭載したシューズを紹介してきた。だがラップ構造を採用していないシューズの中にも、ゴルファーからの高い評価を集めているBOAフィットシステム対応モデルがある。そこで舘山さんが気になるモデルを聞いてみた。
「フットジョイの『PRO/SLX BOA』は長年のベストセラーで、アメリカツアーでも多くのプロが使用する実績のあるシューズです。スパイクレスなのにもの凄いグリップ力があって、ソールの土ふまずに設けられた“X-Wing”がソールの外側にエネルギーを伝達・分配します。そのためスイング時のズレに強く、“壁”を作りやすくなっているのです。BOAフィットシステムの性能を生かして、ショット向け、歩行向け、それぞれの性能がバランスよく際立っていますね」
「ニューバランスの『UGS2500』は先に紹介した『UGB2500』の鋲を外したモデルといっていいかもしれません。ソールはこの『UGS2500』のほうが少し硬めなのですが。スイングよりも歩きやすさや、足への負担を減らすことを目指したモデルですね。BOAフィットシステムのフィット感もあって、本当に楽に歩くことができますよ」
最新のBOAフィットシステムのはき心地を試しばきで実感してほしい
各店舗ではここで紹介したラップ構造のBOAフィットシステムを採用した3モデルの26.0~28.0cmのサンプル(※フットジョイのみ25.5~27.5cm)を用意したコーナーを設置。心ゆくまで試しばきをすることができる。開催期間は5月24日(金)~6月23日(日)の予定となっている。またキャンペーンを実施していないヴィクトリアゴルフ店舗でも、スタッフにモデルとサイズを伝えれば、試しばきをすることができる。
撮影/蜂谷哲実