おやじゴルフニュース「すごく盛り上がったパリ五輪ゴルフ競技を勝手に反省会」
ゴルフはそこそこそのキャリアを積んでいくと、マンネリや金欠、はたまた体の痛みなどさまざまな問題を抱えながら続けてゆくこととなります。そのとき感じているのは、ゴルフ道を極めようとガムシャラに目指していた目標を失う虚無感。ここらでひと息入れてみませんか。コラムニスト木村和久が、エンジョイゴルフの本質と核心、そしてこれからどうやってゴルフ生活を楽しんでいけばいいのかを提案し、マンガ家・とがしやすたかのイラストと共に旬なゴルフ情報をお届けします。
配信日時:2024年9月3日 06時09分
パリオリンピックのゴルフは、すごく盛り上がりましたね。だからたいして反省するところはないんですけど、次の大会に繋げる意味でいろいろ振り返ろうと思います。まずは松山英樹選手、銅メダル獲得おめでとうございます。女子の山下美夢有選手も、4位タイ入賞、もの凄く頑張りました。まさに手に汗握る熱戦とはこのこと、最後までハラハラドキドキでした。
テレビ中継(地上波)も最終日はNHKと民放で同時に流しました。おかげで視聴率も男子の最終日の平均は、2局合計で平均18%を取ったそうです。というわけで、今回のパリオリンピックのゴルフ競技から学べることを書きます。
①初めにスター選手ありき
松山選手や山下選手が頑張ってくれたから、盛り上がれたわけで、ほんと感謝です。つまりもしメダルの取れそうな選手が出場していなかったら、悲惨なことになっていたでしょう。何しろ中継は国際映像ですから、上位じゃないとなかなか映してもらえないのです。
やはり上位を狙える選手あってのゴルフ中継だと思いました。そういう意味で今後、特に男子ですね、松山選手以降のスター選手の育成は急務です。
日本のオリンピック選手の全体強化は、1988年のソウルオリンピックで金メダルがたった4個という惨敗から始まりました。これじゃダメだ。やはり国家プロジェクトとして、ナショナルチームを結成して、トレーニングセンターや報奨金制度を整備し、CMも解禁して、選手に名誉と実益を与えるようにしたのです。
ちなみに日本のオリンピック競技の中では、ゴルフの報奨金が一番高くなっています。まず日本オリンピック連盟から、どの競技も一律で金が500万円、銀200万円、銅100万円が出ます。
さらにゴルフの場合は、ゴルフ団体(JGA、JGTO、JLPGAなど)から報奨金が出ます。男女とも金で2000万円、銀で1000万円、松山選手の銅で600万円出ます。つまり優勝賞金2500万円のトーナメントに出場して、勝って来いというわけです。
なんでゴルフだけ賞金が高額か、それは長い間、ゴルフはアマチュアとプロの狭間で揺れ動きオリンピックに出場していなかったからです。
②オリンピックにゴルフが再登場したのは最近の話
ゴルフが112年ぶりのオリンピック種目となったのが、2016年のリオデジャネイロオリンピックです。それ以前は1900年(第2回パリ大会)が4か国参加、1904年の(第3回セントルイス大会)2か国参加というありさま。しり切れトンボ的になくなりました。
戦後、オリンピックにゴルフ復活の機運があったのですが、アマチュアの参加だけでオリンピックが盛り上がるのかと。そもそも観客が集まるか、視聴率が取れるかなど検討されました。最終的にプロに参加してもらい、ツアー競技とのスケジュール調整をし、2016年から正式種目になりました。
復活最初のリオ大会は、出場を様子見する選手が多く、復活2回目の東京大会はコロナで無観客、だから今回が選手層の厚さ、完璧なコース整備、多くのギャラリーと全てが整った最初の大会になったといえます。ゆえに失敗は許されなかったのです。
③開催コース「ル・ゴルフ・ナショナル」について
コース設計は私の大好きなロバート・ボン・ヘギー。日本ではホウライCC、西那須野CC、河口湖CCの設計が有名でいずれもラウンドしています。ボン・ヘギーの父親がドナルド・ロス(パインハーストの設計)のシェイパー、すなわち造形担当をしていたこともあり、筋金入りのコース造形一家の中で育ちました。
今回のル・ゴルフ・ナショナルは、英米のゴルフ設計の良いとこ取りをしたと個人的に思っています。池のないホールはスコットランドのリンクス風で、ホールとの境界はマウンドにして、長い芝を植えてボールがそれたら脱出困難に。マウンドは見晴らしがよく、ギャラリーが観戦しやすくしています。俗にスタジアムコースと言われています。
一方、池を配置したレイアウトが18ホール中10もあり、ピート・ダイ、ロバート・トレ
ント・ジョーンズJrを彷彿とさせる、サディスティックな造形です。ピンを池ぎりぎりに配置して、コースの難易度を視聴者と共有出来るようになっています。
特に上がり4ホール(3ホールが池絡み)は秀逸で、毎ホールハラハラどきどきの連続。最終日、山下選手が16番のショートホールで、痛恨の池ポチャをします。ミスショットに見えないのに何で? って思いました。本人は欲が出たとコメントしていました。
やはり池を前にプレッシャーを感じ、何かが噛み合わなかったのでしょう。非常に悔やまれます。
④オリンピックにおけるゴルフの位置
数あるオリンピックの競技の中で一番時間のかかる競技がゴルフです。男女共に1日5~6時間を丸4日間やるわけですから。今はBMXやスケボに代表されるような、競技が始まったらほんの数十秒で結果が分かるコスパ、タイパ競技が人気です。
視聴者はそんなに長い間テレビにかじりつけない。だからゴルフも最終日のハーフ、あるいは上がり4ホールだけ見てもいいのです。その短い時間に世界の名だたるプロが出場して、ゴルフを知らない人でも分かる面白さ、スリリングさを堪能出来れば、良質のスポーツエンターテイメントとして成立するのです。
オリンピックが目指すところは、世界最高峰のスポーツ大会です。いやゴルフにはマスターズやメジャー競技があるだろうという意見もあります。そうじゃなくて、日頃ゴルフに関心のない人に面白いと思わせないと。
松山選手が「ゴルフに興味のなかった人たちが、これを機会に目を向けてくれたら嬉しい」と語っていました。まさにその通りです。今後オリンピックのゴルフは男女混合やチーム戦、あるいは時短競技になるかもなど、様々な試行錯誤がされると思います。
そんなのはゴルフじゃないと言わずに、ゴルフ競技の進化と思って付き合いましょう。116年ぶりに掴んだオリンピック参加のチャンスです。ゴルフが末永くオリンピック競技で居続けたいです。
⑤表彰式のジャージ姿
最後の表彰式でのジャージ姿、ゴルフの表彰式としては奇異に映りますよね。でも本来ゴルフはスポーツですから、あの姿で良いと思います。
ゴルフはカントリー倶楽部という、エクスクルーシブな会員制の組織から始まっているので、メンバーはジャケットを着て倶楽部の品格を守りと倶楽部ごっこをやってたわけです。でもビジターが大挙メンバーコースでラウンドする現在、倶楽部ごっこを辞めて、平日はジャケットを着なくても良いと思いませんか?
いろいろ考えることが沢山あったオリンピックのゴルフ競技でした。無性にロバート・ボン・ヘギーのコースをラウンドしたくなりました。秋には行ってみたいですね。
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