キヤノンのレーザー距離計は「これまでにない」測りやすさ! 撮影機能の活用でマネジメント力も向上できる
デジタルカメラやプリンターなど、さまざまな精密機器を扱う「キヤノン」がついにゴルフ業界に参入。“写真と動画が撮れるレーザー距離計”という新しい発想の『PowerShot GOLF』はゴルファーにどんなメリットをもたらしてくれるのか? ゴルフ関連ギアに精通する2人のプロゴルファーの金谷多一郎と関雅史に『PowerShot GOLF』の性能や活用方法をチェックしてもらった。 取材協力/上総モナークカントリークラブ 撮影/角田慎太郎 構成/田辺直喜
配信日時:2024年7月16日 09時00分
レーザー距離計を活用することでコースの輪郭がはっきりと見える
光学機器メーカーのキヤノンが5月21日に発表し、7月26日からの発売を予定している新製品が『PowerShot GOLF』だ。同社がゴルファー向けに初めてリリースする製品で、“写真と動画が撮れるレーザー距離計”という製品となっている。
ここで気になるのは、「写真と動画が撮れる機能」と「レーザー距離計」という組み合わせがゴルファーにどんなメリットをもたらしてくれるのか、ということだ。そこで今回はゴルフ関連ギアに精通する2人のプロゴルファー、金谷多一郎と関雅史に『PowerShot GOLF』の性能を細かくチェックしてもらった。
金谷 ラウンドでレーザー距離計を使うゴルファーは増えましたが、セカンド地点でピンまでの距離を測るだけの人が多くて、すごくもったいないと感じています。
関 上級者になるほど、ショットを打つ前に木や池のふちなど、さまざまな地点までの距離を測りますよね。
金谷 ラウンドで距離を測る理由は、コースの輪郭、つまりレイアウトをはっきりイメージするためで、これによってショットの戦略を立てることができます。例えば上総モナークカントリークラブの10番ティイングエリアであれば、池の周囲だけでも3〜4か所は距離を測る必要があります。
金谷 私であれば、まず池を越えた先にある浮き輪までの距離を測って、ティショットで池を確実に越すために必要な距離を把握します。その上で、池がもっとも右にせり出した部分までの距離を測り、続けて池周囲に刺してある赤杭の距離を測っていきます。これによって池の奥行きやヨコ幅がイメージでき、池の形がはっきりと浮かび上がってきます。
関 池越えには打ち下ろしを加味しても278ヤードは必要と分かりますから、ティショットの狙い目はフェアウェイ中央から右サイドに絞られますね。左ドッグレッグであることを考えても、右サイドにティショットを置いた方がセカンド以降も打ちやすくなるはずです。ボクの場合、右の林までの距離も何か所か測っておきたいです。林に確実に届かない方向が分かれば、ティショットでその方向を狙っていきます。
金谷 ゴルフコースは基本的に、人間を視覚的にだますように設計されています。グリーンの距離が近いと錯覚させたり、奥行きがあるのに短く見せたり。見た目の雰囲気だけで戦略を立ててしまうと、コース設計家が仕掛けた罠にはまる可能性が高くなるわけです。だからこそ、レーザー距離計で客観的な距離の情報を得ることがとても大切になります。
関 よくラウンドするコースなら罠に気付けるかもしれませんが、初めてのコースを見た目だけでプレーするのは本当に危険ですよね。知らないコースほど、距離を細かく測って欲しいです。
『PowerShot GOLF』は距離計としての基本性能が高く、ズーム機能により距離を測定しやすい
関 レーザー距離計の性能で大切なのは、何よりレーザーの当てやすさです。ショット前の短い時間にたくさんの地点の距離を測りたいわけですから、しっかり目標物にレーザーが当たってくれないと困ってしまいます。今まで、いろいろなレーザー距離計を試してきましたが、コースでレーザーを当てにくいと感じたら2度と使わないですよ。
金谷 同感です。目標に当てにくかったり、ちゃんと当たったのか分からなかったりすると、レーザー距離計を信頼できませんね。コースマネジメントのための大事な情報を収集しているわけですから、テキパキと確実に距離を測れることは絶対条件だと言えるでしょう。
関 その点で行くと、『PowerShot GOLF』はかつてないほど、レーザーが当てやすいですよ。特に「手ブレ補正」の効き方が絶妙で、目標物が自然に止まってくれて、照準を合わせやすいです。遠くのターゲットでもレーザーを当てやすかったです。
金谷 私は画面の見やすさに感動しました。最近、目が悪くなってきたのもあって、通常のレーザー距離計に多い6倍ほどの倍率だと、見づらさを感じていたんです。150ヤードを超えるとピンフラッグがすごく小さく感じます。一方で、『PowerShot GOLF』にはデジタルズームの機能が入っていて、6倍に加え12倍の倍率でターゲットを見ることができます。遠くの目標物が大きく映し出されますし、その分、レーザーも非常に当てやすいです。
関 デジタルカメラと同じ電子ビューファインダーが採用されていることは、『PowerShot GOLF』ならではの特徴ですよね。私も画面の見やすさはすごく感じていて、曇りで暗い場合や逆光のような目標物が見えづらくなる状況でも、すごく見やすいです。露出補正を使って、明るさを調整することもできるので、好みに合わせて設定できるのも嬉しいです。
金谷 測定機能も充実していますね。高低差を加味した距離を表示する「スロープ」機能はもちろん、ボタンを半押ししたまま「連続測距」ができるのも非常に便利です。ショット前に素早く必要な地点までの距離を把握できますね。
関 「ピンロック」も便利ですよ。ピンの奥に林などがあっても、一番手前にあるピンフラッグまでの距離を正確に測ってくれる機能です。あと個人的には、「スロープ」機能をオフにして、競技モードにできることも嬉しいポイントです。競技モードに設定すると、ボディヨコにある青いランプが点灯して、周囲に知らせてくれます。この状態では直線距離だけが測れるほか、過去に撮影したが画像が見られなくなるようです。
金谷 これだけしっかり機能の詰まったレーザー距離計が、こんなにも小型・軽量に作られていることが驚きですね。ポケットに入れて、気軽に持ち運びできます。よくベルトに専用ケースを固定して持ち歩く方がいますが、大きいレーザー距離計だとスイングに影響が出る可能性も少なからずあると考えています。
関 私も腰に装着するのは正直苦手です。『PowerShot GOLF』ならポケットに入れてもサイズ的に全く違和感がないですし、すごく持ち運びやすいです。スマホをポケットに入れるよりも違和感が少ないように感じます。
関 USB Type-Cで充電/給電できたり、ボディにはIPX4(※1)相当の防水機能も付いているなど、レーザー距離計としての基本スペックは非常に高いですね。最大の特徴である「撮影機能」を抜きに考えても、レーザー距離計として満足のできる仕上がりではないでしょうか。
金谷 デジタルズームを生かしたレーザーの当てやすさは、これまでにないレベルでしたね。この性能だけでも、購入する価値は十分にありますよ。
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距離計は防滴に配慮した構造ですが、水滴などの侵入を完全に防ぐものではありません。防滴性能を発揮させるため、端子カバーをしっかり閉じる必要があります。水滴や霧などにより、目標物までの距離が正確に測れないこともあります。
撮影機能の活用方法 おすすめは「自分の実況中継」
関 レーザー距離計としてハイレベルな性能を持った『PowerShot GOLF』ですが、ここからは最大の特徴である「撮影機能」についてチェックしていきましょう。スペックを見てみると、望遠鏡倍率6倍と望遠鏡倍率12倍(デジタルズーム)の望遠で映し出された被写体を約1100万画素の静止画か動画(最大59秒)で残すことが可能になっているようです。
関 測定した距離とそのときの景色を残せることは、コーチングの観点からいろいろな活用方法が考えられますね。
金谷 写真と動画の撮影機能は、いろいろな使い方が考えられますね。関さんのように競技に出る方が使うのであれば、練習ラウンドでさまざまな地点までの距離を測ると思いますが、全てを画像として残しておけば、その場でメモを取る手間が省けますよね。トーナメントでも多くの選手がコースレイアウトの記された手帳に細かく数字を書き込んでいきますが、細かな距離など、書き漏らしてしまうことも少なくありませんから。
関 数字のメモだけだと、どんなコースか、うろ覚えになってしまうこともありますし、景色を画像として残せるのは便利ですよね。しっかりとコースを思い描いた上で、戦略を練ることができます。
金谷 アマチュアゴルファーやジュニアのコーチングをする上でも、さまざまな活用ができると思います。私なら動画撮影の機能を使って、「自分を実況中継」してもらいますね。
関 それは面白そうですね。
金谷 レーザー距離計がない時代から、生徒に実践してもらっているマネジメント力を高めるためのレッスンです。トーナメントの中継があると、解説者がショットに臨む選手について細かな説明をしますよね。「○○プロがこれからティショットを打ちます。このホールは○○なホールなので、狙い目は○○になるでしょう」といった具合です。これと同じように、自分を選手に見立てて、コースの状況やボールのライ、選択すべきショットなどを実際に言葉に出して話してもらうわけです。レイアウトをしっかり意識してマネジメントを考えなければ、具体的な言葉は出てきません。そのため、実況中継を重ねることで、どんどん考える力、マネジメント力が高まっていくのです。
関 なるほど。ラウンド中に考える癖が付いていきますし、『PowerShot GOLF』を使って動画に残せば、そのホールで自分がどんなことを考えたのか振り返ることができますね。
金谷 その通りです。最初のうちは、ショットを打った後で、「あそこの距離を測っておけばよかった」とマネジメントミスをすることもあるでしょう。しかし、何度も何度も繰り返し実況中継を行うことで、どんどん精度は高まっていきます。師事しているコーチがいるなら、どんな実況中継をしたのか、ラウンド後に見てもらっても良いでしょう。映像があることでその場にいなかったコーチにも状況をしっかり見せることができますし、自分自身の記憶も鮮明に甦るはずです。
関 林に打ち込んでトラブルに陥ったときなど、ぜひ実況中継してみたいですね。グリーンを狙うのか、ヨコに出すのか、そのためにどこの距離を測るのか。ゴルファーの腕の見せ所だと思いますし、その状況で自分がどんなショットを選択し、どんな結果になったのか、後で振り返るのはすごく有益だと思います。
金谷 林からヨコに出す場合でも、ろくに距離を考えずに適当に打つ人はすごく多いですから、トラブルほど考える癖をつけてほしいですよね。『PowerShot GOLF』を持ち歩くことで、よりショット前に考える癖を付けられると思いますので、ぜひ実践してみてほしいです。コースで考え、ラウンド後に自分のマネジメントを振り返る。これを繰り返せば、急ピッチにスコアが良くなっていくはずですよ。
関 ゴルフに真剣に取り組む人ほど、『PowerShot GOLF』の撮影機能は大きな力になるのは間違いなさそうですね。あとは、動画製作をする人にとってもメリットが大きいですよ。実は最近、ボクも動画の編集を始めたのですが、ラウンド企画の話を作るときに、細かな残り距離をメモしていなくて困ったことがありました。距離表示の付いた画像や動画ならそのまま使えますし、素材としての価値がすごくありますよ。画質も十分ですし、活用の幅はめちゃくちゃ広いです。
金谷 今までにない発想で生まれた『PowerShot GOLF』はゴルファーに新しいプレーの形をもたらしてくれるアイテムだと言えるでしょう。上手に活用すれば、上達に繋がりますし、スコアが安定することでしょう。上達志向の強いゴルファーには特にレベルアップのために活用してほしいですね。
『PowerShot GOLF』を使用している塚田好宣プロに直撃「トーナメント観戦でもぜひ活用してほしい」
『PowerShot GOLF』をすでにトーナメントを転戦しながら活用している選手がいる。それはカメラ好きとしても有名なシニアプロの塚田好宣だ。
「今年のゴルフフェアがきっかけで『PowerShot GOLF』を知りました。小型・軽量なところが一番気に入っていて、ポケットに入れても嵩張らないですし、機能的にもレベルが高いです」
塚田プロがおすすめする使い方は、距離表示をオフにして、トーナメント観戦で望遠鏡のように使うことだ。
「普通のレーザー距離計は双眼鏡にレーザーが付く形ですが、『PowerShot GOLF』はデジカメにレーザーが付いたイメージになります。今、使用している機種にはないデジタルズームの機能が付いていますし、ゴルフだけでなく、スポーツ観戦に使うのもおすすめです。もちろんゴルフのトーナメントでも使ってみてほしいです。かなり望遠が効きますので、お気に入りの選手に寄った画像や動画を撮ることもできますよ(※2)」
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トーナメント観戦では、現地のルールに従ってご使用ください。
一般的に、ゴルフのトーナメント現場でプロのカメラマンが使う望遠レンズの画角は400ミリであることが多い。『PowerShot GOLF』は望遠鏡倍率6倍で約410ミリ、デジタルズームの倍率12倍では約820ミリの超望遠になる。例えば、ロープの外からフェアウェイ中央にいる選手を大写しにすることも可能なのだ。
このように『PowerShot GOLF』は、レーザー距離計と撮影機能を組み合わせることで、さまざまな使い方が可能となっている。ゴルファーにとって、新い価値がもたらされたと言えるだろう。初めてレーザー距離計を試したい人はもちろん、現在使っている機種に不満を感じているゴルファーにはぜひ『PowerShot GOLF』を試してみてほしい。自分なりの活用方法を見つければ、今まで以上にゴルフライフを楽しめるはずだ。
『PowerShot GOLF』の性能をもっと詳しく知りたい方は公式ホームページへ