寄せのクラブはライを見ずに決める【ゴルフが整う自律神経のトリセツ】
アプローチは状況判断が大切だといわれる。しかし、「状況によっていちいちクラブや打ち方を変えようとしたら必ず失敗します」と、順天堂大学医学部教授の小林弘幸氏。アマチュアはライを見る前にクラブを決めてしまうのがいいという。
配信日時:2023年3月16日 22時30分
トーナメント中継で、選手がアプローチのクラブ選択を入念に行うシーンが時々映ります。プロがどこからでも1パット圏内にボールを寄せられるのは、高度な技術を身につけているうえ、こうしてボールの状況に応じたクラブを選択する判断力にも優れているからだと思います。
■上げるか転がすか? ライを見るから迷う
目に見える状況を分析するだけでなく、プロはそのショットに最適なクラブの入れ方や弾道やスイングスピードなどもイメージするのでしょう。緊張も雑念もなく、冷静で集中しているときほど血流が脳や末端にまで行き渡って、より細かく正確に状況を読み解くことができます。
テレビの影響なのか、一般の人でもプロのようにクラブ選択をする方がよくいます。ボールの前にしゃがんでライを確認したり、2~3本のクラブを取っ替え引っ替え素振りを繰り返したり……。実は、このような行為はアマチュアにはNGといわざるを得ません。
例えば、花道から20ヤードをロブショットで寄せるか、ランニングで寄せるか。本来なら転がすほうが誤差は少なく安全です。クラブを開いて大きく振るロブはインパクトが一定しませんし、ギリギリを狙えばさらにミスのリスクが高まります。
それでも、ピンが手前だったりセミラフからだったりすれば、球を上げてキャリーで寄せるほうがよさそうだと考えがちです。ほとんどの方はここで、どちらの打ち方をするか迷います。
■迷うと血流が悪くなりグリップの感覚も狂う
しかし、迷ったり悩んだりすると交感神経が高まって末梢の血流が落ち、グリップの感触が変わってしまいます。微妙なタッチは出せませんし、距離感も狂って、ロブショットはおろか転がしさえもミスしてしまうでしょう。状況を見て選択肢を増やすほど迷いが生じて自律神経のバランスが崩れるのです。
そこで心がけていただきたいのは、アプローチのクラブはボールの状況を見ずに決めることです。セカンドを打ってアプローチが60ヤード残ったなら60ヤード打つクラブ、20ヤード残ったなら20ヤード打つクラブを、その場でバッグから抜いてしまうのです。
よほどのトラブルでない限り、ライによってクラブや打ち方を変えることはありません。ボールの所へ行くまでの間、選んだクラブを手になじませれば、なお安心だと思います。
アマチュアの場合、状況によって迷うことが一番いけません。打ち方を一つ決めたら、それに徹するほうが自信もついてより近くに寄せられます。クラブも打ち方もライを見る前に決めておくことで迷いをなくしましょう。(文・小林弘幸 構成・野上雅子)
●小林弘幸/順天堂大学医学部教授 日本スポーツ協会公認スポーツドクター
1960年生まれ、埼玉県出身。自律神経研究の第一人者として、プロスポーツ選手やアーティストのパフォーマンス向上指導にかかわる。自律神経のバランスを意識的にコントロールすることにより心身の潜在能力を最大限発揮できることを提案し、テレビ番組等で解説している。著書も多数あり、2022年12月『ゴルフが上達する自律神経72の整え方』(法研)を刊行。