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    ゴルフのイメージを変えてくれるかもしれない“吉田優利さんの言葉”【原田香里のゴルフ未来会議】

    国内女子ツアー「ワールドレディスサロンパスカップ」について語った原田香里。

    配信日時:2023年5月17日 04時52分

    • ゴルフライフ
    メジャー初優勝を遂げた吉田優利【撮影:米山聡明】
    メジャー初優勝を遂げた吉田優利【撮影:米山聡明】 (撮影:米山聡明)
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    ゴルフを愛するみなさん、こんにちは。原田香里です。今回は、今季最初のメジャー(公式戦)「ワールドレディスサロンパスカップ」のお話を。

    タフなセッティングに強い風が吹き、最終日は雨も降った厳しい戦いだったのは、見ていた方も感じていらしたことでしょう。そんな中、優勝した吉田優利さんは本当に素晴らしいプレーを見せてくれました。
     
    優勝スコアは通算1オーバーでしたが、世界ランキングNo.1になったこともある申ジエさんに3打差をつけて堂々と初めてのビッグタイトルを手にしました。
     
    テレビで見ていましたが、吉田さんは本当にいいゴルフをしていました。プレー中も笑顔を絶やさないのはいつもと同じでしたが、今回は顔つきが今までとはまったく違いました。バーディを獲っても、ボギーを獲っても表情に変化が見られなかったのです。気持ちに上下動がなく、いい緊張感を感じつつ、安定した気持ちのまま、プレーに集中できていたことがよくわかりました。
     
    「長くゴルフをする気持ちである」ことを優勝インタビューで口にしていたという話も聞きました。勝利数も大事だけど、どれだけ長く第一線で活躍し続けられるかとか、考えることはいっぱいある、というような内容だったそうです。もうひとつ「成長し続けるために今の場所に居続けないと」という言葉もあったとか。
     
    まだ23歳で、なんとなくイメージしているだけなのかもしれません。それでもこれだけ長い目で考えることができるのは素晴らしいことです。私は非常にうれしくなりました。最近の選手はどのように考えてプロゴルファーとして活動しているのか、正直、つかめないところがありました。
     
    第一線で活躍し続ける難しさもありますし、何より女性としての人生についても、考えることはいろいろあります。でも、こんな風に考える若い選手がプレーを続けてくれることによって、ゴルフをしない方も含めて、世間様のゴルフを見る目が変わってくるといいな、と思うからです。
     
    ベテランの活躍から、生涯スポーツとしてのゴルフの可能性が広がることもあるでしょう。若くても、ベテランでも、選手の人生はそれぞれのもの。考え方が違うのは当たり前です。その中でみんな、頑張っています。ただ、生涯、競技と触れ合うことができるのもゴルフの素晴らしさです。本人は意識していないかもしれませんが、吉田さんの言葉はそれを伝えてくれるような気がします。
     
    吉田さんがこんな風に考えられるのは、本人がしっかりしているのはもちろんですが、彼女の周囲に素晴らしい人がたくさんいるからではないでしょうか。ご両親をはじめとするご家族、コーチ、親しいプロ仲間……。同じコーチに指示する上田桃子さんが37歳になった今も戦い続ける背中を見せてくれている。そのことも、大きいのかもしれません。自分をしっかりと持って周囲のいい影響を受ける。吉田さんの今後が楽しみです。
     
    それにしても、今回は選手にとっては厳しい戦いでした。理事時代の経験からいうと、公式戦に対してJLPGAは毎回、それなりのビジョンを持ってセッティングを行っています。それ以外の試合でもそうなのですが、特に公式戦は選手の技術をより引き出そうとするため、タフになる傾向があります。
     
    そこから先は理事やセッティング担当が、毎回、開催コースと相談して舞台を作り上げていきます。距離、グリーンの硬さ、速さ、フェアウェイの幅、ラフの長さ、グリーン周り……。できる限りそのときのビジョンに沿ってセッティングをするのですが、最後に天候という要素に大きく左右されることになります。
     
    試合が行われる季節のその地方の天候などは、コースの方が熟知しているのですが、それでも、試合中、どんな天候になるかということだけは、人間にはどうすることもできない部分です。
     
    今回でいえば、予想以上に風が吹いてグリーンが硬くなったこと、最終日には気温が下がり、雨でランが出なくなったことなどは、不確定要素なのです。
     
    現場では、天候によってティイングエリアを前に出したり、ピンの位置を変えたりして対応してはいます。それでも、どうすることもできない部分はあるのです。正直、今回のタフな状況は賛否両論だと思います。現場では、様々な意見が飛び交っていただろうな、と想像してしまいます。
     
    それぞれの意見はあっていいと思います。ただし、いざ試合となったら選手は準備された舞台でできる限りのパフォーマンスをするしかないのです。個人的には「置かれた場所でプレーするしかない」と思っています。一つのトーナメントを成功させるには、たくさんの方にご協力いただいています。そのことは選手も理解できています。だからこそ、思う存分、技術を見せてもらえるような舞台づくりをし、お客様には選手の最高なパフォーマンスを見て興奮して楽しんでもらい、いい試合だったね!というお言葉を頂けるように裏方のみなさんは頑張っているのです。
     
    現場は大変です。選手も大変だったでしょうが、いい試合をしてくれたなと思います。そして、大会関係者のみなさまも大変お疲れ様でした。

    原田香里(はらだ・かおり)
    1966年10月27日生まれ、山口県出身。名門・日大ゴルフ部にで腕を磨き1989年のプロテストに合格。92年の「ミズノオープンレディスゴルフトーナメント」でツアー初優勝。93年には「日本女子プロゴルフ選手権大会」、「JLPGA明治乳業カップ年度最優秀女子プロ決定戦」勝利で公式戦2冠を達成。通算7勝。その後は日本女子プロゴルフ協会の運営に尽力し21年3月まで理事を務めた。

    連載

    原田香里のゴルフ未来会議

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