上級者のアドバイスには耳栓 他人の細かな感覚は決して体現できない【ゴルフが整う自律神経のトリセツ】
上級者のアドバイスに従ったらアプローチがめちゃくちゃになった、ご経験はないだろうか。「特にグリーン周りは自分の感覚を信じることが大切です」と、順天堂大学医学部の小林弘幸教授。安心できるクラブを使うことが自律神経をキープする第一歩だという。
配信日時:2023年4月12日 22時30分
ラウンド同伴パートナーのハンディキャップにかかわらずゴルフは楽しいものですが、特に上級者の方とのラウンドは、自分の知らないことや技術面で参考になるお話を聞けるという楽しみがあります。
■いつもの感覚を発揮するには自身と安心が不可欠
しかし私は、アプローチショットに関するアドバイスだけは馬耳東風に聞き流しています。というのも、微妙なタッチを要求されるアプローチは自分の感覚がすべてだと思っていますし、いつもの感覚を発揮するには自信と安心が不可欠だからです。
いくら上級者の勧めるクラブを使ったりアドバイスに従ったりしたとしても、結局ボールを打つのは自分ですから、その人がイメージする細かな感覚までは決して体現できません。
それどころか自分の感覚と違うことをしていますから、違和感や不安が生じるだけです。このように交感神経が上がれば抹梢の血流が悪くなり、さらに感覚が鈍ります。
ボールを寄せられず自信をなくせば、自律神経のバランスを乱すだけでしょう。ですから「アプローチだけはうまい人のいうことを絶対信用しないぞ」と誓い、耳に蓋をしてい
るのです。
■安心感のあるクラブで自分の感覚を信じて打つ
こう考えるようになったのには理由があります。私はもともとグリーン周りのショットが得意でした。
「お上手ですね。プロと同じウェッジも使いこなせますよ」、「その打ち方なら◯度のウェッジを使えばもっとうまくなりますよ」
お世辞もあるでしょうが、上級者の方のアドバイスを聞いて何本かの新しいウェッジをそろえました。ところがコースに出てみると、先ほどいったような典型的な悪循環から自律神経を乱し、落ち着きを失ってしまったのです。
グリーン周りでことごとくザックリ、トップ。得意なバンカーショットさえダフって脱出できず、やっと出たときはトップしてグリーンオーバー。元の打ち方に戻すこともできず、9ホールだけでも普段よりプラス10打の大叩きをしてしまったのです。
落ち込んでいた私に、他の上級者の方から掛けられた言葉は意外なものでした。
「こんなに難しいウェッジはタイガーくらいしか使えませんよ。アマチュアがミスしても仕方ない」
アプローチでは、自律神経のバランスを維持するためにも自分の感覚に合うクラブを使いましょう。もし替えるならプロや上級者の意見を盲信するのではなく、むしろシンプルでやさしいものがオススメ。安心感のあるクラブと自分の感覚を信じて打つことが一番です。(文・小林弘幸 構成・野上雅子)
●小林弘幸/順天堂大学医学部教授 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
1960年生まれ、埼玉県出身。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手やアーティストのパフォーマンス向上指導にかかわる。自律神経のバランスを意識的にコントロールすることにより心身の潜在能力を最大限発揮できることを提案し、テレビ番組等で解説している。著書も多数あり、2022年12月『ゴルフが上達する自律神経72の整え方』(法研)を刊行。