バーディ=小鳥ちゃん! ゴルフのスコアに付けられた鳥の名前、いくつ知ってる?
ゴルフには、日本の一般社会では使われていない特別な用語がたくさんあります。「オナー(Honor/名誉)は『オーナー(Owner)』のことだと勘違いしていた」という話は有名ですが、中でもスコアに関する呼び名はとてもユニークです。なぜバーディと言うのか、なぜイーグルと呼ぶのか、この記事で解説していきます。ゴルフ用語の意味だけでなく由来を知っておくと、“ゴルフ通”になれた感じがして楽しいですよ。
配信日時:2024年6月19日 04時54分
ゴルフには、日本の一般社会では使われていない特別な用語がたくさんあります。「オナー(Honor/名誉)は『オーナー(Owner)』のことだと勘違いしていた」という話は有名ですが、中でもスコアに関する呼び名はとてもユニークです。なぜバーディと言うのか、なぜイーグルと呼ぶのか、この記事で解説していきます。ゴルフ用語の意味だけでなく由来を知っておくと、“ゴルフ通”になれた感じがして楽しいですよ。
1.バーディとは「小鳥(Birdie)」
バーディとは、そのホールの基準打数(パー)より1打少ない打数でホールアウトすることです。
バーディは、「Bird(鳥)」が元になっています。
英語の「キュート(Cute/かわいい)」を変形させて、「キューティ(Cutie/かわいこちゃん)」と言ったりしますが、Birdieは「小鳥ちゃん」というような意味になります。
なぜゴルフで小鳥ちゃんという呼び名が使われるようになったのかというと、1903年にA・H・スミスというゴルファーが「パーより1打少ないスコア」でホールアウトした際、「Flew like a Bird(鳥のように飛んだ)」と叫んだのが、始まりとされています。
のちに、幸運を運ぶバード(Bird)は、愛おしさと遊び心を込めた小鳥ちゃん=バーディ(Birdie)となり、普及していったようです。
2.イーグルとは「ワシ(Eagle)」
イーグルとは、そのホールの基準打数(パー)より2打少ない打数でホールアウトすることです。
イーグルはバーディを取るよりはるかに難しく、プロでさえそう簡単に達成できるものではありません。そのため、小鳥ちゃんよりうんと大きくてたくましく、威厳を感じさせる「ワシ(鷲/Eagle)」がそのスコアの呼び名となりました。
ワシは勇ましさや優れた能力の象徴であり、米国やメキシコ、ドイツ、エジプトなどさまざまな国の国章に用いられています。
まさに、名誉ある呼び名を授けられたスコアだと言えるでしょう。
ちなみに、ワシと混同しやすい同じ猛禽類のタカ(鷹/Hawk)ですが、実はワシとタカは、タカ目タカ科の同じ鳥の仲間で、大きいのをワシ、小さいのをタカと区別しているだけなのです(一部例外あり)。
また、「鳶(トビ)が鷹を生む」という日本のことわざがありますが、トビ(鳶/Black kite)も、ワシやタカ同様、タカ目タカ科の同じ鳥の仲間です。
3.アルバトロスとは「アホウドリ(Albatrus)」
アルバトロスとは、そのホールの基準打数より3打少ない打数でホールアウトすることです。
アルバトロスの和名は「アホウドリ」。日本の特別天然記念物で、絶滅が危惧されている海鳥です。
ゴルフのスコアにアルバトロスという呼び名が用いられている理由は諸説ありますが、アホウドリは長い翼を広げて風に乗り、流れるように数百kmもの距離を滑空できること、子育て期間以外は海の上で過ごす海鳥のため、滅多に見ることができないことなどが有力とされています。
確かに、アルバトロスを達成するには大きな飛距離が必要ですし、そもそも達成率が非常に低く、ホールインワンよりも非常にレアな存在です。
国内男子ツアーの記録を見ると、アルバトロス達成者は1986年以降合計で42名、うち通算2回達成者が7名(2024年6月19日時点)なのに対し、ホールインワン達成者は2023年だけで16名もいます。アルバトロスは、それだけ難易度が高いという証拠です。
一方、国内女子ツアーでは、アルバトロス達成者は1984年以降合計で11名。その中でも唯一、有村智恵が通算2回のアルバトロス達成を成し遂げています(いずれも2024年6月19日時点)。
それにしても、なぜこの偉大なる海鳥に「アホウ」という不名誉な名前が付けられているのかというと、アホウドリは絶海の孤島で繁殖期を過ごすため、人間という存在を知りません。そのため、人が近寄っても警戒心が薄いことから、愚鈍な鳥として「アホウドリ」という名になりました。
アホウドリは1890~1900年代に羽毛目的で乱獲され、一時は絶滅宣言が出されましたが、2019~2020年の繁殖期において伊豆諸島の鳥島での総個体数は6,200羽以上まで回復したと推定されています。
ゴルフのアルバトロスも、鳥のアルバトロスも、ともに貴重な存在なのです。
ただし、米国ではイーグル(ハクトウワシ)が国の象徴であり、これに勝る鳥はいない、という考えから、アルバトロスという呼び名は使わず「ダブルイーグル」と呼びます。
4.アルバトロスの上を行くのが「コンドル(Condor)」
コンドルとは、そのホールの基準打数(パー)より4打少ない打数でホールアウトすることです。「トリプルイーグル」とも呼ばれます。
サイモン&ガーファンクルのカバー曲「コンドルは飛んでいく」でお馴染みのコンドルですが、なぜゴルフのスコアの呼び名にコンドルが選ばれたのかは、よくわかっていません。ただ、コンドルは翼を広げると約3m、空を飛ぶことのできる最大種の鳥であることを考えれば合点がいくでしょう。
コンドルを達成するには、パー5のロングホールでホールインワンしなければいけません。国内には500〜550ヤードのパー5が多いので、本当にこの用語が必要なのか……とすら思える異次元のスゴ技です。
しかし2002年、コンドルというレアな名称が使われる日が訪れました。米国コロラド州にあるグリーンバレー・ランチ・ゴルフクラブの9番ホール(517ヤード・パー5)で、マイケル・クリーンというゴルファーがホールインワン、つまりコンドルを達成したのです。このホールはよほどの打ち下ろしなのでしょうか。
一般のアマチュアにとってコンドルはおとぎ話のような存在ですが、ゴルフゲームの中でなら達成も夢ではありません。その時のためにも、コンドルという用語を覚えておくといいかもしれません。
ゴルフゲームについては、関連記事「とっても楽しいゴルフゲームの世界 デバイス別3選【スマートフォン無料アプリ・PS5・Switch・PC無料ゲーム】」をご覧ください。
5.その他の鳥の名前
鳥にちなんだスコアの呼び名には、以下のようなものもあります。
・ターキー(Turkey)とは「七面鳥」の意味で、そのホールの基準打数より4打多い打数でホールアウトすること
・グース(Goose)とは「ガチョウ」の意味で、そのホールの基準打数より5打多い打数でホールアウトすること
それ以降のスコアにもさまざまな名前が付けられていますが一般的にはあまり使われることがないので、ここまでで十分でしょう。
6.「鳥」以外の語源を持つスコアの呼び名
スコアの呼び名には、鳥以外のものも多くあります。当たり前のように普段使っているゴルフ用語も、その語源を知れば知るほど興味深いものです
ホールインワン(Hole in one)
1打目のティーショットでボールをカップに入れることです。別名「エース」とも呼ばれています。
特にアマチュアゴルファーにとっては滅多にない、誉れ高いスコアのため、ホールインワンを達成したプレーヤーはその幸運を同伴者やゴルフ仲間にお裾分けするパーティーを開催したり、記念品を配ったりすることがあります。
とはいえ、仲間を招いてお祝いをするとなると出費も馬鹿になりませんから、ホールインワンを達成した際の金銭的な負担を軽減する「ホールインワン保険」があります。
そうしたことからも、ホールインワンはゴルファーにとって非常に特別な1打であることがわかります。
なお、国内女子ツアーの最多ホールインワンは、藤田さいきの通算7回(2024年6月19日時点)です。また、女子で唯一通算2回のアルバトロスを達成している有村智恵は、2011年のスタンレーレディスで「同一トーナメント・同一日・同一選手アルバトロス & ホールインワン」という偉業も達成しています。
パー(Par)
パーとは、各ホールで設定されている基準打数のこと。たとえば「パー3」のホールでは、3打でボールをカップに入れることが基準として設けられています。同様にパー4のホールなら4打、パー5のホールなら5打が基準打数(パー)です。
一般的には18ホール・パー72という構成のゴルフコースが多く、各ホールにおける基準打数の合計スコア「72」でプレーを終えた場合を、「パープレー」と呼びます。これを達成できるのは、プロを目指せるほどの上級者と言えます。
なお、パーは「等価、標準」という意味で、英国の株取引で使われていたものがゴルフでも用いられるようになりました。
ボギー(Bogey)
ボギーとは、そのホールの基準打数(パー)より1打多い打数でホールアウトすることです。
2打多く打つと「ダブルボギー」、3打多く打つと「トリプルボギー」と呼ばれます。
ボギーという呼び名は19世紀後半、英語のゴルフシーンで使われるようになりました。しかし実は当時、ボギーはパーと同じ意味でした。
ボギーの語源は、悪い子どもをさらって行くお化け「ブギーマン(Bogey Man)」。ブギーマンは特定の姿形を持たず、当時流行した歌の中で”つかまえることのできない存在”として登場したことから、ゴルフシーンではミスをしない仮想の競技相手とされたのです。
しかし、紆余曲折あったのちに米国のゴルフ協会がパーを基準打数のシステムとして採用し、パーより+1のスコアをボギーと呼ぶようになったようです。
ブービー(Booby)
ブービーとは、ゴルフコンペで最下位から2番目の人のことを指します。この、“下から2番目”というのがミソです。
そもそも英語のBoobyとは「間抜け」「バカ」「ビリ」という意味を持ち、本来は最下位の選手のことです。ゴルフコンペでブービー賞に贈られる賞品もそれなりのものだったのですが、徐々に豪華なものになっていきました。
すると、あえてスコアを悪くしてブービー賞の賞品を狙うゴルファーが出てきたため、意図してブービー賞を狙うことができないよう、最下位から2番目がブービーとなったのです。代わりに最下位のプレーヤーには、「ブービーをつくった」という意味で「ブービーメーカー賞」が贈られます。
7.クラブの各番手に付けられた呼び名
1番ウッドのことは何のためらいもなく「ドライバー」と呼んでいますが、実はほかの番手のウッドやアイアンにも、それぞれ呼び名が付けられています。
まずは、ウッドの呼び名から紹介しましょう。
・1番ウッドは「ドライバー(Driver)」
最も有名なクラブの呼び名はこれ。英語の「Drive」には「活力や勢いを持ったものを駆る」というような意味があり、それが由来と言われています。勢いあるボールを、遠くにDriveしたいものです。
・2番ウッドは「ブラッシー(Brashie)」
今では中古市場でしかお目にかかることのない、2番ウッド。掃除などに使うブラシが語源? と思われるかもしれませんが、「Brass(真鍮)」が由来です。かつて、2番ウッドには真鍮が用いられていたことから、この呼び名が付いたそうです。
・3番ウッドは「スプーン(Spoon)」
スプーンは、ドライバーに次いで知名度の高い呼び名です。昔の3番ウッドはフェース面が食事に使うスプーンのようにくぼんでいたため、この呼び名になったとか。今もその形状だったら、3番ウッドがうんと楽に打てそうなのに……(現在、凸型のフェースはルールで禁止です)。
・4番ウッドは「バフィー/バッフィー(Baffy)」
Baffyの「Baff」は、スコットランド語で「地面を(擦るように)打つ」、英語では「(金属を)研磨する」「(靴・床などを)磨く」という意味があり、これが語源とされていますが諸説あります。
最近はユーティリティに押されて、4番ウッドはレアな存在になっています。
・5番ウッドは「クリーク(Cleek)」
クリークと聞くと、コース内を流れる小川(Creek)を思い浮かべますが、5番ウッドの呼び名であるクリーク(Cleek)とは別物です。
実は欧米においてクリーク(Cleek)は5番ウッドではなく、ロングアイアンの別称です。
Cleekはスコットランド語の「大カギ」(いろりの上に吊るし、鍋などをかけるもの)という意味、または、打球音がカギをかける時の音「クリック(Click)」に似ていることから、クリークと名付けられたそうです。
しかし、その後ウッド型に進化したこと、大手メーカーがクリークの名を冠した5番ウッドを発売してヒットしたことなどから、日本では5番ウッド=クリークが定着したようです。
続いては、アイアンです。
・1番アイアンは「ドライビング・アイアン(Driving Iron)」
・2番アイアンは「ミッド・アイアン(Mid Iron)」
ここまでは「ふーん」という感じですが、以降は個性的。名前の付け方に規則性がないのも、実に味わい深いものです。
・3番アイアンは「ミッド・マッシー(Mid Mashie)」
・4番アイアンは「マッシー・アイアン(Mashie Iron)」
・5番アイアンは「マッシー(Mashie)」
・6番アイアンは「スペード・マッシー(Spade Mashie)」
マッシー(Mashie)という呼び名は、聞いたことがある人も多いでしょう。
マッシーとはフランス語でオシャレな男性を指す「マッシャー」、またはこん棒という意味の「マシー」、もしくはビリヤード用語の「マッセ」が語源だとされています。
なお、日本ゴルフツアー機構の倉本昌弘副会長(2024年6月19日時点)のニックネームもマッシーですが、ファーストネームの「まさひろ」から取られたものです。
6番アイアンの呼び名であるスペード・マッシーの「Spade」はトランプのスペードをイメージさせますが、Spadeのもうひとつの意味である「鋤(すき)」(農具)が由来になっているようです。
・7番アイアンは「マッシー・ニブリック(Mashie Niblic)」
・8番アイアンは「ロフター(Lofter)」
・9番アイアンは「ニブリック(Niblic)」
8番アイアンのロフター(Lofter)は、クリケット用語の「Loft」から来ているとか。
ニブリック(Niblic)とはスコットランド語で「つぶれた鼻」を意味する「ネブ・レイク」が語源とされています。
ゴルフ黎明期のクラブは、現代のように公式ルールで厳格に定められた規格がなかったため、種類も呼び名も自由でバラバラな状態だったのでしょう。
8.まとめ
今は使われていない言葉はたくさんありますが、これらのゴルフ用語を知っておくと、ゴルフの歴史や文化的な側面が鮮やかに浮かび上がってきます。昔の人もゴルフに夢中になり、スコアに一喜一憂しながら楽しんでいたのだろうなと思うと、日々のゴルフライフがより豊かなものになるはずです。ぜひ、頭の片隅にでも入れておいてください。