要注意! いいも悪いも同伴プレーヤーの自律神経は伝染する【ゴルフが整う自律神経のトリセツ】
チームスポーツでは一人の選手の投入により奇跡の大逆転も起きる。「それは自律神経が伝染するからで、ゴルフも同じです」と、順天堂大学医学部の小林弘幸教授。同伴者がリラックスしているかピリピリしているかで、自分のプレーが大きく変わるというのだ。
配信日時:2023年5月2日 22時30分
「ゴルフがうまくなりたければシングルプレーヤーと回りなさい」といわれます。これは上手な人からスイングを教えてもらうとか目で見て技術を盗むとかいうことではなく、いいリズムで引っ張ってもらえることに意味がある、と私は考えています。
■自律神経が整うといいリズムでプレーできる
どういうことかというと、上級者はめったに大叩きをしないぶん、プレーの流れが終始スムーズで、自律神経のバランスがおおむね整っています。少々のミスでもリカバリーする技術と経験があるから、落ち着いて淡々とプレーします。
不思議なのは、こういう人と一緒に回ると他の人のリズムもよくなること。自律神経が整うと本人がいいリズムでプレーできるだけでなく、周囲の人にも伝染し、同伴プレーヤーにいい影響が広がるのです。
例えば、3~4メートルのバーディパットを上級者が決め、次に自分が打った同じくらいのパーパットもすんなり入ってしまうことってありますよね? それは先に打たれた打球のラインや転がりを参考にしたからではありません。上級者の冷静な読みや、いつものルーティンや、ゆったりしたボールの拾い上げ方といった動作や雰囲気が自分にも伝わっ
て、安心感を得られたからです。
上級者の自律神経が伝染した結果なのです。ですから私は、上級者の方とご一緒してもスイングや球筋はあまり見ていません。落ち着いた動作、会話、リラックスしたムードを共有して自律神経を整える参考にしています。
■一人の緊張が伝染して共倒れになるケースも
とはいえ、上級者やプロでも自律神経を乱すことは往々にしてあります。バーディパットをことごとく外したり、大事なアプローチを寄せ切れなかったり……。自分のプレーに対する強いストレスや不安から自律神経のバランスを崩したときも、その乱れは周囲の人に伝染します。
トーナメントの優勝争いともなれば究極の精神状態に置かれますから、なおさら他の人の影響を受けやすくなります。少し前の話になりますが、渋野日向子選手が2位に1打差の単独首位で最終日をスタートしながら、メジャー2勝目を逃した2020年12月に開催された全米女子オープンの敗因も、そこにあったと思います。
大舞台のプレッシャーや雰囲気にのまれて緊張してしまった選手がピリピリムードを生み、それが渋野選手に、ひいては最終組全体に伝染したのでしょう。その結果、勝負どころで誰も「相手がパットを外したときこそ入れる」ことができず、「相手が外したのに
決められない」悪循環に陥ってしまいました。
フタを開けてみれば、無名のキム・アリム選手(韓国)が優勝しました。
3~4組前でプレッシャーもなく回った選手が優勝する、そうといった試合は最終組の共倒れによるケースが多いのです。
一般アマチュアの場合、こういうときは人につられて乱れてしまったリズムを立て直す方法を考えましょう。それには、普段からスイングのチェックポイントを3つ決めておくといいでしょう。
リズムが悪くなったら必ずその3つをチェックし、基本に返ることで落ち着きを取り戻せます。(文・小林弘幸 構成・野上雅子)
●小林弘幸/順天堂大学医学部教授 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
1960年生まれ、埼玉県出身。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手やアーティストのパフォーマンス向上指導にかかわる。自律神経のバランスを意識的にコントロールすることにより心身の潜在能力を最大限発揮できることを提案し、テレビ番組等で解説している。著書も多数あり、2022年12月『ゴルフが上達する自律神経72の整え方』(法研)を刊行。