男子ツアーのシード選手が 再生医療で痛みをメンテナンス
豪快なスイングでドライバーをぶっ飛ばす出水田大二郎だが、実は3年前に左膝を痛めてから「連戦で疲れがたまったり、傾斜地で膝を曲げて打つときに痛むことがあるんです」という。そこで、ツアー仲間の稲森佑貴、香妻陣一朗とともに、東京・銀座にある「シン・整形外科銀座」(旧:東京ひざクリニック)で痛みの再生医療を受けることにした。あまり聞き慣れないけれど再生医療ってナニ? 3人のプロはどんなケアをしたのか追いかけた。
配信日時:2023年7月25日 01時00分
人間の自然治癒力を活用する“ローリスク・ハイリターン”な痛みの新治療
ツアープロをはじめ多くのゴルファーが抱えている、ひざ、肩、ひじ、手などの関節の痛み。たとえば、日本人の60代以上の約2人に1人が発症すると言われる「変形性膝関節症」による膝の痛みを和らげるには、薬の内服、湿布、ヒアルロン酸注射などの保存療法が一般的だ。ただし、それらの効果はあくまでも対処療法で一時的でしかないし、症状の進行を食い止めたり、痛みの原因である炎症にアプローチは難しい。また、関節症の保存療法としてステロイド注射もあるが、高いリスクや副作用が伴う。痛みや症状が進行・悪化して手術に踏み切ると、効果はあっても体に大きな負担がかかるし、入院や術後のリハビリに長い期間を要することになる。
そこで、それまでの保存療法や手術とは異なる“第三の治療”として注目されているのが「再生医療」だ。たとえば、擦りキズや切りキズができても、いつの間にかかさぶたができてキズが修復される。骨折をしても患部をギプスで固定すれば、いつしか骨がつながる。このような人間にもともと備わる自然治癒力を活用して、薬を使わず手術をせず治療ができるのが最先端の医療である「再生医療」だ。
3人のツアープロが訪れた「シン・整形外科銀座」は「痛みの再生医療」に特化した高度なノウハウを有している(厚生労働省の認可を取得)。適応部位は主に、ひざ、足、肩、ひじ、手等。治療のプロセスはシンプルだ。患者の血液または脂肪を採取して、それを専門の施設で加工・培養して、患部に注入するだけである。それだけで痛みが軽減するのか?と思うだろうが、血液や脂肪に含まれる自然治癒力の細胞等を加工・培養で活性化させるため、それを体に戻すロジックで、痛みの治癒を行うのである。これまでには、歩くのにも足を引きずるほどたいへんで、他の医院では手術を提案された人が、このクリニックで「再生医療」を受けて、痛みナシで歩けるようになったケースがある。入院や手術がない、治療に伴う痛みが少ない、副作用やリスクが低い、それでいて持続的な高い効果や損傷部の修復・再生が期待できる「痛みの再生医療」。アメリカではポピュラーで、タイガー・ウッズやジャック・ニクラス、メジャーリーグの大谷翔平や田中将大など多くのトップアスリートが受けている。スポーツをやられる人にとってもとても相性の良い治療法だ。
その「再生医療」には「PRP治療」と「培養幹細胞治療」と、大きく分けて2種類がある。「PRP治療」で見込まれる効果は、痛みや炎症を取り除くこと。「培養幹細胞治療」は、痛みや炎症の除去に加え組織の修復・再生が期待できる。シン・整形外科銀座の「PRP治療」は患者から採血して、血液から抽出したPRP(多血小板血漿)を専門の施設で活性化・濃縮して(約3週間)、患部に注入。そのPRPは6ヵ月の保存が可能で、都合や症状に合わせて投与できる。左ひざ痛に悩む出水田は、まずこの「PRP治療」を受けた。「シン・整形外科銀座」の「PRP治療」は数多くあるPRP治療の中でも高濃度のPRP療法を採用している。採血した血液を濃縮した高濃度PRPを用いるため、その他のPRP療法より高い効果が見込まれるようだ。
「古傷の左ひざ痛を取り除きたいんです」(出水田)
診察室に入った出水田は、自分の左ひざ頭(お皿の辺り)を触りながらこう切り出した。
「左ひざの痛みが出たのが3年前でした。そのときはスイングをいろいろ変えていて、ひざを積極的に動かす打ち方を試してたんです。たぶん、それが原因じゃないかなあ……」
「シン・整形外科銀座」の院長であり「再生医療」のスペシャリストでもある整形外科医・中村匠先生は、ひざのMRI画像を見つつ、エコー検査や触診をしてから話す。
「MRIも見るところ、前十字靭帯の部分損傷や内側半月板の変性があるかもしれません。しかし、痛みの原因はそこではなく、左ひざの軟骨と骨が損傷していることではないでしょうか」
それを聞いた出水田は続ける。
「連戦で疲労が溜まるとときどき痛みがあります。それから、ツマ先下がりの傾斜地やバンカーショットのときはひざをけっこう曲げて打ったりするので、そういうときに痛みが強く出ることがとても不安です」
診断の結果、中村先生はこういう提案をした。
「プロゴルファーとしてのパフォーマンスが大事ですし、2~3ヵ月安静にしているわけにもいきませんので、再生医療はオススメできると思います。炎症を抑える作用が強い『PRP治療』を受けていただくと、効果は期待できるでしょう」
出水田はその「PRP治療」を即決して、さっそく採血をすることに。
「シーズンに入ったら、ひざの痛みをケアしながら試合に出ることになるし、パフォーマンスを高めるために練習やトレーニングもしなければなりません。そうすると、どうしてもひざに負担がかかって、なかなか治らないのではないでしょうか。だからといって、整形外科に頻繁に通うこともできないし、手術をしてひざにメスを入れるのは、デメリットもあるので極力、避けたい。再生医療なら、採血をして、加工したPRPを注射するだけなのでスゴい楽だし、入院する必要もありません。再生医療を受けて、ひざをしっかり治したいですね」
痛みが出たときの“備え”とするもよし、ゴルフ専用のリハビリを受けるもよし
続いて「シン・整形外科銀座」に来院したのは、男子ツアーのスタッツ「FWキープ率」で、2015年からトップに座り続ける“日本一曲げない男”こと稲森佑貴。今どこかをケガしているわけではないが、シン・整形外科銀座で予め採血してPRPを調製しておけば(6ヵ月保存可能)、もしも関節のどこかを痛めてもPRPを注入してケアできる可能性がある。そうすることが、長いシーズンを通して安定したプレーにつながるし、自身の強みであるショットの精度が保てる。稲森はこう話す。
「“備えあれば憂いなし”と言いますが、そういう準備をして心にゆとりがあるだけでも、プレーに集中できるし本来のパフォーマンスを発揮しやすいんじゃないでしょうか。もしも、シーズン中にどこかをケガして手術することになったら、かなり日数を割かれるでしょう。でも『PRP治療』なら、痛いところに注射を打ってもらえば効果が期待できる。全国を転戦するツアープロにはありがたいし、再生医療の魅力の一つですね」
実は「シン・整形外科銀座」では理学療法士・荒瀬和輝氏のレクチャーで、リハビリだけを受けることもできる。痛みが再発しづらいカラダ作りをマンツーマンでサポートしてもらえるのだ。しかも、ゴルフ専門のフィジオセラピーの資格を持つ同氏によるゴルファー特化のリハビリやトレーニングメニューが受けれると聞き、腰の痛みが気になるという香妻陣一郎が出向いた。
「ゴルフは長い距離を歩いたり体を捻るスポーツなので、腰やひざの痛みは慢性的にあります。少し前までは右ひざがけっこう痛かったり、今は疲労が溜まると腰の痛みが出たり。自分の強みはショートゲームだと思っていますが、腰やひざに痛みがあり練習量が減ってしまうと、ベストなパフォーマンスにつながりません。なので痛みが出る前の“予防”として、リハビリを受けて体をメンテナンスすることが大事です。しかも、ゴルフに特化したメニューがあるのは、ゴルファーにとってありがたいですね」(香妻)
香妻は今回「シン・整形外科銀座」で診察・採血をするまででPRP治療の注入をするタイミングではなかったので、どのような効果があったかはまだ分からない。しかし「再生医療」への期待は膨らむばかりだ。
撮影/PMT
協力/シン・整形外科銀座