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    「3パット」じゃなくて「3パター」と言った方がイップスにならない、意外すぎる深層心理

    オールドゴルファーがよく口にする「3パター」という言い方。なにかちょっと変だよね?と感じている人も多いようですが、そこには意外な理由が隠されていました。

    配信日時:2023年9月15日 05時47分

    • ゴルフライフ
    イップスになると、ストロークで手が動かなくなるなどの症状がでることも
    イップスになると、ストロークで手が動かなくなるなどの症状がでることも (撮影:米山聡明)
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    「パターが調子悪くて、ゴルフにならないよ」「相変わらず、君はパターが上手いね」「3パター」。オールドゴルファーがよく口にする言葉で、“パター=パット”になってしまっているケースです。

    昭和の頃は、テレビ中継でも実況のアナウンサーは別として、解説者などもパターとパットがごちゃ混ぜでした。だから特に修正することなく、普通に使っている人がたくさんいたのです。(今でもいます) 30数年の月日が流れ、そういう人はどんどん減っていますが、ゼロではありません。

    事情を知らない若い人の中には、オールドゴルファーはボケが始まって、パターとパットの区別が付かないのだと同情するようなケースもあるようです。名前を間違えたり、横文字の新しい言葉など、言い間違える年配の方が多いというのも根底にあるのだと思われます。

    先日も、こんなことを言う若い人がいました。
    「年配の方がパターが入らない、と言うので、パターはホールカップより大きいから、そもそも入りませんよ、と返事をしたんですが、『お前、何を言っているの?』という感じで、まったく話が通じないんです」。オールドゴルファーたちに悪気はありません。単純に、パター=パット、というだけのことでボケてはいません。(たぶん)

    ただしこの勘違い、メンタル面から見ると効果があるという考え方もあります。何でもかんでもパターと言うことで、自分が原因ではなくパターが悪いのだと信じ込めれば、いわゆる加齢性のイップスにはならないという理屈だそう。

    『パットはゴルフの中の別のゲーム』という格言もあるように、ある程度までは練習で確実に上達しますが、突き詰めすぎると今度はメンタル面でマイナスが増えて上手くいかなくなってしまうことがよくあるからです。

    パット名人と呼ばれるトッププロでも、自分のパターでなければその実力をフルには発揮できません。つまり、テクニックには限界があり、パターの特性などと融合してパットの結果が出るということです。パットの練習をして、努力をすればするほどその限界が努力で突破できない現実に気が付きます。

    短い距離のパットが入らなかった、得意距離のロングパットが寄りもしなかった、失敗には多くの場合で複数の原因がありますが、その中に『自分が下手だから=パットがダメ』ということを原因のひとつにしてしまう追い込みは、行き止まりだとわかっている道を前進し続けるのと同じになって、結果は改善されません。その現実を心の器で支えきれずに、イップスになりやすくなるというわけです。

    面白いのは、パットではなく、意味は同じだとしても「パターが悪い」と言葉にすることは、脳内で活発に動く部位が少し違うということです。脳内で直感的な分野は本能に近い部位が担当しますが、理解できるのは単語のみで、文章を理解することは不可能だとされています。

    その原始的な脳の部位が、パットとパターは区別しているのです。内側と外側というような感じが一番近いそう。パットは内側なので自分でどうにかする、という刺激を受けますが、パターは外側なので、自分とはあまり関係ない、という弱い刺激となるというのが、パターの言い間違いがイップスになりにくい説の詳細です。

    ちなみに、かつて米ツアーでオリエンタルマッジクと称され、ショートゲームやパット巧者として讃えられたレジェンドの青木功は、今でも「3パット」を「3パター」と言っていますが、生涯イップス知らずでまさに生きる証明書。

    昭和の頃、パターとパットの言い間違いが修正されたなかったのは、その辺りの心理的な背景があったという説もあります。調べてみると、パットのことをパターと言うのは日常的でしたが、クラブとしてのパターはパターで、パターをパットとは言わないのです。なんとも意味深い話です。

    原始的なゴルフは、パットだけだったと考えられています。ゴルフの発祥には諸説ありますが、パットが面白かったことから始まり、もっと面白くするために進化を続けて現在のゴルフがあるのです。パターでパットをして、ボールをホールに入れる。単純なのに言い間違いでさえ、隠れた真相があるような気になります。深層に潜るほど、パットもパターも謎ばかりが増えていくのでやめられないのです。

    (取材/文・篠原嗣典)

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