ジョーダン・スピースがスコア誤記で失格しても、冗談交じりで松山英樹を祝福できた理由とは?
失格となったものの、松山の優勝が決まった際に「おめでとうヒデキ! スコアカードはダブルチェックするんだよ…」と自身のSNSに投稿したジョーダン・スピース。その余裕はどこから…?
配信日時:2024年3月20日 02時30分
松山英樹が優勝した「ジェネシス招待」で、スコア誤記によって失格となったジョーダン・スピース(米国)。落ち込んでいるかと思いきや、松山の優勝が決まった際には「おめでとうヒデキ! スコアカードはダブルチェックするんだよ…」と自身のSNSに投稿する切り替えの早さ。スピースのこの余裕はどこから生まれたのだろうか?
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メジャー3勝、米ツアー通算13勝のジョーダン・スピースがテキサス州ダラスの両親の元に戻ると、「天使」と呼ぶのは8歳年下の妹、エリーさんだ。極度な早産で誕生したエリーさんは、生死をさまよい、自宅に戻れたのは数カ月後。肺の発達が十分でなく“オーティズム”(発育障害)を持って家族となったエリーさんを「僕の人生で最高の出来事」と語っている。
エリーさんが生まれてから「僕たち家族にとってエリーがすべてになった」。父のショーン、母のクリスティーンはいつもエリーさんの世話にかかりっきり。野球をする弟のスティーブン、ゴルフをするようになったジョーダンの送り迎えは、父と母が交代で、あるいは周囲の人たちの多くの助けを借りることになった。スポーツの才能に恵まれたスピース一家。弟はカレッジまで野球をしたのちバスケットボールに転じ、NBAのダラス・マーベリックスのサマーリーグでプレーしている。
そんな兄弟はエリーさんの助けをすることが日常の一部となる。スピースは高校に進むとゴルフの傍らエリーさんの通う学校のクラスでボランティアを開始。“Special Needs”(特別な助けが必要)の子供たちは、「健常者が普通にできることでも、彼らにとっては困難なことがたくさんある。それは僕たちの人生に多くのことを教えてくれる。エリーは最高の存在だ」。
身近に障がいを持った人の存在があると、大きく人生観が変わるもの。「エリーは僕のゴルフにも大きな影響を与えた。ゴルフで上手くいかないことがあっても我慢できる。最も大切なことではない」と自身のゴルフの基盤となった。
2013年、米国選抜と世界選抜が戦う「プレジデンツカップ」で得た15万ドル(約2250万円)で“ジョーダン・スピース・ファミリー・ファンデーション”を設立し子供たちへの基金を開始。今も年に一度、地元ダラスでチャリティトーナメント「ジョーダン・スピース・シュートアウト」を続ける。
結婚して二児のパパとなった今も「勝てなかった3年を乗り越えられたのはエリーのおかげ。エリーがいなければ僕はどうなっていただろう」。こうしてスーパースターのジョーダンはエリーさんに支えられている。(文・武川玲子=米国在住)
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