おなかいっぱいはスイングを乱す 昼食は食べないほうがいいの?【ゴルフが整う自律神経のトリセツ】
前半いいスコアで回ったのに、後半はまるで別人……ということがアマチュアには多い。順天堂大学医学部の小林弘幸教授によると「ハーフターンで昼食を取ればそうなります」。鬼門ともいえる後半を乗り切るための秘訣を教えてもらおう。
配信日時:2023年4月3日 02時30分
ゴルフ場の食堂で昼食を注文するとき「自律神経を乱さないためには、何を食べればいいですか?」と聞かれることがあります。自律神経の面からいえば、メニューは関係ありません。何を食べてもいいでしょう。
ただ最近は、食材の効能や組み合わせなどに関心が高い半面、基本を忘れている方も少なくないのが気になります。
■何を食べてもいいが基本は「腹七分目」
例えば、Aさん「じゃあ、好物のうな重にします」。Bさん「私は体によい刺し身御膳セット」。Cさん「暑いからビールを飲みたいところだけど、せいろそばだけでいいや」。Dさん「私はカツカレー」――どのメニューも問題はありません。
食事を取るとエネルギーが補給されて汗をかいたり、元気になったように感じたりします。それは食物を消化するために消化管に血流が集まり、交感神経が優位になるからです。しかし、食後は副交感神経が高まって、眠くなったり体が重くなったりします。
満腹になるほど自律神経の上げ下げが大きくなりますから、波を小さくするには食べすぎないこと。「腹八分目に医者いらず」というように、自律神経を整えるのにも八分目、もっといえば七分目にとどめることが基本なのです。
■スイングを練習場で思い出してから行く
Aさんはお吸い物を少し残す、Bさんは刺し身御膳セットのミニうどんを断る、Dさんならご飯を軽くしてもらうなどの心がけが大事です。Cさんは、ビールを注文しなかったのが賢明でした。アルコールは交感神経を高めるうえ、酔いも加わってそれが下がりにくくなるからです。脱水につながる可能性もあります。
アルコールはいうに及ばず、本来プレー中の食事はスポーツパフォーマンスを高める行為とはいえません。先ほどご説明したように自分で自覚できるほど大きな自律神経のアップダウンを引き起こすからです。
体内でそれだけ変化があればスイングに影響があるのは当然。前半のスイングをまったく取り戻せないことに気持ちが焦り、集中力も流れもリズムもすべて狂ってしまうでしょう。そうならないためには、昼食を取らないスループレーがベストだと私はいつも考えています。
プライベートのラウンドなら、腹七分目に食べて時間があれば練習場へ向かいましょう。7Iと1Wで20球ほど打つとスイングをかなり思い出せます。後半9ホールがうまくいくかどうかは最初のショット次第という面もありますが、練習場を入れると実質21球目ですから、ぶっつけ本番よりミスの確率は低くなるでしょう。(文・小林弘幸 構成・野上雅子)
●小林弘幸/順天堂大学医学部教授 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
1960年生まれ、埼玉県出身。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手やアーティストのパフォーマンス向上指導にかかわる。自律神経のバランスを意識的にコントロールすることにより心身の潜在能力を最大限発揮できることを提案し、テレビ番組等で解説している。著書も多数あり、2022年12月『ゴルフが上達する自律神経72の整え方』(法研)を刊行。